8日目 【あぁそうさ……僕の狂詩曲を聞かしてやんよ!!】
ダジャレ―――それは天空を貫く刃。
「水滝家プレゼンツ! 夏の、大おやじギャグ大会ー!! イヤッハァーッ!!」
うわっ、初っ端からこのノリはヒドい! 下手すれば『うわなにこれペタウザス』とか言われてブラウザバックものだよ!! たがしかし腹が立つことに全てをかっ飛ばしてこの話だけを見にきた読者様も今どんな状況なのか一目瞭然なのがまた!!
「さぁケンタ! なにか上手いこと言い野菜!!」
前回と同様に、ビシィッ!! と、力強く指をさして無茶ぶりを強要して来る姉。
ここは僕が全力を出してもいいが、なにぶん姉の頭脳だ。例えば『サイドテールが再度出ーる』や『ツインテールがついてーる』などと言っても姉の頭じゃ理解できないだろう。
つまり、少し……いや、大幅にレベルを差げ、誰にでも理解できるようなダジャレを言わなければならぬわけだ。
ふふふ、聞け! コレが僕のダジャレだ!!
「臭い草!!」
「……あー……う、うん。な、なかなか面白いじゃないの!」
あからさまにテンション下がってるー!!!!
しかも姉に気を使われたっぽい一生の恥だ人生最大の屈辱だ生きていけない死にたいー!!!!
「じゃあ妹! 今度はお前がよろしく頼むぜイヤッハァー!!」
「わ、私とね!? あ、えっと……つ、ツインテールがついてーる」
「ぷっ! それ最高!! さすが妹ね!!」
「盛り上がって参りましたヒャッハァーッ!!」
ま、マジかー!!!!
なんか流れるように僕の目の前で惨劇が起こってるー!!
長年の経験とか直感とか憶測とか色々なものでこうなることはなんとなく予測できていたけどツラいー!!!!
くそっ、こうなったら……僕の本気を見るがいい!!
「っ!? 息子よ……その気迫!! やる気なんだな!? お前の魂を見せつける気なんだな!?」
「あぁそうさ……僕の狂詩曲を聞かしてやんよ!!」
僕はその場で大きく息を吸い込むと、すべての神経を声帯に集中させ、ありとあらゆる雑念を取り払い、覚醒……もとい拡声する!!
「布団が吹っ飛んだ!!」
「・・・・・・・・」
いやぁァ!! いつも沈黙の時は三点リーダー(…←これ)だったじゃないのよぉぉ!!!
なんでその点を使うのよぉぉ!! (・←その点)
姉が見てるぅ! 潤んだ瞳でこちらを見てるぅぅ!!!
「……感動したわ!!」
「いやぁぁ……え?」
「……え?」
「え?」
僕の『え?』に続くように、父、そして妹までもが間の抜けた『え?』という声を上げる。
姉は今なんとおっしゃいました?
感動した……って。あれ? 感動ってなんだっけ?
あぁ、感動ってアレか。心に響いたって事か。……って。
「マジですか!?」
え、だってただの『布団が吹っ飛んだ』ですよ!?
言った自分が言うのもなんだけど定番中の定番ですよ!?
『チーターが崖から落ちーたー』とか『オオカミがトイレに行った。おお、紙がない!!』並みに定番のダジャレですよ!? いや、定番かどうか知らんけど!!
「ケンタ。さすが、私の息子だ!」
姉ちゃんに生んでもらった覚えはないよ!!
ダジャレ―――それは植物を活性化させる恵み。