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ホームレスファミリー  作者: 本樹にあ
◆夜語り編◆
38/84

37日目 【妹の真面目な性格の表れなのだろう】

 おそばのおそばに寄り添って――――

「なぁ、我が愛娘(まなむすめ)達よ。その子猫の名前、本当に「おそば」で決定なのか?」


 納得いってないのだろうか、不満げにそう声を漏らす父。

 今日の夕方頃、姉が川で釣り上げたこの子猫の名前を決めるための勝負を、家族5人でおこなった。その結果が今の「おそば」ということになるわけなのだが……。

 正直、僕も納得いっていないのが本音だったりする。

 だけど……妹はそうじゃないみたいで……。


「そうぜよ。「おそば」という名前は子猫が自分で決めた名前ぜよ。だからこれで決定ぜよ」


 別に「おそば」という名前が妹の案だからというわけではなく、むしろ妹も同じで自分の考えた名前をつけることはできなかったはずなのだ。

 なのに、それでも勝負のルールを(かたく)なに守ろうとするその姿勢。妹の真面目な性格の表れなのだろう。

 

「まぁ、僕は妹がそれでいいなら別に構わないけどね」


 基本的に、今回子猫を飼うと決めたのは妹のためというスタンスが僕の中では存在する。

 動物が苦手な妹が初めて自分から飼いたいと思えた動物。その気持ちを糧に、今後この子猫以外の動物との触れあえるようになれたら……なんて淡い期待なんかも込め、子猫を飼うことにしたんだ。


 ……まぁ、『妹のため』なんて言えば聞こえはいいかもしれないけど、結局のところ、妹の動物嫌いを直してあげたいと僕が一方的に思っているだけなんですけどね。

 多分妹からしてみれば僕のこの気遣いは余計なお世話なのだろうけど……それはそれで悲しいので考えないようにしよう。


「なによケンタってば妹ばっかり味方してさ。もしお姉ちゃんが妹だったら絶対に文句言うくせにさ」


 そして姉がなんか言ってきた。僕が妹のお願いを素直に了承するものだから拗ねているのだろうか。

 ……でもたしかに言われてみれば妹のお願いや提案は結構無条件で了承していたかもしれない。

 だけどそれは妹だからどうこうというわけではなくて、ただ単に妹は納得できるような提案をしてくれるから僕は了承するというだけの話なんだ。

 もしもそれが無茶苦茶な提案だった場合は、いくら僕でもお断りさせていただくと思う。

 

 だから簡単な話、妹が一番まともだというだけなんだよなぁ。

 でもそれを直接姉に言ってしまうと、僕は姉ちゃんに「お前は真面目じゃない」と言っているようなモノ……さすがに弟である僕が姉ちゃんに対してそんなこと言うのもアレだよね。

 うーん……どうしたものか……。


「……そんなことないんじゃない?」


 とりあえず誤魔化してみました。


「いーや、そんなことあります~! むしろそんなことしかないです~!! ケンタはもうそんなことまみれです~!!」


 ごめん姉ちゃん。意味がわからない。


「でもたしかにケンちゃんはちょっと妹ちゃんに甘すぎよねぇ」


 あれ、母さんもそう感じてるんですか?


「あぁ、言われてみりゃたしかにそうだな。ケンタお前さてはシスコンだな?」


「違いますよ!?」


 父さんまでそんなこと言うなんて……。

 もしかして本当に僕って妹に甘すぎるのだろうか……?

 僕としては、妹がこの家族の中で一番真面目で、一番僕のお手伝いをしてくれる心優しい子だから、妹に任せておけば大丈夫だという安心感ゆえにそうなっちゃってるんじゃないかと確信しているんですけど……。それは僕が甘いだけなのかな? どうなんだろう……。

 ……もしかしたら父さんの言うように、僕って本当はシスコンなのかな!? いやいや、それはない。絶対にない!!

 確かに妹のことは可愛いと思うし好きか嫌いかで聞かれれば当然好きだけど、それはそう言う意味での好きとは違くて……それをいうなら姉ちゃんのことだって僕は好きだし父さんや母さんも例外じゃないし……!!!

 あーもう!!! みんなが責め立てるからちょっと不安になってきちゃったじゃないかぁ!!

 

「おぉ、ケンタが葛藤してるぞ」


「そうね、ケンちゃん葛藤してるわね」


「うん、葛藤しまくりだわ」


「葛藤してるぜよ」


 誰のせいだとお思いか!!!!

 ケンタ、葛藤!!!

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