惨殺掲示(5)
「でも…俺は…」
こいつを殺さなくてはいけない。
「殺さないと…」
それこそ違反になる。
俺の大切な人が
お前が
殺されてしまう。
こいつは悪いことをしているんだよ?
麻薬の密売。
これで多くの人々を殺しているんだよ?
殺人者。
政府が法律が死刑宣告した。
だから殺していいだろ?
俺の罪に罪を重ねるだけで大切な人が護れるなら俺は…―
人殺しになれる。
「帰ろう?」
砂漠の瞳。しかし、それは濡れていた。
瞳を潤ませた君は腕の中から俺を見上げる。
初めて会った時、
俺は君の目に惑わされた。
俺は君の髪に惑わされた。
好きだよ。
「司野、俺の為に喋らないで」
全てが狂う。
殺せなくなる。
この震えている男の喉元を一閃すれば男は死ぬ。
「お願い…やめてや…」
あぁ、抱きつかないで。
振り払えない。
「…俺は君を失いたくない」
殺さないと失う。
悪党と君。
罪と喪失。
俺は君を取る。
俺は罪を取る。
「司野…いい子だから大人しくしてよ…」
ほら、君が抱きつくから顔に血がついたじゃないか。その柔らかな白い頬に。
君は汚れちゃいけない。
離れて。
離れてよ。
俺から離れてよ。
「大人しく…なんかせぇへん」
綺麗な瞳。
綺麗過ぎて見えない。
しょうがない。
アイツを殺そう。
「崇弥っ!!!!」
「ひっ!」
さぁ、狙おう。
刀は長くていい。
ナイフより長いから血が余り飛んでこない。
さっきは体勢を低くして狙ったため返り血をもろに浴びたが今は違う。
するりと落ちる君の手。
「司野?」
「崇弥のバカっ!!!!!!」
完全に油断していた。
俺は突き飛ばされていた。受け身が取れずに尻餅をつく。
「司野!」
「絶対に…駄目や!」
「退くんだ!!」
そこにいては悪党を斬れない。
退くんだ司野。
君が庇っているのは最低な奴なんだぞ。
カチッ
「なっ!!!!?」
「司野!!!!!」
「う…ごくな!」
司野の首に掛かる腕のその手首には…
「超小型爆弾」
ご丁寧に解説をする男。
刺激するな。
司野が巻き込まれるぞ。
刺激するな。
早く助けないと。
焦りじゃない。
怒りが止まらない。
司野が死ぬ。
殺せ。
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。
アイツを殺せ。
命令だ。
アイツを殺せ。
「殺す」
「崇弥駄目や!駄目言うてるやろ!!!!」
「近付くな!」
焦りがみえる。後退る男。
足を出せ。
刀は水平に。
腕を狙え。
隙を突け!
「―!!!!!!!!!!」