どぐされ吟遊詩人
公園での休憩を終えて、捜索を開始しようとしたハルト達に聞こえてきた謎の声の正体とは?
「つぶらな瞳に~隠された~女の秘密が~暴かれる~」
近づくと、それが歌だと分かった。
低くてガラガラした声で聞き取りにくいがどうやら演歌のようだ。
しかし、そんな日本的な歌に反して、姿を現したその男の見た目は、この国のものとは到底思えないものだった。大きなテンガロンハットに、アメリカの俳優のような茶色い顎ひげと口ひげを生やしたダンディな顔、高い身長、そして古ぼけたマントを身にまとい背中にはギターを背負っている。まるで、どこかの西部劇に用心棒として出てきそうだ……或いは、疾風のような戦闘ロボに乗ってる青年の宿敵とか、トロールの谷に毎年やってくるハーモニカ吹きに似ていると言っても過言ではない気がする。
そんなダンディ男だが、公園にいる俺達に気が付くと、何だかニヤニヤ嬉しそうにずかずかと近づいて来た。俺は、何だかヤバいかもと思ってミヤを後ろに隠して男と対峙する。早速、ボディガードの仕事が始まったのだった。
「オー、ボーイアンドガール! 仲良くデートかい?」
「え……ええと……」
俺が返答に困っていると、隠れていたミヤが俺の横に出てきてこう言った。
「そうですよ! 私とハルトはそんなんじゃないです! 親友です!」
「ふーん、そうかい」
いや、そんなはっきり恋愛感情が無いと言われると正直ヘコむんだが……
どうやら、やっぱり、俺達はそういう関係では無かったようだ。トホホである。
「それで……何か用ですか?」
「いやな、お前さんらが仲良さそうにしてたのを見つけたら、おじさんの頭にニューソングが浮かんで来てさ。 おじさん、こう見えてもさすらいの吟遊詩人なのよ。別におかしな奴じゃないから安心してくれよな」
いや、こう見なくても吟遊詩人に見えます。そして、どう考えてもおかしな人です。
っていうか良く考えたらこの恰好……こいつ、まさか……!?
「じゃあ、これも何かの縁、さっそく俺の歌を聞いてもらおうか」ダンディ(仮名)は、背負っていたギターを前に持ってきて、マントの中からピックを取り出した。
「あの……ちょっと待ってください」
「なんだい? ヤングボーイ」
「ちょっと、お聞きしたい事があるんですけど」
「俺の名前かい? 俺の名は、神開=S=バルトロメオ! 人は俺の事を『流陽のバルト』と呼ぶ」
「いや、そうじゃなくて」そんな呼び名、聞いた事も無いんですけど。
「昨日、この辺で、ウチの学校の女の子に話しかけませんでしたか?」
「……? オー、確かにその通りだよ! 目つき鋭い、狼のような女の子でねぇ。そのビーストな雰囲気に俺は、今日みたいにソングオブゴッドが降臨しちゃったのよ! それで、そのニューソングを今みたいに聞いてもらおうと声かけたんだけど、逃げられちゃってね……もしかして、スクールで俺の事トピックスになっているのかい?」
「はい。悪い意味で話題になってますよ」
「ホワッツ?」
「その子から痴漢だと思われてます」
「グガッ!? それは、悪い事したみたいだな……」
バルトはリアルに落胆の表情を浮かべた。
こうしてみるからに、変わってはいるが、どうやら悪い人ではないようだ。
「ボーイアンドガール、それじゃあ、その子には謝っておいておくれよ。 そういうつもりじゃなかったって。君に捧げるソングを聞かせたかっただけだって」
「……わかりました」後半の部分は言いません。
「ただ、今後は気を付けてくださいよ」
「わかったわかった! 残念だなぁ。名曲だったのに……」
あまりに寂しそうな顔でバルトが下を向いたので、俺達は何となく申し訳ないと思い。しょうがなく、今出来たニューソングを聞かせてもらうことにした。すると、自称吟遊詩人の表情は再び輝きを取り戻しギター片手に演奏を始めた。
「男と~女が~公園で~2人仲良くぶらり~」
「……」
心の中でハッキリと言わせてもらう。
このド・へ・タ・ク・ソがっ!




