灰樹(2.5)
由宇麻は捜していた。
「崇弥ぁ…」
何処におるんや…。
6025号室。
ポーン
腑抜けた音。
「どないしよ」
「誰?」
この声…は?
「陽季君!」
「洸祈…ね」
ベッドに伸びた陽季は遠い目をした。由宇麻はその肩を揺する。
「崇弥は何処や!」
「双灯のとこだよ」
気だるそうな瞳の陽季は枕に顔を埋めて唸った。
蓮君の言うた通りの展開や…。
「これは蓮君からの警告や」
「二之宮?」
蓮君、もっと早く言うて欲しかった。
「蓮君がな―」
『由宇麻君?』
『そやけど』
『昨日さ、崇弥に変な手紙きたんだけどね』
『そうなん?』
『今夜9時。超高層ホテルtaleの最上階。60階の6025号室に呼ばれたんだ』
『超VIPやん!』
『差出人不明でさ、調べたら今日、そこの劇場である団体が公演したんだよね』
『団体?』
『流浪舞団、月華鈴』
『陽季君が差出人?』
『月華鈴の誰かだと思うよ。それでね、90%の確率で陽季君だとして崇弥を部屋に呼びつける目的は?』
『久々にお話しするんやろ?』
『はぁ~。そろそろだと僕は思うんだけど?』
『そろそろ?』
『エッチしたいとか』
『はぁ!?え、ええエッチ!!!?』
『98%の確率でそうだとして』
『エッチ確定なんやな…』
『崇弥はどういう反応を示すと思う?』
『想像させるん!!!?』
『想像させるの』
『…崇弥なら…断る…かな?』
『僕もそう思うよ。でも夕霧君、断られて下がる人じゃなさそうだから…』
『強姦!!!?』
『言ってないでしょうが』
『だって…』
『二人でやる。やらない。って取っ組み合うかもね。でもね、重要なのは―』
『なんなん!?』
『あいつ…熱あるみたい』
『何で止めなかったんや!!』
『だから止めてって言いたいんだ。崇弥の体調は僕の方で逐一管理しているんだけど、今現在、急に体温が上がってる』
『最初に言うことやろ!!!!』
『そっか。僕が知る時期から崇弥は風邪引きやすい質だったけど、最近は妙に風邪を引く』
『病気?』
『抵抗力が落ちているんだ。このままじゃ…君より酷くなるかも』
『治せへんの!?』
『分からない。多分…原因は…………呪い…』
『呪い?そんな非現実的な―』
『魔法はあるのに?魔法なんて目的によっては黒魔法とも呼ばれるんだよ?呪いは本来の目的を違えた黒魔法の一種さ』
『じゃあ、呪いはどうやったら消えるん?』
『まだ研究中。呪いはあいつの過去が原因だから…それに…―。それよりも、崇弥の館暮し知ってるだろう?』
『水商売やな…』
『あいつに風邪みたいな刺激はそう言った時の意識を無意識に浮き上がらせる。防衛本能か…抑制が利かなくなるのか…』
『体を売るん!!!?駄目や!!!!』
『陽季君には好都合かも。やりたくないって好きな人がやってって言い寄るんだからな』
『イヤや!そんなんじゃ、崇弥は誰にも渡さへん!!!!』
『崇弥は君のものじゃない。ものとして見るのは炎と一緒だよ。そんな奴に僕は弟の傍に居て欲しくないね』
『…ごめん。せやな…崇弥はものやない。忘れてまうところやった…ありがとな』
『陽季君に限ってないと思うけど…10%の確率で誰かに…ただでさえ38度越してるんだから…捕まったら…。それも軍や政府だったら。最悪だな。僕は崇弥を護ると誓ったんだ。だから―』
『そのホテル何処や?』
『ありがとうございます』
『お互い様や』