7日目 【ビシィッ!! という効果音と共に力強く僕を指さし、無茶ぶりを強要してきた】
突然だけどコロッケが食べたい。
「と、いうわけで、話数をまたいだのでライターを貸してください」
「どうぞどうぞ」
父からライターという名の発火装置を受け取ったので、僕が下準備している間に妹が集めてきてくれた落ち葉や木の枝に父のライターでチャッカメン!! ……ふざけましたごめんなさい。
「お、ケンタ! 私達の朝食は出来たのかしらしらかしらかしらしら!?」
「しらしらうるさいな姉ちゃん。あとは焼き魚方式でこの丸裸な野鳥を約40分程度焼くだけだよ」
我が家に時計はない。と言っても、時刻を確認出来るものならある。
そしてそれは、妹が持っているのだ。
「そんなわけで、妹。悪いんだけどタイマーをセットしておいてくれないかな?」
「おやすいご用ぜよ!」
頼もしい返事をしてくれた妹は、その場を離れて洞穴の奥の方へと駆けていった。
実は僕達、家や家具を全て売り払うさい、1人1つだけ大事なものやこれだけは譲れないといったようなものだけは売り払わずに、自分たちのリュックサックに入れて持ってきているのだ。
そして妹が持ってたのが、時刻がわかるモノで定番の時計……ではなく、ノートパソコンである。
「ずっと思ってたんだけどさ、ノーコンがあってもイーネット出来ないなら意味ないんじゃないの?」
読者さんの疑問を代弁するかのような問いを繰り出す姉。
どうも略語がおかしいのは柄にもなく賢そうなことを言った姉に免じて攻めないであげてほしい。
ちなみにノーコンはノートパソコン、イーネットはインターネットの略語かと思われます。
「ネットは出来なくてもソフトは使えるし」
はぁ……と深くため息をつき、姉の無知さに呆れている様子の妹。
自分のオレンジ色のリュックサックからパソコンを取り出すと、妹はなにやらカタカタとやっている。僕が言ったアラームをセットしているのだろう。
「そふと……? あぁ! ソーセージね!!」
「違うぜよっ!!」
ソーセージって……『そ』しか合ってないじゃんか。
「また鳥かよー、父さんは羊が食べたいんだよなぁ羊が!」
そして父が空気も読まずに朝食のメニューに悪態をついている。
豪華な生活が忘れられないのはわかるけど、この状況で羊肉を求められても困るよ。
「羊の顔した羊!」
それじゃまんま羊だよ姉ちゃん。
「バカそれじゃあおやじギャグとして成り立ってないだろ? そういう時はだな、羊顔のヒロシって言うんだよ」
全国のヒロシに謝れ父よ。
「さすがオヤジ! だてにクソジジイやってないわね!」
そして父に謝れ姉よ。
「ケンタもなにか上手いこと言い野菜!」
姉はキリッした目つきで僕を見ると、ビシィッ!! という効果音と共に力強く僕を指さし、無茶ぶりを強要してきた。
だが僕はこの無茶ぶりを強要されることなどわかっていた。何年間この姉の弟をやっていると思ってるんだ。
僕のダジャレに恐れおののくがいい!!
とりあえず野鳥が焼き上がるまでの40分間暇なので付き合うことにしてみた僕だった。
「ダジャレを言うのは誰じゃ!」
『俺じゃぃ!! なんか文句あんのかてめぇ!!』