惨殺掲示(7)
「司野!!!!!!!!」
強い力が腹に加わる。
誰かの腕。
「目ぇ瞑っとけ!」
誰かに抱き抱えられ頭をその肩に押し付けられる。
ガシャン!!!!!
窓の割れる音に爆発音。
凄まじい音は由宇麻の耳から音をなくす。そして、彼は視界も頭も真っ白になった。
「司野!!!!」
この声。
この匂い。
「み…まき…さ…」
「司野、骨折ってないか?」
慣れ親しんだ上司の顔がフルで瞳に映る。
手、腕、足、足首、腹、胸、肩、首、頭。
「だい…じょ…ぶ」
「よし、ちょっと我慢しろよ」
一度瑞牧の顔が由宇麻の視界から遠ざかる。
そして、抱えられた。
「30過ぎの男を抱き上げる日がくるとはな。にしてもお前、軽いな」
ぽふっと床に下ろされる。
と、
「緋!」
あか?
「緋?大丈夫ですの?意識がありませんわ」
何か白いもの。
そこに緋色に染まったものがあった。
「たか…や…!」
ぐったりと白いものに体を預けていた。その体を赤毛の女性が探っている。
「崇弥…!!」
「司野、落ち着け」
瑞牧が体を乗り出す由宇麻を押さえると救急医を呼んだ。
「あなたの名前は?」
「…………」
「答えてください」
なんやこいつ。
由宇麻は医者の胸ぐらを掴んで立つと突き飛ばした。
立てる。
「何するんですか!」
「邪魔…すんな!俺は司野…由宇麻!3足す20は23…ええか!…崇弥を…息子を…診やがれや!!!!」
捻っていたらしく痛む足を引き摺って洸祈のもとへ。洸祈の傍に座ると落ちた手首に指を触れて脈を診る。
「大丈夫や…」
「大丈夫かしら…右腕が折れてますわ。それに左足首も」
赤毛の女性は近くの木片で腕と足を自らのはんかちを裂いて添え木をしていた。
「誰や…」
「緋の知り合いの月葉ですわ。ほら、ちびっこさん…ってあなた支えられなさそうね」
由宇麻が立とうとして足首を押さえているのを見る。月葉は電話をかけている瑞牧を呼ぶことにした。
ぐるっ。
「伊予、ありがとう。あなたのお陰よ。彼を病院に届けてくれないかしら」
彼…由宇麻を目で示すと、白いもの…巨大な狼は喉を鳴らした。ぽけっとしている由宇麻の襟首を噛むと前肢を浮かし、
「崇弥ぁ!!!!」
暴れる。
「あ、司野!」
瑞牧が由宇麻に気付き、月葉に捕まった。
「瑞牧…夏輝…さん?ちびっこはあたしの友の信頼できる子が病院まで運びますから…手伝ってくださらない?」
「牙が恐いんだが」
「煩いですわね。伊予、宜しくお願いしますわ」
由宇麻の体力虚しく洸祈と離れさせられた。