夢遊(1.5)
二之宮が用意した布団の中で丸まったそれが小さく唸った。
「ホンマにかわええけど…原因は何なんや?」
「僕のキスの後だから…」
彼が伸ばした指先で汗ばんだ額を撫でる。
「蓮君のキスが原因!?」
「だと思うわけ?」
「ないわな」
そして、薄いピンクの唇を触れた二之宮のその指を濡れた舌がぺろりと舐めた。
「本当にどうしようか…原因が分からないことには打つ手なしだし…」
はぅ……小さな舌が必死に二之宮の指にしゃぶりつく。二之宮は暫くそれで戯れると、唾液の付いた指先を物足りなそうにする口から抜き、自分の舌先で舐めた。その姿を見ていた由宇麻は、ごくりと喉を鳴らした二之宮に「なーに見てんの?」とにやつかれてふいっと真っ赤な顔で俯く。
そして、
「俺が!!!!」
彼はその小さな体を抱きかかえた。
「?ただの公務員の君に原因が分かるの?」
「“ただの”は余計や!」
「一々ツッコミ入れてさぁ、関西人なのは重々承知してるから受け流して本題に入ってよ。で、“俺が”何?」
「関西人だからツッコミを入れるんや。は置いといてや、蓮君が原因を究明するまで崇弥は俺が世話したる」
宝物を手に入れたように表情を崩した由宇麻は軽く握られた手に指を差し込んだ。すると、その手のひらが由宇麻の手を強く握り締める。
由宇麻から零れる笑顔。
二之宮はその笑みに呆れ切った顔を向けた。
「あーそう。僕が寝るのも惜しんで原因追究に身を費やす間、君はこーんなに可愛い崇弥でハーレムを味わうわけだ。最悪」
「俺は崇弥のお父さんや!息子のお世話は当たり前やろ!」
「それに下心は微塵もない?」
絶対あるだろ。
二之宮は答えを聞く前に確定済みだ。
「うっ…………ある。だってかわええもん!」
「うんうん。可愛いねぇ。でもほら考えてみなよ。原因を究明するには崇弥が僕の傍にいた方が良くないかい?」
「………………………良くないんやないか…な~…とか思ってたり…するんやけど…な~…」
色々と彼の気持ちは分かるが、「はいそうなんだ」と簡単には頷けない。
二之宮は由宇麻を弄るのが好きだ。
楽しすぎる。
「崇弥は僕の家で預かる」
「イヤや!」
「崇弥の為だ」
―崇弥の為―
君はどちらを取る?
崇弥と自分。
どっちが大切?
「イヤや!イヤや!!なぁ、ええやろ?ええやろ?蓮君、お願いや!!」
君は本当に欲に素直だ。
これが、崇弥の自由と比べられた時、君はどうするのだろうね。
彼の自由を縛るのかな…。
「我が儘。はいはい、折れた。僕が折れるよ。ただし、崇弥が起きてからね。崇弥の記憶が気になるから」
二之宮は素直に自らの欲を認めた彼の為にあっさり引き下がってやる。
「そやな…全てを忘れてるかもしれへんしな…でもええん!?」
「しつこいと僕は嫌うよ」
「ありがとな!!」
由宇麻君が笑うと、なんか心が温まる気がするんだよね。




