表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
生きる代償
89/400

夢遊(1.5)

二之宮(にのみや)が用意した布団の中で丸まったそれが小さく唸った。

「ホンマにかわええけど…原因は何なんや?」

「僕のキスの後だから…」

彼が伸ばした指先で汗ばんだ額を撫でる。

(れん)君のキスが原因!?」

「だと思うわけ?」

「ないわな」

そして、薄いピンクの唇を触れた二之宮のその指を濡れた舌がぺろりと舐めた。

「本当にどうしようか…原因が分からないことには打つ手なしだし…」

はぅ……小さな舌が必死に二之宮の指にしゃぶりつく。二之宮は暫くそれで戯れると、唾液の付いた指先を物足りなそうにする口から抜き、自分の舌先で舐めた。その姿を見ていた由宇麻(ゆうま)は、ごくりと喉を鳴らした二之宮に「なーに見てんの?」とにやつかれてふいっと真っ赤な顔で俯く。

そして、

「俺が!!!!」

彼はその小さな体を抱きかかえた。

「?ただの公務員の君に原因が分かるの?」

「“ただの”は余計や!」

「一々ツッコミ入れてさぁ、関西人なのは重々承知してるから受け流して本題に入ってよ。で、“俺が”何?」

「関西人だからツッコミを入れるんや。は置いといてや、蓮君が原因を究明するまで崇弥(たかや)は俺が世話したる」

宝物を手に入れたように表情を崩した由宇麻は軽く握られた手に指を差し込んだ。すると、その手のひらが由宇麻の手を強く握り締める。

由宇麻から零れる笑顔。

二之宮はその笑みに呆れ切った顔を向けた。

「あーそう。僕が寝るのも惜しんで原因追究に身を費やす間、君はこーんなに可愛い崇弥でハーレムを味わうわけだ。最悪」

「俺は崇弥のお父さんや!息子のお世話は当たり前やろ!」

「それに下心は微塵もない?」

絶対あるだろ。

二之宮は答えを聞く前に確定済みだ。

「うっ…………ある。だってかわええもん!」

「うんうん。可愛いねぇ。でもほら考えてみなよ。原因を究明するには崇弥が僕の傍にいた方が良くないかい?」

「………………………良くないんやないか…な~…とか思ってたり…するんやけど…な~…」

色々と彼の気持ちは分かるが、「はいそうなんだ」と簡単には頷けない。

二之宮は由宇麻を弄るのが好きだ。

楽しすぎる。

「崇弥は僕の家で預かる」

「イヤや!」

「崇弥の為だ」


―崇弥の為―


君はどちらを取る?

崇弥と自分。

どっちが大切?


「イヤや!イヤや!!なぁ、ええやろ?ええやろ?蓮君、お願いや!!」


君は本当に欲に素直だ。

これが、崇弥の自由と比べられた時、君はどうするのだろうね。

彼の自由を縛るのかな…。


「我が儘。はいはい、折れた。僕が折れるよ。ただし、崇弥が起きてからね。崇弥の記憶が気になるから」

二之宮は素直に自らの欲を認めた彼の為にあっさり引き下がってやる。

「そやな…全てを忘れてるかもしれへんしな…でもええん!?」

「しつこいと僕は嫌うよ」

「ありがとな!!」


由宇麻君が笑うと、なんか心が温まる気がするんだよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ