青天
★
空にちゃんと触れるのは2回目だ。
初めてん時は…空に気持ちねぇって思ってたから、無理矢理したって思ってて…
けど、今は違くて…
空も俺に気持ちがあって…そう考えるとたまんなくなる。
今日はひどく幸せで…
俺は何度も…空にキスをして…
彼女は可愛すぎる顔で何度もないた。
☆
それから、1週間後のある日…
航の家の前でまどか先輩を発見する。
もう、昔のことなんて関係ないってそう思うのに…
心が曇る。ざわざわ揺れる。
「先輩!?何やってんの?」
航も普通に話しかけてるし…
「あ…コウ、よかった。これ、高貴に渡して置いて。チャイム鳴らしたんだけど、いないみたいだし」
先輩の笑った顔…キレイ…
胸が苦しくなる。私今どんな顔してるんだろ。
「せっかくだし、中入ってあいつ来るまで待ってれば?」
先輩は私の様子を伺う。
「平気なんで、先輩も一緒に…」
私ちゃんと笑えてる?
☆
「あぁ…マジかよ、高貴帰ってっぞ、靴あるし」
玄関を入ると、革靴があった。その隣に女物の靴。
「高貴~、彼女きてんのか?ちょっと降りてこいよ」
航はおかまいなしに、大きな声で呼ぶ。
しばらくして…階段を降りる音がする。
「兄貴…何!?こないだ邪魔した嫌がらせかよ…」
不機嫌そうな声の高貴くん。
「って、空さん?…と先輩も?」
私たちもいることに気づき…弟くんはばつの悪い顔をしている。
「はい、こないだ言ってた本あげるよ」
渡していたのはサッカー関係の本だった。
「マジで?先輩サンキュー」
弟くんは無邪気に喜ぶ。
「先輩、俺にはこういうのくれたことなかったよな」
いじわるそうにコウが言うと
「あんたは頭で理解するより、身体で覚える人でしょ、やったってコウはこんなん読まないし」
3人で笑いあってる。
私なんか入れない…。
「あ…俺部屋戻るから、先輩、兄貴に茶でも出してもらって」
そういうと彼は2階にあがっていってしまった。
☆
リビングでなんで3人でお茶してるんだろ。
時折、先輩の視線を感じる。
航はしばらく世間話をした後、部屋に行ってしまった。まどか先輩が元サッカー部顧問の住所を知りたいらしく、それを探しに行ったのだった。
「空ちゃん、ごめんね」
突然先輩から謝られて驚く。
「私ずっと謝りたくていたの…コウと私…」
やめて…聞きたくない。
目頭が熱くなる。
「私…先輩と航が合宿でしてたのみて…知ってます」
「うん、ごめんね。私が無理矢理コウにキスして…」
無理矢理って…?
「コウから聞いてない?私の彼氏浮気ばっかで…私もってヤケになって…」
先輩の瞳が泣きそうに揺れる。
「あのとき、私、コウといいかなって誘って…けど結局冷たく突き放された。これでも、彼に許してもらうまで時間かかったんだよ。」
先輩は揺れる瞳のまま、無理に笑った。
「何も…聞いてない…です」
「コウはああ見えて、一途だしね。間違いでも、無理矢理でも他の女とキスしたのが、許せなかったんじゃないかな。」
……。
「けど…航は色んな子と付き合って、軽くて…」
「うん…コウ、空ちゃん諦めるのに必死だったからね。けど今一緒にいるってことは、2人うまくいったんだね…よかった」
『よかった』最後にそう言った先輩は優しい瞳をしていた。
☆
「先輩…あった、これでって…何二人で驚いてんの?」
紙を手に入ってきた航が不思議そうに私たちを見る。私たちは慌ててごまかした。
「じゃ、私、お邪魔だから帰るね」
先輩はそういうと、帰って行った。
私の耳元であることをささやいて。
☆
航の部屋…
「なぁ、お前何にやけてんの、気持ち悪りぃ」
「別に…」
だって…
『拗ねてバカやってたみたいだけど、キス以上はあいつ誰ともしてないよ。もちろん私とも。コウは、空ちゃんが初めてだから…ね』
まどか先輩はいたずらっぽく笑った。
心のもやもやが一気に晴れていく。
「なに見てんだよ」
航は照れて私から目をそらす。
だってさ…全然そんな風にみえないのに…
一途って…。
今さら…すごくドキドキする。
……。
「ねぇ、航」
隣で雑誌をぱらぱらめくる彼を呼ぶ。
「なに?」
「大好き」
彼に私からキスをする。
!?
「なっ…お前何して…」
みるみる彼の顔は赤くなった。
★☆
空(航)と…こんな日がくるなんて思わなかった。
誤解して、すれ違って…仲直り。
けど、またケンカして、素直になれなくて…
分かってほしくて、悲しくて…嫉妬して…
けどやっぱり好きで一緒にいたくて…
幸せで…苦しい
俺(私)の心はころころ変わる。
まるで天気のようだ。
雨が降ったり、曇ったり、風が吹いたり、雷がなったり…けど、いつかは晴れる。
今日は青天…
俺(私)たちは晴れ渡る空の下、もう一度キスをした。
end