4日目 【ハデス様の存在意義について四百文字以上一万文字以内でレポートをまとめなさいまる】
俺は正常だ。頭なんておかしくない。
だから俺に俺の理想の彼女をください。
「じゃあ妹。朝ご飯作るの手伝ってくれるかな?」
「承知したぜよ!」
突然だし全く関係のないことだが一応説明しておくと、父と母は今僕の両端に腰を落ち着かせている。
そしてここは洞窟の中。とても薄暗い。
ゴツゴツとした岩のせいで、寝心地及び座り心地は共に最悪。無駄に湿気は多いし、じめじめしてる。
この洞窟を見つけた頃に確認したが、この洞窟の奥は、それほど深くまで続いてはいなかった。てかぶっちゃけ、普通に入り口から奥の壁が見えるくらいの奥行きである。
なので洞窟と言うよりは洞穴といったほうがいいかもしれない。いや、もはや洞穴です。
だがしかしそんな洞穴、意外にも結構広いのである。
そうだな……わかりやすく例えるならば、洞穴の中はドーム型で、広さは大型車が大体……縦3列、横5列な感覚で駐車できそうな感じ。
以上、我が家の内観と間取りの紹介でした。
「翔ちゃん、ハデス様の分もよろしくね」
「……うん」
今の僕と母のやりとりでわからないところは? と、質問すれば、大半の方が『ハデス様』に集中することだろう。
だが実際、『ハデス様の存在意義について四百文字以上一万文字以内でレポートをまとめなさいまる』と言われたとしても、実は僕にもなんのこっちゃわからないから答えようがないのだ。
まぁ、一つだけ言えることは。
「ハデス様。あぁハデス様!! お慈悲を。お慈悲を~!!」
このように、母がハデス様の存在をめっちゃ信じ込んでいる。ということ。
僕の推理によると、おそらくプロローグでも語ったあのあからさまに怪しい教祖に洗脳されたのだと思う。
その他に母のことで語ることがあるとすれば、『母はデブだ』ということくらいか。
「ハデス様、ハ~デ~ス~さ~ま~!!」
壁に対して必死に土下座を繰り返す母の様子を、心配する人はもはやこの場所にはいない。僕を含んだみんなして、『あぁ、また例の病気か』くらいにしか思っていないのだ。要は慣れたと言うことである。
そんな残念な状態の母を横目に、僕は着ていた学校の制服兼普段着であるYシャツを脱ぎ捨てる。
これで僕は、上半身裸で、中学校の制服の定番である黒い長ズボンだけの、いかにもサバイバルな状態に。
ちなみに脱ぎだしたのは気が狂ったわけでなく、姉の胃からうまれた産物で衣服が汚れてしまったからです。
「あははっ! お兄ちゃん露出狂だしー!」
「露出は否めないけど狂ってはないよ失礼なっ!!」
急に裸になった僕を見て、妹が指をさしケラケラとからかってくる。
我が妹ながら、無邪気な笑顔はやっぱり心を癒される。
あぁ……僕はこの笑顔を失わせないために頑張っているのかもしれないな。
そう思うと、不思議と笑みがこぼれ…
「お兄ちゃんの顔が気持ち悪いぜよ!」
「お兄ちゃんなのは否めないけど気持ち悪くないよ失礼なっ!」
ハデス様をバカにしている人のすぐ後ろにハデス様はいる。
そう、メリーさん方式で。