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ALICE  作者: みれにあむ
第二章 I don't know my amnesia.
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第二章 I don't know my amnesia.(3)

 書き終えて推敲を重ねて……な事をしていないので、完成度は低め。多分、全部書き終わった後で改稿すれば、別枠投稿している旧版との違いぐらいに差が出てしまう様な気がします。

 文学チックに改行少なめで投稿していますが、どっちがいいのだろう……。悩みどころですね。

 馴染みの配達先を一回りして、大体いつもと同じ時間にサービスセンターに戻って来た。そこで新たな受け持ち先の分の新聞を積み込んで、これからが今日の本番だ。

 亜理朱がいなかった配達先の住人は、どういう反応を返すのだろう。

「ああ、済まないね。地図も持って行きな、ほら」

「あ……。――はい、ありがとうございます」

 とっくに憶えているとは言っても、亜理朱はありがたく所長から地図を受け取った。

 配達先には青いシールが貼られているからわかりやすい。

(茉莉花の家は、最後に通るようにしようっと)

 そして再び自転車に跨る。

 一軒目、二軒目、外には誰も出ておらず。十五軒目までも、ただ新聞ポストに新聞を入れるだけ。

 もう太陽も見えている七時過ぎだ。誰も表に出てきていないのは、休みの初日だからか、それとも亜理朱がいないとお喋りする相手もいなかったからか。

(…………)

 家の窓に、誰かの影が見えないかと思いながら、郵便受けに二種類の新聞を放り込んでいく。

 一つはかつての新聞。記録に残る、同じ日付の昔の新聞。時々何百年か昔のものが配られることもあって、見ているだけでそこそこ楽しめる。

 もう一つは今の新聞。でも、テレビ欄と天気予報以外は当てにならない。国会議事堂で乱闘騒ぎがあったと書いているけれど、何処に国会議事堂があるというのだろう。しかし今回ばかりは、映画館へと殺到する住人達の記事が書かれていたりして、頑張っているなと思わせられた。かつての新聞と較べても遙かに薄くて読み応えもないけれど、馬鹿にしたものじゃないのかも知れないと亜理朱は思う。

 十七軒目で、植木鋏を持って、鉄で出来た庭木を見ているお兄さんと出会った。

「お早うございます!」

 今日は観察と決めていたのに、つい挨拶が口を出てしまう。

 前の受け持ちの人は、挨拶なんてしなかったのかも知れない。胡乱げに見遣るその男の人の視線に思わずビクリとすくみ上がると、亜理朱は早口で「新聞ですよ」と口にして、押し込むように新聞ポストの中に入れてから、軽く頭を下げて走って逃げる。

 少しだけ、茉莉花達の気持ちがわかったかも知れないと、冷や汗を掻いた。

 つまりは、「なんてドラマなの?」と聞きたい気分。

 茉莉花とのお喋りで満足する様になってから、最近はテレビも見ようとしていない。数年置きに同じ番組が繰り返されるから、大体のドラマも見ている筈とは思っていても、人間時代の番組は膨大なのだ。亜理朱の知らない内に始まっていた番組があったとしてもおかしくは無い。

(うわ、どうしよう!?)

 焦ることは無い筈なのに、何か言い訳をしたい気持ちで一杯になりながら、残る配達先を駆け抜けた。

 こんな気持ちでいるのだとすれば、映画館に殺到する気持ちも分からなくはないと思う。

 でも、茉莉花はお話出来ているのだ。きっと普通にお喋りすれば、皆も思うままに喋っていいのだと気が付くに違いない。

 今度からは普通に挨拶をして、余計なドラマの小芝居は入れないようにしようと亜理朱は心に決めた。

 それからの三十軒近く、ただ郵便受けに新聞を入れるだけの作業が続く。きっと、前の担当の人は、お喋りなんてしなかったのだと少し緊張が緩む。

 そして時々家の外に出ている人に、「お早うございます!」と返事の来ない挨拶をしながら、ついつい『お早う、お元気』の台詞を言い出しそうになるのを我慢しながら、新聞配達を続けていく。

 会話を期待せず、ただ独りで彷徨(さまよ)うのには何も思わなかったけれど、返事を期待する挨拶に何の応えもないのはとても辛い時間だった。

 なら、挨拶無しで配達すればと思うけれど、挨拶してしまうのは亜理朱が人との関わりを求めているのに違いない。寧ろ、今までずっとおかしくなっていた亜理朱が、漸く自分を取り戻し始めたということかも知れない。何故なら、独り街を探検していた頃の亜理朱は、そんな寂しさを感じていなかったと思うのだから。

 その寂しさに気付かせてくれたのは、きっと茉莉花のおかげ。その茉莉花の家に、あと少しで辿り着く。

 あと五軒、あと四軒、あと三軒……もう少し!

 見えていた茉莉花の家から小さな女の子が走り出て、車庫から自転車を引っ張って出てきた。

(よし、これでお仕舞い!)

 茉莉花の家の分を一組手元に残して、とうとう受け持ち分の配達をやり終えた。

 旧版とはこの辺りからの展開ががらりと変わるんだよね~。新版はキャラ少なめで行こうと思っています。

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