表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/400

君の囁き(3.5)

「『それはもう、可愛い声だったんだよ』で?どうだった?」

ニヤリと陽季(はるき)の言葉を引用した二之宮(にのみや)は、消毒液を付けた脱脂綿で傷口を消毒しながら訊いた。

「うっさい」

「エロいねぇ」

そして、染みる痛みに顔を歪めて毒づいた洸祈(こうき)の肩をTシャツを擦り下げて見る。

「いーっぱい痕付いてる」

……いーっこ…にーっこ…―

「数えるな!」

洸祈は軽く数え始めた二之宮の膝を蹴った。

「動くな。傷が開くぞ」

不意に真剣になる二之宮。

洸祈はむっと顔をしかめた。

それに打って変ったように笑みを見せる二之宮。

「二之宮?笑うなよ」

「ううん。笑ってない。微笑んでるの」

「ふーん」

ひらりと舞った手のひらは洸祈の頬を撫でた。

「あったかい」

「もっとあったかかったでしょ?」

「まあね」

抱きしめてきた二之宮の首筋から少しだけ香水の匂いがする。

二之宮の細い指はTシャツの襟首から洸祈の背中に進入した。

「あったまった?」

「うん。あったまった」

洸祈の指も微笑む彼の頭を撫でる。

「繋いだ手、すごくあたたかったでしょ?」

「うん」



「洸祈、もう夕霧(ゆうぎり)から離れちゃいけないよ」

「うん」




「浅い傷は自然治癒が一番。呼吸が苦しいだろうけど我慢してよ?」

首に包帯を巻き終えた二之宮は項から首根までをすっと撫でた。

「喋る分には小さい声なら余り問題ないけど…飲食は止めて欲しいんだ」

「はぁ?」

「てのは流石に君でも無理だから…あ、点滴でもいいんだけどね…ま、置いといて、堅いのは嚥下する時に喉を大きく開くから傷が開きかねない。だから、柔らかいものを治るまでは食べて」

「うん」

「キスは柔らかい?なんて訊かれても堅いって答えるから。あ、僕のは柔らかいよ」

アホだ。

軽く二之宮は洸祈の唇に自らの唇を触れさせる。

触れるだけ。


だって…―

もう…俺には好きな人がいるから。


すると、うっすらと意識が遠くなってきた。

「眠いや…」

なんやかんやで昨日からちゃんと寝てない。

「眠いの?なら、僕のベッドまで行こ?」

添えられる手。

二之宮のベッドは気持ちい。

洸祈は首を縦に振り、二之宮の肩を借りる。

地上への階段。

ヤバい…眠い。

ヤバい………………………………。

「崇弥?あと少しだから」

分かってる。

でも、眠いんだ。

瞼が重い。

胸は苦しいのに眠い。

「ちょ…崇弥、まずい!」

何がまずいんだ?

眠い。睡魔が。

もう…―




寝かせて…よ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ