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七夕が近付いて

 夏至が過ぎて、住んでいるマンションのエントランスにも鮮やかな黄緑の笹飾りが置かれるようになった。

 行き付けのスーパーの文具コーナーにも短冊や笹に飾る紙細工を作るためのセットが見られる。以前は見掛けなかったレプリカの笹まで棚に並ぶようになった。

 明らかに親子で作ることを想定した商品だが、これは四十三歳の私が子供の頃には見掛けなかったものだ。

 少子化が進んで無心に短冊を書いたり色紙で飾りを作ったりする子供は絶対数としてむしろ減っているはずだ。

 一方で子供を持つ家庭では大家族時代より幼い子供と過ごす時間を丁寧に扱う態度が求められるようにはなった。

 だからこそ、売り手も家庭行事としてクリスマスに家族でツリーの飾り付けをするように七夕には親子で仲良く笹飾りを作って祝うニッチな需要を見込んだのだろうか。

 これは別な稿にも書いたが、私は七夕が好きだし、作品に七夕の場面を描くことも多い(長編の『The female――絆は捩れて』のように中心となる女性登場人物たちが七夕に性被害に遭って不幸な妊娠をする呪われた展開になるものもあるが)。

 ちょうどクリスマスと季節的にも対極にあり(クリスマスは本来はゲルマン人の冬至を祝う祭りであり、七夕も夏至を過ぎて間もない時期にある)、植物に鮮やかな飾り付けをする慣習も共通している。

 七夕自体は休日ではないが、夏休みの近い時期にあるので「これが来たらもうすぐ休み」というワクワクした気持ちになる。

 これは大人になって実質夏休みの無い生活になっても変わらない。

 それはそれとして、大人になると短冊に願い事を書くということ自体が少なくなるし、書いても「家内安全」とか「家族皆が健康で暮らせますように」といった月並みな内容になる(大人になると、そうした平凡な願い事こそが願わなくても当たり前に実現・維持しているようで実は容易に壊れてしまうものであることも理解するけれど)。

 その代わりに他の人、特に子供が書いた短冊に関心が向く。

 マンションの笹飾りの短冊にも実際の所、子供が記したものが大半で

「テストで良い点が取れますように」

「打ち込んでいるスポーツや習い事が上達しますように」

「欲しいオモチャが買ってもらえますように」

といった内容が例年は多い。

 私自身も子供の頃はそんな内容の願い事を書いていたように思う。

 だが、今年はまだいとけない筆跡で

「世界が平和になりますように」

「みんなが平和に暮らせますように」

といった願いを記した短冊が目立つ。

 子供が子供らしい願いを当たり前に短冊に書ける世界に戻したい。

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