ザンコクナトキ
…―ごめん―…
謝罪を繰り返す
「な…ん…や…これ…」
こんなの…
残酷過ぎるやんけ…
最初にこれを読み切った時、俺は吐いた。体を捩って胃の中のものを全て吐き出した。
口の中が酸っぱくって水道水で漱いだ後、ソファーの上に踞った。薄く開けた瞳から見えるのはテーブルに開かれた封筒とその中身の紙。
差出人直筆で書かれたそれの内容は…
『崇弥洸祈の出生について』
崇弥慎から司野由宇麻に宛てた遺書だ。
『貴方と言う人間を真っ直ぐ見て、私は貴方にこの手紙を託すことを決めました』
そう冒頭から始まった遺書。否、手紙。
「崇弥…」
何で崇弥なんや。
何で選ばれたのがよりにもよって崇弥なんや。
由宇麻はいつの間にかある人物に電話していた。
そう、俺の勘が当たっていれば、きっと、この人物は…
『はい、二之宮です』
「司野由宇麻や、蓮君」
二之宮蓮のはずだ。
『あ、童顔君ですか。電話番号教えましたっけ?』
「タウンページから劇場にな」
『おっと。オーナー、口軽い』
にー、だぁれ?と、遊杏の弾んだ声が電話口から聞こえた。
ん~?童顔君だよ。と、二之宮は返す。
どうしたの?と、遊杏が近くで跳び跳ねる気配。
『で?どうしたんですか?』
これを確認すれば真実かどうか判る。
真偽をはっきりさせたい反面、真実だった時、この内容をどう受け止めれば良いのか分からなくて怖い。
「その…蓮君は…」
『はい、僕は?』
訊くんだ。
俺は崇弥の父親や!
「蓮君は…崇弥の……兄だったんか?」
『遊杏、僕はこれから大事な話をするからリュウ君の散歩に行ってきてくれないか?』
いいよ。そう言った遊杏は「リュウ君っ」と呼び、犬の吼え声と共に遠ざかった。
『じゃあ、一緒に昔話をしようか?司野由宇麻さん』
二之宮蓮は長い息を吐いた。