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灰樹(6)






 彼の罪を赦しますか?


      NO









「しーの。ほら来いよ」

開けたドアの端から顔を出した由宇麻(ゆうま)は頬を赤らめて言う。

「こんな遅くなかったら一緒に風呂なんて入らんかったんやからな!」

ツンデレ…。

くすっ

「じゃあ、遅かったら司野(しの)は俺と一緒に風呂に入ってくれるんだ」

否定するかと思いきや。

「……その時はしゃーないな」

新種のツンデレだ。


「何そのカッコ」

でかいバスタオルを脇の下から巻いている。

女か?

「ええやろ…別に」

ツンデレ再発。

ふーん。

「ま、いいけどさ。でもな、そーゆーの逆にそそられて何仕出かすか分かんないから」

すると、由宇麻は赤い顔を更に赤くして唸った。

「だって…崇弥(たかや)はそーキン肉マンみたいやけど…俺…全然やし…」

「いやいや、キン肉マンはヤダから。皆厭だから」

「じゃあ…」

細い。

瞳をぱちくりさせた洸祈(こうき)を眉を曲げて見下ろした由宇麻は桶に取った湯を一気に頭から掛けると風呂に飛び込んだ。

「なんや、じろじろ見るんやな…!!!?」

ずるっ


由宇麻の体が傾いた。


「司野!」


心臓が跳ね、苦しくなり、足を滑らせた由宇麻を洸祈はその腕に納める。

「心臓わりぃのに」

荒い息を吐く由宇麻の洸祈の背中を撫でる。

「しゃーないやろっ!崇弥のせいや!!」

湯を揺らして反対まで退き、体を浴槽に預けた由宇麻は目を閉じた。

「司野、ちぃとか陽季(はるき)とかとおんなじだよ?」

「だからなんや…俺は崇弥みたいのがいいんや」

薄目を開けて洸祈を観察する。そして、伸ばした指先で窪みを縦にすっとなぞった。

「俺は貧弱や」

違う。

「司野は強いよ」

俺よりずっと。

腕を引いたら簡単に両腕に納まる。

これじゃあ崇弥がお父さんみたいやん。そう微笑する由宇麻はやっぱり強い。

「司野、こんなことしてあれだけどさ」

「?」

「お前の感触で欲情しそう」

男のくせにさ、瞳はでかいし、髪は少し短いけど、女の子にしても通用しそうだし。

「尻が柔らかい。腰が細い―」

バシャッ

水をぶっかけられた。

「ごほっごほっ…ごほっ…っ」

「ばかっ!!!!もう出る!!!!!!」

「うそうそ。俺が出るから。まだ入ったばっかしだろ?」

浴槽を立つ洸祈。

縮こまる由宇麻は減った湯に顔を曇らした。

「崇弥だって入ったばっかしやんか…」

しゅんと聞こえてくるようだ。

「司野がゆっくりできないんなら俺は出るよ」

磨りガラスのドア。

洸祈は取っ手に手を掛けた。

「崇弥がおらへんなら出る」

振り返った彼の目に映ったのは濡れた瞳。

「それじゃあ意味ないだろ?なら俺はもう少し温まる…」

洸祈は踵を返し、

「崇弥がおるならここにおる」

赤い頬。

笑いを噛み殺した洸祈は由宇麻の頭を優しく撫でた。

「その髪、洗ってやるよ」

「髪くらい…」

「させてくれよ。あいつが俺にしてくれたこと誰かに残したいんだ」

『蓮の花が散るその日まで』


 ―…傍にいるから…―


「崇弥?」

由宇麻はぼーとしている洸祈に声を掛ける。洸祈ははっと意識を戻すと前に座る由宇麻の頭にお湯を掛けた。

「いい子にしてろよ」

「んー」


「崇弥」

「?」

「何か聞こえへん?」

……………………………………。

「電話だな」

「こんな遅くにだれや?」

由宇麻は淵に乗せた頭をあげると浴槽を出た。

くしゅんとくしゃみをする由宇麻。洸祈は入ってろよと促すと顔を輝かせてうん。と元気な返事をする。

脱衣場はエアコンのお陰で温かいがやはり何処か肌寒い。

午前2時切った朝早くにメロディーは哀しく響いていた。

「…………」

洸祈は水滴を拭き取りながら電話に無言で対応する。

『…………』

何これ…

相手側も無言だ。

「誰?」

『…………』

無言。

洸祈は苛立ち、切るからと怒鳴り、受話器を置こうとしたが、

『崇弥洸祈か』

この声…。

ピタリと動きを止めた洸祈。

「誰?」

『前前回…いや…君には前回…暴れる君を牢獄に放り込んだ人間さ』




……………………………政府だ。

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