「予告をお願いします」
「なんだこれ」
それには気付いたのは、風呂から上がって、アイスキャンディーを齧っていた時だった。
携帯をまだ持たぬ私は、パソコンのメールで色々とメールや通販などをしていた。
パソコンのメールだけで十分だった。
クラスの者らは携帯を学校へと持って来ては見せびらかしたり、悪さ加減を仄めかしたりしていたが、私にはまだ携帯が必要とは思えなかった。
それは単に、メールをする相手がいないだけであるが、まぁ私に必要はない。
さて、気付いた「それ」のことなのだが、私の全く知らないメールアドレスからメールが来ていたのだ。
「i.sekai.wos_uk-ue@ifdea.dend.ne.jp?」
訳が分からない。
タイトルは?
「え、読めないんですけど」
表記したければ適当に打っても表現しようがない。
どこの古代文字だ!?と突っ込みたいくらいだ。
それでも気になる為、そのメールのタイトルをクリックして開く。
カチリ。
「へ?」
かっぽり。
口がそんな感じで開く。
『お前は世界を開く為の鍵を持っているのか?』
「…いや、知らねぇし」
普通に、そう返すしかなかった。
いやだって、タイトルが古代文字っぽいくせに、中身日本語ってどうですか。
それはもう、あんぐりとしかできない。
「ただのイタズラメールか」
そのメールを余計なものと思い、削除しようとスクロールしたところで気付く。
まだ、下に続いていた。
『 Yes or No 』
それはそれぞれにリンクがついていた。
「YesorNo…?」
さて、あなたならばどちらを選ぶだろうか。
私ならば…。
「Yesと言いたいところだけど、あえてのNo…とか?」
ポチっとな。
某アニメの悪役キャラを真似るように、マウスを左クリックする。
それは「No」の方のリンクを。
画面の表記には、私が使ってるメールのサイト外へとサイトへ飛びますという文字。
瞬間、体がふわりと浮くような感覚に襲われる。
あ、これって拙い予感。
それは、私自身が、椅子から転げ落ちる、間抜けな瞬間。
「あれぇ」
いつまでたっても待ち望んではいないが、来る筈の衝撃が来ない。
そんなことよりも、目の前に広がるのは緑。
鼻につくのは土の匂い。
そして、少し、視線を持ち上げれば青空と白い雲。
一体、ここはどこですか?
「あー…えっと…何?」
特に驚きはしていなかった。
しかし、頭が真っ白なのは確かだった。
私は先程まで、自分の部屋で、風呂に上がったばかりで、椅子にだらしなく座って、首にタオルをかけたまま、髪も乾かさずにパソコンを弄っていた筈だ。
それがなぜ急に、草しか生えていないような広大な草原へと場所が移動するのだろうか?
「おいおーい。夢?にしてはリアル。あー…ってか絶対あのメールのせいだよな」
先程のメールアドレスの羅列を思い出す。
「アイ、ドット、エスイーケーエーアイ、ドット、…ダブリュー…なんたら?一体どこのメアドだよ…あー…つか、恰好このままか…」
そりゃあ、まあ、そのまんま飛んだのだしたらそうだけどさ。
もうちょっと準備位させてくださらないのかね。




