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スコール  作者: aotohana
4/11

氷雨


あれは高1の夏休みのことだった。

テニス部の合宿…。



合宿場には10面のテニスコート。4面は男子も使うけど…普段人数が多くて1年はなかなかコートを使えなかったから、すごく楽しみだった。



そこには大きなグラウンドがあって、サッカー部も今年は合宿場所が同じになった。


当然…航もいるわけで。



***


中学3年の時にまたクラスが一緒になったことがきっかけで私たちの関係もよくなっていた。



口が悪いのは変わんないけど…先輩とのことで落ち込んだ時、ジュースくれたりとか…励ましてくれて、優しいとこもあるんだって分かった。


航はまどか先輩が卒業していないし、私も祐也先輩が卒業してしまっていないから…どこか同じで親近感が沸いた。


けどね…ほんとは私、先輩ととっくに別れてる。



中2の秋…先輩に会えなくなった。

「卒業まで」そう先輩は言ってくれて、私も春までって我慢してた。けど、私はダメでも、他の女の先輩とは一緒に帰ってて…。



不安ばかりが膨らんでいった。

あの時、部室の前で…先輩がテニス部のはるか先輩と隠れてキスしてるの見たのが決定的だった。


はるか先輩は…私のことよく思ってなくて…嫌味を言ってきた先輩の1人だったのに。


ショックだった。


「先輩、別れて下さい」


私がそう言うと、祐也先輩はめんどくさそうな顔をした。


「それ、俺のセリフだから。空ちゃん可愛げないし、顔は可愛くてもそんなんじゃ誰も相手にしないよ。」



涙が止まらなかった。先輩の前では泣きたくなかったから、我慢した。こういうとこが可愛くないんだろうか。


目が腫れてしまって、家にも帰りたくなくて、河原にいたら、


友達数人を連れた航が通りかかった。

部活帰りらしい…。

私に構わなくていいのに…



「あ、悪い…お前ら先行って…俺ちょっと喋ってくから」


そう友達に声を掛けると、航は隣に座る。


「暗れぇな…なんかあった?」


「別に…」


腫れた顔見られたくなくて、うつむく。


「また、女の先輩から嫌味言われたとか?」


……。


黙ったままでいると…


「元気だせよな」


頭を優しく撫でられた。不器用な手つきが航らしいけど。


「航はなんで私に優しくしてくれるの?」


……。


「なんでってなぁ…まぁ一応幼馴染みだし…それに俺…別にお前のこと…嫌いじゃねぇから」


航…耳まで真っ赤だ。


「ありがと…航」


彼の優しさが嬉しかった。




***



そう…それで…昔の最低な奴の印象はなくなり、航と仲良くなっていったんだ。


サッカー部のマネージャーをしているまどか先輩と彼はやっぱり仲が良くて、高校でまた一緒になってからよく一緒にいた。



私はまた祐也先輩と部活も一緒で憂鬱なのに。

彼とまどか先輩が羨ましかった。



「航はいいよね、まどか先輩と仲良しで」


私はつい嫌味を言ってしまう。


「は?まぁ、仲はいいけどな。お前だってまた祐也先輩と一緒だし、よかったな」


祐也先輩と別れたこと…なんとなく、航に言ってない。二股かけられてたなんて恥ずかしいし…。そもそも先輩は私に本気じゃなかったんだと思う。


それに…航にはまどか先輩がいて…。

だから…。




テスト前で部活は休み。放課後の教室で…


「ねぇ、航ってまどか先輩のどういうとこ好きなの?」


ふと気になって聞いてみた。


「何いきなり?」


「だって、私に先輩のこと何も教えてくれないじゃん航。ねぇ、航から告白したの?」


私の質問に…固まる航。


「あ…無理にはいいよ、分かったもう聞かないから」


「違くて…そもそも俺付き合ってねぇし、何、訳わかんねぇ、お前いつからそう思ってたんだ?」


怒ったような表情の航。

私の方が訳分かんないよ…だって美咲言ってたし、いつも一緒にいるじゃん。


「ちゅ…中学の時から…友達から聞いて…だってよく一緒にいたじゃない」



「まぁな、先輩の相談に乗ったり…俺も少ししたけど」


相談?ますます分かんない。



「相談って?」


「別に…ってか俺今機嫌悪りーから」


航の顔が近づいてくる。

頬に冷んやりとした彼の手が触れる。


唇が触れるか触れないかのとこで…止まる。


「悪い…冗談だから」


そう言った彼は、私から離れると教室を出ていってしまった。




残された私は…

触れられた頬が熱い。


なに?今のって…キス…しようとした?

まさかね…。





その日の夜…

違うって思うのになんかドキドキが止まらなくて眠れなかった。


キス…ほんとは付き合った祐也先輩ともしてない。

まだ…経験ない。





「なぁ、先輩…空、俺と先輩が付き合ってるって誤解してたっぽい」



「空ちゃん…あんたのこと全く眼中ない証拠だね」


笑いながら、まどか先輩ははっきり言った。


そんなん分かってたんだけどな…





洗濯物は1年の仕事、洗濯機が終わるまで、近くにある椅子に腰かける。


航…1年なのに、試合でててすごかったな…

紅白に別れての試合みたいだったけど、先輩に混じって走ってた。


付き合ってないって聞いて…つい意識してまどか先輩をみてしまう。

まどか先輩は、タオルを航に渡し…二人は笑いあっていた。

なんか胸が痛む…なんでなんだろ。



「空ちゃん」


洗濯機の規則的な音…

いきなり声を掛けられて驚く。



「先輩…なんですか?」


私は顔を強ばらせる。


「そんな顔しないでよ…あの時はごめん。ただ謝りたかったんだ」


申し訳なさそうな先輩の顔。


「別にもういいです」


これ以上話したくなくて逃げようと思ったのに…


「待って…空ちゃん、俺やっぱ空ちゃんのこと好きで…別れてから後悔したんだ」


「はるか先輩は?キスしてましたよね?」


驚いた先輩の顔。


「あれは…違くて、俺は誘われただけで…あ、それ知ったから、空ちゃん別れるなんて…」


「違います…もう行きま…」


!?


なにこれ…

私先輩にキスされてる…

イヤ…やめて…気持ち悪い…。





ヤダヤダヤダ…

何…なんで先輩…こんな…

涙が止まらなかった。

午後からの練習はボロボロだった。顧問にも怒られるし。



はぁ…お風呂に入ったら、少しは気持ちが楽になった。


「空ちゃん、私たちで最後だから、サッカー部のまどか先輩にお風呂あいたって伝えてきて」


濡れる髪をタオルで拭きながら、サッカー部のマネージャーの部屋へ入ろうとしたんだけど…



んっ…


息が漏れる女の人の声


そこには…


シャツの前があいて、下着が見えているまどか先輩と…


航の姿があった。


二人は激しいキスをしていて…航の手はまどか先輩の胸を…



急いでドアの外に出た。

なにしてたの?心臓の音うるさい…。

びっくりしすぎて、脚が震える。

その場にうずくまり動けない。



ガタン…


女の人が部屋から出てきてぶつかる。

まどか先輩…

そのまま走っていってしまった。


あ…お風呂伝えなきゃだったのに…



ガタン


「いってぇ、お前…空!?ここで何して」


……。


「ほら、どうしたんだよ、立てよ」


私の腕を航は引っ張ろうとする…


パシン…


私はその手を振り払う。

先輩と付き合ってないって言ったのに…あんなこと…



「最低…触らないで!!」


……。


「あ…もしかして、お前見て…」


ばつ悪そうな航…

知らない…私はそのまま走って逃げた。




それから、何度か航は私に声を掛けてきたんだけど、私は逃げてしまった。


航からあのこと、何も聞きたくない。


最低…そう思い続けてたはずなのに…




高2の夏…


「何?ほらさっさと帰るぞ」


私の隣には航がいる。相変わらず口は悪いけど…



「今日はなんか食って帰ろうぜ」


時々、優しい顔で笑うんだ。

私…なんで、彼と一緒にいるんだろう。


先輩を見返したいから?



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