桃太郎舞台裏
「では、父上、母上。行って参ります」
―――……昔々、ある所に、おじいさんとおばあさんが住んでおりました。
「おお、桃太郎や。気を付けてな」
―――おじいさんは山へ芝刈りに…
「桃太郎や、これを持ってお行き」
―――おばあさんは川へ洗濯に行きました。
「これは…吉備団子ですか!…ありがとうございますッ」
―――おばあさんが川へ洗濯をしていると、川上の方からどんぶらこっこーどんぶらこっこー。それはそれは大きな桃が流れてきました。
「大事な息子の門出なんだ。道中腹が減ったらお食べ」
———おばあさんはそれを川岸に寄せると、これはじいさんも喜ぶぞ、とそれそれは大きな桃をタライに入れ、抱え上げると持ち帰りました。
「ワシがお主にやったそれは、昔使っておったモノじゃが、業物じゃ。切れ味は保証する」
———おじいさんが山から芝を刈り終えて帰ってくると、それはそれは立派な桃がありました。
「…ッ!!何から何までありがとうございます!!私は、父上と母上の息子であることを誇りに思います」
———おじいさんが桃を割ってみると、中から一人の可愛らしい赤ん坊が出てきました。
「では、父上、母上。行って参ります」
———桃から生まれたその赤ん坊は、【桃太郎】と名付けられました。
「ああ、気をつけての」
———その赤ん坊は、やがて鬼を退治する宿命を背負うことになります。
「無理はせんようにな」
———そして桃太郎は大きくなり、鬼退治へと旅立ちました。
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「桃太郎…無事じゃろうか」
「———おじいさん…そんなに行きたいのなら、行ってきてもいいのですよ?」
「…いきなりなんだ、ばあさんや」
「赤ん坊は斬らず、桃だけを斬る太刀捌き―――まだまだ衰えてはいないではありませんか」
「——————もう昔のことだ……。それに、海底の姫に爺にされ、最愛の娘を守れなかったワシ等に…今更何ができる……?」
「………」
「いつまでも、年老いた人間が出しゃばるのも違うだろう?」
「…そうですね」
「時代は変わる。未来は、あの子に託そう」
「……はい」
これは桃太郎が鬼退治に出ている間に交わされた、二人の物語である。
童話って奥が深いですよね!!
ご愛読ありがとうございました。