惨殺掲示(6)
血が…
一面が真っ赤だった。
「―!!!!!!!!!!」
人の叫び声。
耳が痛い。
視界が真っ赤だから何が起きたのか分からへん。
拭わなきゃ。
何を?
人の血液を。
「崇弥!」
叫んでいた。
「崇弥崇弥崇弥崇弥崇弥」
何処にいるん?
“崇弥”
血が、
何故か拭っても拭っても消えへんのや。
「たか―」
「俺はここ」
そこにいたん?
「た…かや…血や…」
拭っても消えないはずだ。何故なら辺りが血溜まりだからだ。
生暖かいぬめっとしたもの。
「崇弥!」
吐きそうになる。
血が…血が…誰の…誰のなん!?
「―!!!!!!!」
悲鳴。
「腕…貫いてる…」
刀が男の腕を貫いていた。
崇弥は男に跨がり、二の腕を刀で床に縫い付けていた。
平然と刀を突き立てていた。
「崇弥!早く抜きい!!痛がってるやんか!!!」
「司野、抜いて欲しいの?」
そう静かに訊く。
「この爆弾が発動したら俺も司野も吹っ飛ぶんだよ?」
言いながら刀を肉を抉るように回す。
再び絶叫。
「いいから!抜くんや!!!!」
くすりっ
微かな微笑と共に崇弥は一気に刀を抜いた。
「っ!!!!!」
どうして…
血が噴き出した。
血を塞き止めていた刀が抜かれたことで留めなく流れ出す。
今となっては遅い。
俺は血濡れたスーツを脱ぐと止血しようとして、俺は崇弥に赤子のように抱き抱えられた。
手から落ちたスーツは血の中に沈む。
「何してんの?君が抜いてって言ったんだ。君が死を早めたんだ」
そんなこと俺は全然…
「……知らん…かった」
「言い訳にはならないよ」
言い訳にはならない。
「確かに…けど…」
言い訳に言い訳を重ねてる。でも、そんなつもりはなかった。
それだけは分かって欲しい。
「あの…な…あぅ…な…」
悲しくて涙が溢れてくる。
もう何がなんだか分からない。
すごく悲しい。
「司野、ごめん。泣くなよ」
と、頭を優しく撫でてくる。
揺れる。
揺れる。
俯いて見えるのは血。
ふと…聞こえるサイレン。
救急車にパトカー。
「崇弥…あの人…今ならまだ間に合う…せやから…」
「だから?」
離してくれへん。
腕に力を込めて離そうとするが逆に体が密着する。
「離して!」
「矢駄」
「…うっ」
微かな呻き声。生きてる。
「崇弥離せ!」
「無理」
離さないなら離させてやるだけだ。
おまじない。
『いいかい?崇弥に力で向かっていったら負けだ。君みたいのは口で向かっていっても負けだ。だから…』
「崇弥!」
『脇腹を擽れば一瞬さ』
「っぁあ!!!!!?」
崇弥の腕の力が緩む。
そこを見計らって俺は地に足をつけた。こんな状況だが蓮君に感謝をしておく。
「今助けてやるからな!」
俺は男を助けようと手を伸ばし、
「ち、近付くな化け物ぉ!!!!」
視界が白に染まった。