表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

Ep1 ~風景を切り取る~

鳩、一匹、飛ばない。

カシャッ

ジーーーッッ


「君、うまいね。何年撮り続けてるの?」


「5年と少しです。」


少年は笑みを浮かべながらへこっと会釈した。

かなり童顔で痩せている、そして私より10㎝程低いだろうが、話し方からすると高校生だろう。

おまけに私はヒールを履いているから身長差は20㎝ほどか、その少年がもっともっと幼く見える。


「デジタルカメラは嫌い?」


少年の持っているカメラから、たしかにフィルムを巻き取る音がした。

何かこだわりがあるのだろうと、聞いてみた。


「紙に絵を描くより、樹を彫りたいんです。」


風貌に似合わない渋い台詞に、私は少し驚いた。

小さいフォルムに可愛らしいレンズ。彼の持っているカメラはBigminiだろう。

当時は値段こそ高かったものの、プロが使うような名機ではないし、家庭でよく愛されていたタイプのものだ。しかもこの少年が生まれる以前に発売されたモデル。


「君には似合わないカメラじゃないかな。フルマニュアルの一眼レフフィルムとか使わないのかな。」


「ホールド感が良くなくても、手ぶれはしない。ズームしたいなら自分で近寄る。ぼかしは僕が作る。

出来上がった写真がすごいのは、決してカメラの性能じゃなく、僕の腕だということを証明したいんだ。」


5年などという歳月はあっという間に過ぎる。カメラの技術はそんな期間で出来上がるものではない。

でも彼は、違った。

カメラにこだわらないところから他の人とは違うのだ。



「高校の写真部に所属しているの?」


「いえ、ただの趣味です。」


彼がカメラで撮っている様子はまさに"風景を切り取る"ようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ