「暑いのは嫌い」
それにしても暑い。
今日の気温は三十五度はくだらないだろう。
多分、人の多い教室では四十度近くまで上がっている事だろう。
申し訳程度につけられた扇風機は本当に申し訳程度だ。
まぁ、こうやって誰も使わない教室の扇風機は独占し放題なのだが。
「でもやっぱりつまらない」
私は物足りなさを感じていた。
何かないだろうか。
面白い事。
旅に出るにしろ、お金は必要。
不良になるにしろ、先ず身なりと身体づくり。
こんな田舎でド派手に暴れる不良などいない。
平穏で、平和で、良く言えば長閑、悪く言えば廃れた町などに若者が集まるはずもない。
若者は自然と若者がいる所へと集まるものだ。
それはもう、明るいネオンや人でごった返す繁華街に。
まともな交通手段としても、私鉄しかない。
それも、ちょっと大きい、県庁のある市へ行くくらいだ。
本当に何もない。
ぐだぐだと暇つぶしの方法を探してみるも結局、いつもの様に何も思いつかず、六時間目の終業のチャイムが鳴り響いた。
「あっつ…」
両親共働きの我が家は、八十坪という平均的な一戸建てである。
家のローンがあとどれだけとかは全く聞かされていないけれど、まぁ、普通に生活できているから、普通に普通の普通すぎる人生を送っている。
鍵穴に差し込んだ鍵を捻る。
ガチャリと鍵の開く音がして、開き戸を開けた。
瞬間、むあっとした空気が流れる。
が、外よりかはマシな空気だ。
それでも暑い事に変わりは無い。
今すぐシャワーを浴びたい。
寧ろ水風呂に漬かりたい。
そのまま身を沈めてしまっても構わない。
この暑さを凌ぎ、究極的に暇なこの時間が終わりを迎える事が出来るのであれば。
まぁ、小さな浴槽でおぼれるなど滅多にないだろう。
というか、そんなところで溺れるなど相当な金づちか、酔っぱらいか、年寄りしかできないはずだ。
その前に恥ずかしいし。
直ぐに部屋に直行し、何も入っていないカバンを抛ると、タンスから下着とTシャツ、短パン、タオルを持って風呂へ直行した。
無論、除湿と扇風機の電源を点けることも忘れずに。
クーラーは嫌いだが、除湿はしないとやってられない。
付属の除湿ではなく、本格的な除湿機(冷えない奴)が欲しいが、金銭的な事情があるため手に入らない。
親に言ったところで、特に必要ないと判断されるがオチだ。
お小遣いなんてものはない。
年初め、正月にもらえるお年玉が私の一年間のお小遣いだ。
それなりに、お菓子やジュースは買い与えられるのだが、それまでである。
「夏なんて消え去れ」
これが私の夏の口癖だ。
はて。
このメアドは一体?
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