スコール
☆
12月…
「何難しい顔してんの?」
美咲から声を掛けられて、我に帰る。
「ん…美咲は彼氏にプレゼント何あげた?」
金曜日…航の誕生日だったりする。
私はネックレスもらってて…だからなにかあげたいけど、思いつかなくて…悩んでた。
「誕生日?ん~、ケーキ作って、あと時計あげた」
ケーキ?作るなんてすごい。
美咲はこう見えて料理が得意だったりする。
「う~ん、あいつ時計するかな…」
また迷ってきた。
悩む私を見て、美咲はにやつく。
「空…なんだかんだ言ってうまくいってんだね」
美咲がそんなこと言うから、顔が赤くなってしまう。
「可愛い、空。先輩と付き合ってる時は、こんなことなかったもんね。キスもしてないとか言って」
……。
「あれ!?ごめん…触れちゃいけなかった?」
「先輩には、キスされた…別れてからだけど」
「え?そうなの?…やっぱドキドキした?」
ドキドキ?
するもんだって思ってた…けど、先輩の無理矢理なキスは気持ち悪くて、嫌で…
「無理矢理されたから、気持ち悪かった」
無理矢理?
ちょっ…声大きいよ美咲。私が慌ててしまう。
「ちょっと何それ…先輩、そんなことする人なの?いやマジびっくりした。」
「で…航くんとのキスは?」
!?
「航とって…」
キス…あの時、河原でされて以来してない。
あの時…航にだって無理矢理されてって…あれ!?
先輩と同じなはずなのに…
あん時、しかも長いキスで強引で…
けど気持ち悪くなかった。
「空…また可愛い顔してる」
真っ赤に染まった私の顔を見て美咲は吹き出す。
「空…航くんのこと好きなんだね」
好き?私が航を?…。
★
「航くん…ずっと好きで私…」
「悪りぃ…俺彼女今いるし、もう遊ばねぇから」
もう空を諦めなきゃいけねぇって思った。
他に好きやつを早く作りたくて、告白されたら付き合ってた。
けど空に似たようなショートの子を選んでて…
結局違うって好きになれなくてすぐ別れて…。
俺ひどいことしてた。
今はもうバカなことしない。
空の気持ちが俺になくても…。
空と付き合ってからも、こうしてたまに告られる。
以前は他人事のようだったのに、今は気持ちが落ちる。自分と重ねて見てるからかもしれない。
☆
「え?断られたの?航ほんとにもう遊ばないんだ」
女の先輩たちから航って名前が出てどきりとする。
「残念…航めちゃくちゃキスうまいから…教えたかったのに」
……。何?聞きたくない、そんな話。
★
部活中…
遠くの水道のとこ…空と祐也先輩の姿。
何やってんだよ…俺助けに行った方がいいかって思ったのに…
空と先輩…笑ってる。
なんで…笑ってんだよ。
☆
いつもより会話が少ない帰り道…
「空…今日俺んち来いよ」
「うん…」
今日は航の誕生日…ケーキも作って…楽しみにしてたはずなのに…
航の部屋…
「あの…航…今日誕生日だよね」
驚いたコウの顔。
「知ってたんだ」
「そりゃ、知ってるよ、一応幼馴染みだもん。今は…彼女だし」
コウの瞳が揺れている。
顔が近づいてきて…キスされた。
触れるか触れないかのキス…すぐ離れる。
「あとね…ケーキ作ったから…食べよう」
顔が熱い…。
「マジで?すっげぇ」
形…少し崩れてて微妙だったんだけど、航は喜んでくれて…そんな彼の姿を見てたら私も嬉しくなった。
「あの…でもプレゼントまだ迷ってて…なくて待っててね」
結局…あれこれ悩んでたらこれだって決められなかった。
「いいよ、なくて」
航はそんなこと言う。私があげたいのに…
そのまま近づいてきた彼の唇が私をふさぐ。
苦しくて…息が漏れる。
身体熱い…
「空…嫌だったら、俺のこと殴っていいから」
航のこんな表情知らない。
優しく私に触れる…探るように…どこか不安げで…。
彼が制服のリボンをはずして、隠すものがなくなると…私は恥ずかしさでたまらなくなる。
「そら…」
航の吐息が熱っぽい。
彼の誕生日…私たちは愛し合った。
☆
少し眠ってしまったらしい。
まだ身体がなんかふわふわしている。
隣には気持ち良さそうに眠る航。
どうしよ…いきなりでびっくりしたけど…
嫌じゃなかった…。
ちょっと前までは、こうなるなんて考えられなかったのに…。寝顔がどこか幼くて…可愛い。
「航…好きだよ」
★
目が覚める。夢かと思ったのに…
俺の隣には空がいた。
眠ってしまって…外はすっかり暗くなってて、
慌てて着替えた。
「空…準備できた?送ってくから」
★
空は俺とこうなるの拒まなかった。
俺は今、空を自分のもんにして…どこか幸せで…どこか苦しい。
「なぁ、空…」
後悔してない?
「いや…なんでもない」
俺たちは黙ったまま歩く。
冷たい風がピリっと頬を撫でていった。




