裏切と正義
「さがさんいないから、あげてもいいよ?」
「……………………」
コウキはじっと少なくなったあんばださークッキーを見下ろすと、腰に付けた本日の戦利品、あんばださーアンゼリカの存在を思い出して、隣に座る少年の口元にクッキーを一枚寄せた。
しかし、椅子に後ろ手に縛り付けられる少年はどこでもないところを睨み、コウキもクッキーも見ない。
「…………ねぇ、お腹空いてないの?給食食べれてないよね?いざって時の為に、食べられる時に食べといた方がいいよ」
「…………………………家に帰りたい……」
「……………………うん。亮太君すっごくいい子だから、あの人はきっと来てくれるよ。そしたら、亮太君はお家に帰れるよ」
「…………どうして意地悪するの……?おにいちゃんは悪くないよ」
少年がそっぽを向いたままぽつりぽつりと言葉を零す。
「うん。分かってる。これもお兄さんの為にだよ。……でも、亮太君に話したら、君は多分、そんなことしちゃ駄目って言うから。…………ごめんね。お菓子食べて?」
「悪者は決まって、皆の為とか地球の為とか言うんだ……信じない」
ぱき。
コウキは目を丸くすると「正義の味方だって皆の為とか地球の為とか言うよ」と言って乾いた笑い声を上げ、クッキーの箱を腕の中にしっかりと収めた。
ここは極普通の街中に極普通の住宅が並ぶ一角――極普通の、さして言える特徴もないただの一軒家だ。
幸せな家族もいれば、不幸せな家族もいて、時に独りぼっちの人もいる。形はどうあれ、程良く人が集まり、取り敢えず生きている人達がいる。その中に紛れるようにして佇むありきたりな造りの家は2階建てで、そこには結婚している男女二人が住んでいた。
朝は家の周りの落ち葉をはき、職場へ向かう旦那を見送る妻の姿が。昼は買い物帰りの、夕は台所に立つ姿。夜は仲睦まじく食卓を囲む夫婦の姿が。
しかし、それも今朝まで。
今はカーテンを締め切った部屋から笑い声一つ、物音一つすら聞こえない。
そろそろ妻の食事を楽しみに、お腹を空かせたスーツ姿の夫が現れるはずだが……。
ソファーに寝転ぶコウキは長い足を組み直すと、暗闇の中で項垂れながら椅子に座る少年をちらと見た。
それから、彼は壁に目を向けると音も発てずに立ち上がる。
少年も闇が動く僅かな気配に気怠そうな表情を残したまま顔を上げた。
「…………何?」
「………………………………来たよ。君の救世主」
「!!っ、おにい――」
「ごめんね、煩い」
そう言ってコウキは少年を連れ去る際にも使用したハンカチを少年の口に突っ込み、救急箱に入っていた包帯を口の上から乱暴に巻き付ける。「痛くない?」と聞きながらも、少年の涙目は無視してキツく包帯の端を結んだ。
そして、少年を縛り付ける椅子ごと部屋の真ん中に移動させる。
「さあ、亮太君はここだよ……お兄ちゃん」
ぱちぱち。
少年を背後に立つコウキの足下に生まれた仄かな光源。
それは見下ろす少年の瞳に星空のように光をちらちらと反射させ、瞬時に部屋を明るく照らし出した。
オレンジ色の炎で出来た絨毯が敷き詰められていた。
「んー!んん!」
少年の爪先を掠める炎に少年は唸り声を必死に上げる。しかし、コウキはきょろきょろと辺りへと視線を忙しなく向け、少年は放って置く。寧ろ、頬を上気させ、唇を不気味に引き伸ばし、両端を吊り上げた彼は、何かに期待を膨らませ、少年のことなどすっかり忘れてしまっているようだった。
バキッ。
微かに聞こえた木が折れるような音。
天井の更に向こう――2階から。
そして、何かを折り、砕き、変形させるような音が続き、『ばきり』と言う音と共に、コウキがじっと睨んでいた天井から砂埃が滝のように降ってきた。
彼の見開かれた緋色の瞳は咄嗟に閉じられ、腕で口と鼻を押さえる。
少年もきつく目を瞑り、息を止めた。
「邪魔っ!」
暫くして、コウキが不意に洋服の下からくぐもった声を上げた。すると、炎の勢いが目に見えて増し、炎の波が粉塵を押し流した。火の粉がちらちらと瞬き舞う。
そして、炎に負けないくらい輝く瞳で刺さるような視線を前方に向けたコウキは左手を開き、握ると刃渡り20センチぐらいのナイフを持っていた。ナイフは炎を纏い、刀身は直ぐに見えなくなる。
「!!!?」
コウキが粉塵の壁を横に薙いだ時、壁を貫くように現れた障害物を避けるように飛び退いた。
バリンッと言う音がし、テーブルに置かれていた観葉植物の植木鉢が壁にぶつかって割れる。
「………………彼は何も知らない少年ですよ?非常識では?」
あくまでも冷静な男の声。この状況のこの場には似付かわしくない燕尾服の男性。
何かの際に軍が使用する為に、ただの隠れ蓑として存在している形だけの夫婦生活が行われていたこの家の住人ではない。
「何を知っていようと知らなかろうと、利用できるものは利用する。それが俺の仕事。でも、俺の予定では彼を助けに来るのはあんたじゃない。仲間なんだろうけど、あんた誰?」
白色の手袋をし、前髪は七三で分け、ヘアワックスで髪型が崩れないよう固めている。
その姿は典型的な――
「――執事さん?」
男は黒の革靴を舐める足元の炎を見下ろしてから、コウキの問いかけに頷いた。
「如何にも、私は執事です。ですが、今は執事を辞めています」
「そうだね。こんなとこに来るの、執事さんなわけがない。こんなとこに来る人は……」
コウキは怒りを露わにして「あんたはただの敵だ」と、ナイフを逆手に男へと飛び掛かる。
男も右手袋を外すと、その手に仄かな光源を宿した。
そして、自身に向けられたナイフを手のひらで受け止める。コウキは僅かに目を見開き、目つきを険しくすると、腰を落として力を込めた。
ナイフは男の手のひらの肉を割き、骨を砕く――コウキは男に手を掴まれる前に素早く退いた。
「っ、やっぱり、あんたも炎系か」
「そうですよ」
男の手のひらには傷一つない。
コウキの炎で出来たナイフで傷つけられないもの、それは炎に耐性があるもの。炎に耐性がある人間、それは炎系の魔法使い。
「私もあなたと同じ炎系魔法の使い手です」
「へぇ………………なら、こうするしかないね」
煌々と部屋を照らしていた炎が一瞬で消えた。
そして、コウキが先の爆風で倒れたスタンドの柱に手を付けると、赤く溶けてポールが途中で切れる。適当な長さに切ったそれは先が鋭く尖っていた。
「それを使えば、私を殺せますか?」
暗くなった室内に響く男の声。コウキは肩をすくめて小さく笑う。
「…………良く言うよ。はは…………ぁあ…………………………ムカつくなぁッ!!」
コウキがナイフと同じ要領で、ポールで男の居た場所を横へ一閃した。しかし、空を切る気配にコウキはくるりと背後を振り返って薙ぐ。
キンッと金属と金属がぶつかり合うような高音が鳴り、コウキの舌打ちと共に、遠くの方で何かが落ちる音がした。さっきよりもあからさまに得物の重量が軽くなったのが分かる。何か鋭利なもので即席の武器を切られた。
「そんなものでは私には勝てない。分かっているでしょう?炎系魔法に耐えられる武器がなくては……軍人さんなのに携帯していないのは、あなたがただの雇われか…………使い捨ての飼い犬さんか」
「綺麗な翠玉の短刀使いさんは政府の人かなぁ?」
「目が良いんですね、あなた」
「ううん。俺は鼻が利くんだ。だから、分かる」
闇に浮かぶのは二つの炎。興奮を抑えきれない獣の瞳。
「だだ漏れの殺意よりも、隠された殺意程、ツンと臭うんだよ」
「あんたは臭い」と言ったコウキはポールを臭いのする方向へと槍のように投擲するが、鈍い音と共に弾かれる。しかし、投げると同時に男との距離を一気に縮めていたコウキは手にした燭台を男の喉仏を狙って突き上げる。
「壊れろっ!!」
が、燭台の先端は男の首の皮を掠めて止まった。
窓の向こうで木々が風に揺れ、木の葉が擦れ合う音がする。
住宅地に満ちる穏やかな夕飯時の空気。
「あなたが死にたがりで無ければ、止めると思ってましたよ」
男の声帯の振動が、触れ合う燭台の針を通してコウキの手に伝わるが、それ以上にコウキの手が震えていた。
「…………ぁ……あ………………」
「翠玉の小刀は父が主に頂き、父が死ぬ間際に譲ってくださった物。私が主から頂きましたのは、彼です」
『クサい……臭いよ…………ボクの大っ嫌ィな……血の臭ィだあ……』
コウキの足元では、確かにちゃぷりと水が跳ねる音がする。だが、フローリングの床は足を震わせたコウキの靴の踵でカタカタと鳴る。
「彼も鼻が良いんです。嫌いな血の匂いには特に。どうやらあなたも臭うらしい」
黒くて長い爪がコウキの顎、首筋の肉に食い込んだ。
コウキはゴクリと溜まった唾を飲み込み、目をキツく瞑る。
『食べてィイ?……血生臭いのがまたウマイ…………ネェネェ』
闇がもぞりと動き、頬を撫でた黒い爪が細く赤い血の線を描いた。
『もっともっともっと怖がッテ……!もっともっともっともっと美味しくナァレ……!』
眼球が闇を見下ろし、恐怖に開かれた瞳は一線を越したのか、歯軋りと共に赤黒く不気味な輝きを増していく。
「…………俺を…………ぅっざい…………ウザイッ!………………待つのは止めた!!…………あの腰抜け野郎……がっ!」
コウキの唸りと同時に庭に面したガラスが割れる音がした。
「亮太君、大丈夫ですか!……ロビン、あなたは彼を見張っていてください!」
男は咄嗟に亮太の安否を気にし、椅子ごと少年を抱えて窓の死角へと跳ぶ。
続け様に更に2発。
確かに、腑抜けたように軽い発砲音の後に遅れてダイニングテーブルに質量ある小さな物体がぶつかる音が。
「事前に調べたはずなのに…………ややこしくなりましたね」
「い、いだい……耳いだい……や、叫ばないでよ、さがさん…………ごめんって…………」
男は亮太の拘束を解くと、「私の傍から絶対に離れないで」と角に寄せて背中に隠す。亮太自身は喋ることもできないのか、その場に蹲って動かない。
何も知らない少年なのだ。
極普通の極ありふれた家族の一人息子。そんな少年が知らない者に無理矢理連れてこられ、炎やら化け物やら……。
そんな時、夏と秋の狭間の湿気を含んだ空気にひんやりと冷たい空気が混じる。
『気を付けテ……臭ゥよ!』
男の命令を無視してコウキから離れ、男の前に移動した闇――男の契約魔獣のロビン。そのシルエット、鳥の姿が壁に浮き上がったのは、コウキが攻撃目的ではなく、自分を守る意味で炎を周囲に敷いたからだ。にやりと笑った表情を最後にコウキの姿は見えなくなる。
「ロビン?」
『来るヨ!』
テーブルの方。外部からの攻撃があった箇所が青白い光を放っている。
空気は徐々に冷たくなり、「さ……寒い……」と少年の掠れる声がし、男は自分の吐息が白く色付いていることに気付いた。
「………………氷結……魔法か…………!」
気付いた時にはもう遅い。まるでアンティークかのように瞬く間に現れたのは氷柱。鋭く尖った先端が宙に突き出している。そして、本棚の本を崩し、分厚い洋書を串刺しにした氷柱が現れたのを見た瞬間、男は亮太を抱えて丸くなった。ロビンも翼を広げて盾になり、嘴を男の頭に寄せる。
ばきり、ばきり、ばりん。
あらゆるものが問答無用で破壊される音が鳴り響いた。
「もう……やだよぉ」と力なく泣く少年を男は抱き、「私があなたをあの人のもとへ送り届けますから……絶対に」と励ます。肌で感じる氷結魔法の規模に耐えられる自信は全くだが、それでも男はコウキと同じ様に周囲に炎の壁を創造した。
「見てられない!レイヴン、結界を張れ!!」
グゥ。
庭に駆け込んできたのはアロハシャツの男。
そして、屋根に降り立ったのは巨大な獣――大きな黒色の烏。
「レイヴン…………大黒鴉……まさか中立の長が……?…………おい、馬鹿、ヤバいのが来てるぞ」
『うえ?……ヤバいのはさがさんなんだけど……さがさんの魔法、本当に見境ないね。俺、流血沙汰なんだけど』
「全員死ね」
『ところで、どうしたの?』
ケロっと態度を変える彼には本当に何かの拍子に死んでほしい。気持ち悪くて反吐が出る。
「お前と同じ馬鹿が来てる……が、お前よりも厄介な奴だ。レイヴンが来てる」
『え?レイヴン?外国人?誰?意味分かんないんだけど』
ザザ……ザ……――
通信に入るノイズ。レイヴンの影響か。
中立の長は防御を得意とする魔獣――大黒鴉――名の通り、巨大な烏の姿をした魔獣と契約している。確か、契約主の名前は桐だ。
あの阿呆面のアロハが桐の人間だとして、レイヴンはマズい。あの魔獣の前では魔法などないも同然。僕は兎も角、実働用に差し向けた彼には魔法以外の武器はない。その魔法が封じられれば…………まぁ、彼が戦死してくれたら僕は万々歳だが、結界に閉じ込められたら僕も逃げ場がない。
じゃあ、あいつは見捨てて……こっちの情報なんてちょこっと痛めつけたらべらべら喋りそうだしな。いや、あいつはマゾだから喋らずにもっと殴って欲しいと強請るかもしれない。
取り敢えず、きちんと死んだのを見届けてからじゃないと、彼は捨て置けない。
「お前、今すぐ自殺しろ」
『え?…………あー、ザーザー煩くて聞こえないー』
下手くそな棒読みするな。
僕はアロハ野郎の頭に照準を向けた。
契約主が死ねば、暫くの時間稼ぎにはなるだろう。
「守るだけじゃ誰も救えないんだよ」
まだ結界は張られていないし、この距離なら外さない。
僕は向かいのマンションの屋上から赤銅色の長髪を揺らす男の後頭部に狙いを定めて引き金を引く。
その時、肩をビクつかせた桐が慌てて俺の方を振り返る気配がした。
「もうおせぇんだよ」
風が止んだ。
世界の音が消える。
この甘ったるい匂いはやはり、お前だったか。
「――待ってたぞ」
僕は意味不明に込み上げてくる笑いを抑えられない。
喉はピクピクと震え、声も勝手に震える。
『さん……さがさん……大丈夫……ねぇ、さがさん!』
ノイズ交じりの彼の声。
彼に大丈夫と言われると、腸が捩れるぐらいイラついてくる。
「大丈夫じゃねぇよ。糞が。役立たずが」
『耳……死ぬって……ごめん……もう謝り疲れたけど……』
謝り疲れて死んでろ。
僕は立ち上がった。
わざわざ敵に姿を晒すなど、馬鹿のやる行為だが、僕は桐を庇って片足を撃たれながら、どうにか立つ男を見下ろした。
そうすれば、僕のイライラは少しは治まると思ったからだ。
しかし、痛みに顔を歪ませて必死に耐える奴の顔が僕を見上げた瞬間、柔らかくなり、奴はぺこりと頭を下げた。
それは誰が見ても分かる謝罪の行為だ。
僕に対する謝罪の行為。
「なんでお前が僕に謝る……!」
僕は軍の裏切者に興味なんてこれっぽっちもない。だから奴らの死に際にいくら謝罪されようと何も感じない。怒りも感じない。許して欲しいのなら許す。
まぁ、そこは許さなくてもいいが、無駄口が閉じられて静かになるのなら許しても構わない。
ただ、いくら奴らが謝ろうとも、結果的に僕が奴らを切るのはそれが僕の仕事だからだ。
だが、あいつは絶対に許されない裏切りを犯した。
僕を裏切った。
この僕を裏切った。
あの薄汚い豚共同じ…………イライラする。
『さがさん!俺、ヤバいんだけど!マ、ジ、で、死ぬ!』
はぁはぁと聞きたくもない奴の息切れを耳元で聞かされる。鏡を見なくても分かる、僕の眉間のシワもヤバい。この若さで僕の眉間に深い溝が刻まれでもしたら……あの男の額の皮を奪って移殖するしかないな。いや待て、眉間のシワって移殖で治るのだろうか。
『もうヤダ!死ぬ!魔法の使えない俺はただの人なの!戦闘執事になんか勝てないのぉ!!さがさん!武器!武器くださぁい!!』
喚いてる間は余裕だろう。
ドМ野郎にはこれぐらいご褒美でしかない。ざくざく切られて腕の2・3本失って初めてちょっとヤバいぐらいだろう。
今の大問題は目の前の大罪人だ。
僕は銃をホルダーにしまい、腰のナイフを鞘から抜いた。
それを見た裏切者は大事な大事な桐のおぼっちゃまに耳打ちしてから逃がし、僕のいるマンションの入り口へと入って行った。
『さがさん、さがさん、逃げていい?おっかない執事しかいないよ?』
いや、いる。
「お前は執事とアロハをやれ」
『アロハ?え?レイヴンさんのこと?……執事さん、ホント強いのに追加!?』
「死ぬ覚悟でやればいい」
返り討ちにあって死んでくれればいい。
確かに、執事の魔法属性が彼と被っているとは言え、彼の火力が強ければ勝てる。しかし、羽虫程度にはウザったい彼の魔法の威力と、執事の魔法の威力はほぼ互角だった。戦闘能力もなかなかで、足手まといの餓鬼がいなければ、彼の息の根をさっくり止めてくれていたかもしれない。
しかし、餓鬼を餌に釣るはずだった死んだはずの裏切者――「祭朔太郎」が現れなかった以上、執事野郎をみすみす逃すわけにはいかなかった。だから、あいつのピンチにしょうがないから力を貸してやった。勿論、利息はトイチだ。だが、それももういい。
彼が死んで失う僕への借金はもったいないが、「祭朔太郎」よりも極上の魚が現れたのだ。
執事もアロハも殺して構わない。
キィ……――
この僕を待たせておきながら、涼しい顔で屋上のドアを開ける男。
Tシャツにジーンズ姿と、堅苦しい性格には似合わないラフな格好。
……それがあいつの本当の姿だったのだろう。僕に見せてたのは裏の顔。裏切者の顔の方。
「すみません、相楽さん」
申し訳なさそうに眉尻を下げて、片手にナイフを握り締めながら謝る裏切者。
「謝るな」
「いえ……謝らせてください、相楽さん」
謝って何になる。僕をイラつかせて寿命を削りたいのか?
ああ、そういうことだな。
僕に対して、更に罪を犯すわけだ。
そんなお前には――
「僕の名を呼ぶな、相川。お前はただの裏切者。僕が殺す」
死刑しかない。