43日目 【ツッコミのしすぎですっかり目が冴えてしまった僕】
この借り物しりとり編を6話で終わらせることができるのか今でも不安で仕方がありません。
「まず、運動会とかでよくある『借り物競争』を思い浮かべてくれ」
借り物競争……それは、運動会にて、ランダムに手にとった紙に書かれた指定のものをお客さんの中の誰かから借りてゴールを目指す。と、ザッと言えばそんな感じの競技である。
例えば、紙に『飲み物』と書かれていたとしたら、運動会を見に来てくれているお客さんの中から、お題である『飲み物』に関連する物を借りてゴールし、その速さで順位を争う。といった至極単純で簡単なもの。
小学校の頃、当時の僕も運動会にてチームの期待を背負って参加したのだが、借り物のお題が『夢』という無理難題だったため四苦八苦した覚えがある。あの時はどうやってゴールしたんだっけな……。
今となってはもう思い出せないけど、無理難題にもかかわらずゴールすることができたってことだけはかすかだが確かに覚えていた。
「……思い浮かべたか?」
各自、各々が思い当たる『借り物競争』のイメージをひねり出そうと頑張っていたためか、気がつくと父以外のみんなが眉をしかめ難しい顔つきになっていた。おそらく僕も同じ顔になっていたことだろう。
「うん、思い浮かべたよ」
僕は父に告げた。
「私もイメージできたぜよ。イメージでは私がお馬さんにまたがって1着でゴールしたぜよ」
キミはどんな借り物競争イメージしたんですか妹。
「私は近所のパン屋さんでおばちゃんにクリームパンを一つおまけしてもらったわ!」
それは姉ちゃんがはじめて行ったおつかいの記憶だ!
「落ち込まないで……次があるわよハデス様……」
ハデス様なにやってんスかー!?
ハデス様が借り物競争で1位を取れなかったことよりもそのことで落ち込んで慰められてる姿を想像してものすごい愛着がわいちゃったよ!!! ハデス様がんばって!!
「さて、各自借り物競争についてイメージできたところで、前回言った『借り物しりとり』のルール説明に入りたいと思う」
待って!! 僕以外全員まっとうなイメージ借り物競争エンジョイしてないよ!! 話を進めないで!!! 読心術が扱えるというのなら僕のこの訴えを聞き入れて!!
「そんなもん使えない」
なら答えるんじゃねーよ!!!
「借り物しりとりとは、ただしりとりをするだけじゃなく、実際にその単語のものを借りてくるという……」
「だから淡々と説明しないでください!!」
「なんだケンタ、何が不満なんだ? あ、心配しなくてもちゃんと制限時間は一人につき10分間と決まってるからな?」
「そんな心配はしてないよ!!!」
ツッコミのしすぎですっかり目が冴えてしまった僕。
もともと寝ぼけた頭をスッキリさせるために父が提案した『借り物しりとり』だったが、残念ですが僕にはもう必要ないみたいです。
「ちなみにこの借り物しりとりには朝食の材料を集めるという裏ミッションも入っているので、借り物のテーマは『食料』とする。つまり簡単に説明すると、最初の単語が『りんご』だったら次は”ご”から始まる食べ物・飲み物を借りてくる、というか貰い受けてくるわけだ」
意外と設定がちゃんとしていたっ!! 文句をつけようにもつけられなくてムズ痒い状況っ!!!
「というわけで、どうだケンタ。やるか?」
「うっ……」
父が提案した『借り物しりとり』。
意外とまともなところや要領の良いところがあり、何も言い返せなくなった僕は――。
「……や、やるよ」
――静かに、頷いたのだった。
こういう中身のないやりとり好きです。