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シルバニアファミリーとメイプルタウン物語――フロッキー人形の想い出

 幼稚園生の頃、リカちゃんやジェニーのような着せ替え人形と共に片耳にビーズの髪飾りを着けてピンクのワンピースを着た黄土色のウサギと紺色の繋ぎを着た濃茶色のクマのフロッキー人形が私のお気に入りだった。

 私はこの二体を「シルバニアファミリー」だと長らく思っていた。

 一般にシルバニアファミリーの人形は女の子設定でも髪飾りは着けていないし、よく見ると、私の持っている二体はシルバニアファミリーにしては寄り目気味でもあった。

 だが、柔らかなビロードで体を覆った風な擬人化した動物のフロッキー人形(この呼称も大人になってから初めて知ったが)のシリーズは「シルバニアファミリー」しか考えられなかった。

 数年前、これがバンダイの「メイプルタウン物語」というエポック社の「シルバニアファミリー」に対抗した商品であったことを知った。

 当時は知らなかったが、アニメも放映されていたようだ*1

 そもそもの人形が似通っていたことに加えて、「シルバニアファミリー」も当時は「アイボリーウサギ」という黄土色のウサギの女の子が主人公の扱いだったのですっかりそちらと誤認していたのである。

 買ってくれた親も「シルバニアファミリー」と「メイプルタウン物語」の区別はついておらず、たまたま店に後者が置いてあり私が欲しがったので買い与えたのが恐らくは真相だろう。

 今となってはむしろ「メイプルタウン物語」の人形を持っている方が稀少価値が高いかもしれない。

 ちなみに一九八〇年代後半から九〇年代前半はフロッキー人形が流行っていたのか、小学校低学年(つまり一九九〇年前後)で家族で行った八木山動物公園でも小さな白ウサギのフロッキー人形(『シルバニアファミリー』や『メイプルタウン物語』と違って手足は動かない簡素な造りだったが)の付いたキーホルダーを買ってもらった記憶がある。

 話は変わって、着せ替え人形に関しては当時から「ジェネリックリカちゃん」というか廉価品が売っており、私も「ハローマック」などちゃんとしたオモチャ屋さんではなくスーパーのお菓子売り場に置いてあった韓国製の安い着せ替え人形を買ってもらった記憶がある。

 なお、この韓国製人形は今も手元にあり、娘たちのオモチャになったが、ダイソーの「エリーちゃん」に顔からしてそっくりだ。

 恐らくはこれは「エリーちゃん」の祖先というか、「リカちゃん」が同じタカラトミーで何代目か出ているように廉価品にも同じ生産ラインでの系譜があるのではないかと思う。

 フロッキー人形に関しては子供だった当時も今も「リカちゃん」に対する「エリーちゃん」のような廉価品は見掛けない。

 バンダイの「メイプルタウン物語」は恐らく価格的にエポック社の「シルバニアファミリー」と大差無かったであろうし(ネットで検索しても『シルバニアファミリー』と同じ固いプラスチックの箱入りで販売されていたようだ)、八木山動物公園で買ってもらったキーホルダーにしても一種のご当地商品なので当時の物価として今の百円ショップで買うような価格帯ではなかったはずだ。

 恐らくフロッキー人形は基本となる生産コストや設備の面で「金のかかる」、メーカーにとっても廉価品の作りづらい商品なのだろう。

 だからこそ、バブル崩壊後は「メイプルタウン物語」などのライバル商品も姿を消して「シルバニアファミリー」一強状態になったと思しい。

 「シルバニアファミリー」については確かに可愛らしいしカントリー調の服装や道具などは確かに大人の目で見てもセンスが良いと思う。

 しかし、「古き良きアメリカの開拓者一家の再現」という商品のコンセプト上ある程度は避けられないとしても、公式サイトや広告での

「女の子はお母さんに習って料理やお菓子作りを覚える」

「お姉ちゃんが赤ちゃんの弟妹たちのお世話をする」

といったジェンダーロールの強さが既婚子持ちの私にすら気になることがある。

 また、前述したように私が子供だった頃は黄色が勝ったアイボリーウサギが主人公で濃茶のクマなどがメインの商品だった(これはライバルの『メイプルタウン物語』も同様である)。

 それが今はショコラウサギという耳の上部が黒いだけの白ウサギが主人公になり、かつての「アイボリーウサギ」(『アイボリー』こと象牙は今は毛皮と同様、動物保護の観点から忌避される物になりつつあるが)に近い色合いの「みるくウサギ」ファミリーは脇役である。

 店で見かける他の商品もクリーム色のクマなど全般にホワイトウォッシュされている印象を受ける。

 これは多様性が求められる時代においてむしろ逆行する動きではないだろうか。

 少子化が進む現在、シルバニアファミリーのユーザーの五分の一は成人女性だという*2

 大人も楽しむオモチャの世界はもっと今は消えてしまった対抗商品に有り得た可能性も含むような拓かれたものであって欲しい。


*1 Wikipedia「メイプルタウン物語」

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%97%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%82%A6%E3%83%B3%E7%89%A9%E8%AA%9E,(2025−4−18参照)

この番組は恐らく私の実家のある福島では放送されていなかったと思しい。当時は東映不思議コメディシリーズの「ちゅうかなぱいぱい」や「ちゅうかないぱねま」などオモチャは店で売っていても肝心の番組自体は地域で放送されておらず観たことのないケースが少なくなかった。ちなみにメディアミックスの一環で「ちゅうかないぱねま」や「美少女仮面ポワトリン」は少女雑誌に漫画が掲載されており、そちらは少し読んだ記憶がある。また、子供向けの雑誌には番組の内容や設定を載せた記事が出ていたので概要自体は把握していた。当時の地方の子供にはそんな風にして消費したコンテンツが多かった。私に東京への憧れが強かったのは、テレビが主要な娯楽だった時代に地方と東京で情報の格差が大きかったことも一因としてあるように思う。

*2 C−station「エポック社『シルバニアファミリー』のキャラクターマーケティング戦略 | 守りの「ブランド力」×攻めの「新施策」での成功」

https://c.kodansha.net/news/detail/43725/,(2025−4−18参照)


【参考URL】

エポック社「シルバニアファミリー」公式サイト

https://www.sylvanianfamilies.com/ja-jp/,(2025−4−18参照)

Wikipedia「シルバニアファミリー」

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%83%BC,(2025−4−18参照)

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