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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
あなたと共に歩む
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不撓不屈(4)

今夜で4回目の外出になる。

昨夜はたっぷり5時間は歩いていたが、今回はどうなるか。

「なぁ」

「え……あ、はい」

僕の二三歩前を行く彼が立ち止まり、僕を振り返っていた。

黒のジーンズに紺色の半袖パーカー。暑いだろうに、彼はフードを被っていた。しかし、それを僕は指摘しない。「脱いでは?」とは言わない。何故なら、僕にとってそれは有難いことだから

「いつもありがと……でも、別に律儀に俺の背後にいなくてもいいから。好きなとこから監視してて構わないし……明日からはもう外には出ないから……」

「…………え!?そ、そんな!僕は少しも迷惑にも面倒にも感じていません!」

寧ろ、こう暗くなってからでしか、彼に外出許可を出せないこと、気分転換の外出のはずなのに、僕がどうしても彼の目の見える範囲にいないといけないこと、他にも色々、彼に肩身の狭い思いをさせていることを謝りたいのに。どれもこれも僕の力が不足しているから。

「……ごめんなさい。(なつ)さん…………」

「え……いや、待ってよ。眞羽根(まはね)さんが謝んないでよ。眞羽根さんは全然悪くないから。こうして外に出れてるのも眞羽根さんが魔法で俺のこと隠してくれてるからだろ?」

「だけど……僕にもっと力があれば、あなたの自由に外出できるし、あなたから僕の姿も隠せる。僕が中途半端なばかりに……」

僕は確かに、カミサマだ。本当に気の遠くなるような昔に、僕は――僕達はヒトからカミサマになった。具体的には時を止めたように歳を取らなくなり、死ななくなった。つまりは、不老不死の体となった。今のヒト達はそれをとても幸福なことだと言うのかもしれない。老いず、死なず、永遠に。遣り残し、後悔しながら死ぬことがなくなるから……だけど、僕達は決して、善行の末に、慈悲の上に、この体質を得たわけではない。ただ幸運だっただけでもない。

僕達は罪を犯した。だからこれは、僕達への罰だ。

“死なない”は“死ねない”と同義。僕達は永遠に死ねないのだ。死ねないのに痛みを感じる。これを罪と呼ばずして、神様からの贈り物とでも言うのだろうか?

そして、そんな僕達にはそれぞれ固有のチカラがある。後に「魔法」と呼ばれることになるモノだ。

僕達の運命が変わってしまったあの日、あの時に抱いていた各々の執着を表すように……罪の象徴を。

僕は『幻影』を。

きっと、神様は嘘吐きで見栄っ張りの僕に幻影と言う名の剥がせない仮面を与えたのだろう。

だけど、小心者の僕にはそのチカラに見合うだけの魔力もない。今のヒト達が持つ魔法よりも、僕のチカラはよりシンプルで威力も強いはずなのに。

きっと僕はカミサマの中でも最弱。補助系の魔法がなかったら、夜の暗さの助けを得てヒト一人を隠すのが精一杯だなんて。

「違うよ!俺、感謝してんだって!ただ、いっぱい助けて貰ったから!俺には返せるものもないのに……だから十分だって……!」

夏さんは僕の眼前に迫り、必死に声を押し殺しながら、それでも僕に伝えようと息を十分に含ませた声音で喋る。襟首から彼の細い首筋が剥き出しになり、僕が彼を神影(みかげ)さんの所へ連れて行った時から随分と痩せてしまったのが窺えた。まぁ、これでも夏さんが起きて直ぐの時よりはマシになりはしたが。

「夏さんは優しい人です」

「え……何……優しくないから……」

不意にフードを引っ張り、深く被ろうとする。照れたらしい。

しかし、これは僕の心の底からの言葉であり、彼がどれだけ照れようと、僕は彼の優しさを撤回など出来ない。彼は優しい。

「僕は誰かの役に立ちたい。迷惑なら止めますが……そうでないなら、僕はあなたの役に立てるだけで十分なのです」

誰かの役に立ち、過去の罪滅ぼしになるなら、僕は既にお礼を貰っているのと同じだから。

「…………意味分かんない。眞羽根さんはお人好しだよ……優しいのはあなただ……」

夏さんはじっと僕を見詰めてから、不意にそっぽを向いた。


「はにゃ。神影、二人いたでー」

「ああ。…………って、シアンは?」

「ま……待って………………」

夏さんと静かに河川敷を歩いていると、遠くから慣れた声が聞こえてくる。振り返れば、駆け足で土手を上がってくる雪癒(せつゆ)の影が。そして、彼の背後から遅れて神影さんが現れた。

「雪癒、どうしたんですか?」

「どうって……分かっててお散歩してたんとちゃうんけ?」

「?」

何かあっただろうか。夏さんも首を傾げている。

「灯篭祭りだよ。一応、町内会に金出してるし、楽しまなきゃな」

「我はお隣さんを大事にするタイプやけぇ。ほな行くで」

「…………行くって……」

怪訝な顔をした夏さん。彼はきっと人前に出ること恐れている。それもそうだ。

彼は追われている。だから、隠れて過ごさなくては行けない。そう彼に言ったのは僕達だ。

「バレへんバレへん。なぁ、眞羽根?」

その時、雪癒ははっきりと僕を見た。買い被り過ぎだ。寧ろ、雪癒は僕に祭りで賑わう中でも夏さんを隠し切れと要求している。それは彼なりの夏さんへの気遣いであり、僕への信用であるのだから、出来ないと音をあげる訳にはいかない。

「はぁはぁはぁ……皆さん……早い……」

シアンさんだ。彼の声だけが遠くから聞こえていたが、土手を上がってきた彼は額に汗をかき、前屈みで息を切らしていた。彼の今にも呼吸困難で倒れそうな息遣いに皆が立ち止まって彼を振り返る。

「ホントに体力ないな。1日5分でも家の中でいいから歩けって言ってるだろ」

「でも……階段苦手……はあ……疲れる…………」

「シアンの部屋、一番上にするか」

「そこは我の部屋や!替えるんなら神影の部屋とやからな」

「俺の部屋は荷物多くて引越しが大変だからな。……なら、地下か。実験室はどうだ?明るいぞ。なんなら、草原の壁紙で開放感を出してやる」

「嫌ですよお!歩きますから!毎日10分は歩きますから!」

神影さんの提案に、シアンさん自身も体力のなさに危機感を感じてか、自棄糞のように吐き捨てて拳を作った。しかし、彼に体力がないのは、彼の運動嫌いのせいだけではない。

僕も初めて見たが、彼は人間界を住処にする精霊だ。ヒト型を取れる精霊であるだけでも珍しいが、彼は完全にヒトの領域に溶け込んでいる精霊。普通、森の奥で自衛の為に集団で生活する彼らだが、シアンさんは自立している。少々、臆病なところもあるが、魔力の流れを感じ取るのにちょっと長けているぐらいでは、彼がヒトでないことなど気付きはしないだろう。

ヒトの似姿を取り、普通のヒトでも見ることや話すことができる精霊――彼は精霊の中でも高位の存在なのは確かだ。かと言って、精霊はその力の殆どを大地に流れる魔力に頼っている為、自然とは程遠い都心特有のビル群やコンクリートに囲まれたこの地では、彼の体力は本来の3分の1も怪しいところだ。

「あ!あれ!灯篭!」

シアンさんが川上を指差し、僕達は闇に溶ける川辺の方を向いた。

「もう流れてるんか」

雪癒が目を細め、川面に浮かぶ明かりを見詰める。

鮮やかな花柄の和紙を透かすのは蝋燭の灯。ゆっくりと灯篭が流れてきていた。

「神影、先行ってるで。駄菓子を貰い損ねる」

「こういう時だけ、子供の姿を存分に利用するよな……」

「我は好きで子供の姿やない。それに、聞かれたら答えるで。我は大人や、と」

そう言って、ハーフパンツの裾を揺らした雪癒はサンダルを鳴らして土手を走って行く。

「シアン、お前も行けば?先着で子供に配ってんぞ」

「ぼ、僕は子供じゃないですもん……」

「そうか。……夏、来い」

「え…………っ、俺!?」

神影さんがぼーっとする夏さんの腕を取り、引いた。その勢いでパーカーのフードが捲れる。素っ頓狂な顔が曝け出された。

「シアンも眞羽根も露店の遊び方なんて知らんからな。一緒にいてもつまらないだろう。だから、行くぞ」

「え……俺……」

夏さんがちらと僕の様子を伺い、彼が僕の幻影魔法の範囲から外れることを恐れているのが分かる。

「大丈夫ですよ」

人目に付かないことが一番だが、微妙な人混みよりは人で溢れ返っている場所の方が隠しやすかったりする。それに、シアンさんが傍にいるお陰で僕の魔法の威力も上がっている。これも大地の魔力を使うのが得意な精霊の傍にいる恩恵だろう。

「直ぐに追いつきますから」

「ほらな。先に行ってんな。そうだ、これ。二人の分のお小遣い」

えんじ色の刺繍の施された巾着袋。神影さんはそれを僕の手のひらに二つ乗せた。そして、「じゃあな」と困惑する夏さんを引っ張って行く。直ぐに彼らの姿は見えなくなった。



「神影さんって世話好きですよね」

「え?」

「灯篭祭りに行くって言ったのも神影さんなんです。言いましたっけ。僕、閉じ込められるの苦手で」

シアンさんは続々と流れてくる灯篭を見下ろしながら、土手に座る。僕もそんな彼の隣に座った。

「長い間、暗くて狭いところに閉じ込められてまして……変だって思ったでしょう?ヒトとは相容れないはずの僕がここにいること」

確かに変だとは思った。だけど、僕も言えたものじゃない。わざわざ軍に囚われ、使われていたカミサマの僕には。

「あなたも知っての通り、僕は精霊です。ですが、僕がこうしてヒトの姿を持ち、ヒトの目に見えるようになったのは、実験体として捕まった多くの仲間達の中で、僕だけが実験に成功し、生き残ったからです。そもそも僕は湖の浅瀬を住処にするセイレーンの歌声から生まれた波紋の一つ。姿形を持たないとても脆く危うい存在でした。そんな僕達をヒトは捕まえ、実験した。殆どが実験を行う前に衰弱死してしまいましたが……僕達は母体であるセイレーンから離されると長くは生きていけない」

シアンさんは昔を懐かしむような素振りを見せ、そこには苦痛はあれど、憎しみは感じなかった。彼は姿は幼さの残る青年だが、大人びた一面も持ってる。そんな彼に何が起きたのか。

「科学者は僕の仲間を殺した。でも、僕は……本来ならセイレーンの下に居たとしてもひと月と持たなかった僕はこうして寿命を得、姿を得、ヒトと話をできるようになった。仲間を殺した科学者も、檻のような狭くて暗いところも嫌いですけど、僕はこの運命を憎んではいません。リトラさんにも会えましたし」

“リトラさん”は神影さん曰く「シアンが惚れてる女。でもその女には崇拝している別の男がいる」とのこと。つまりは、片思いの相手――でいいのだろうか。

「だからですね、仲間を見殺しにした僕はセイレーンや他の精霊達と共に生きることはできませんが、こうして悪いヒトだけではなく、沢山の良いヒトに出会えたこと、とても幸運なことだったと思うんです。仲間達からしたら……僕はとても卑怯な奴なんでしょうけど…………神影さんは僕の話を聞くと、窓から良く外が見える自分の部屋を僕に下さいました。勝手に上がり込んだのは僕だと言うのに、追い出すどころか……次の日には部屋の壁紙を蓄光塗料で夜に光るものに変えたんですよ」

少しでも彼が怖くならないように。

シアンさんはくすりと笑うと、灯篭の光をその美しい透き通るような青色の瞳に反射させた。ぶかぶかのワイシャツの袖を片手で押さえながら、ちょこんと人差し指で川の水に触れる。

「神影さんは世話好きでお優しい。本人は褒められるのを嫌うんですけど。でもそれって優しい人に多いんですよね。“ツンデレ”って言うんだって雪癒さんに教えてもらいました。僕も神影さんみたいなツンデレになりたいです」

「ツンデレ……」

ツンデレの使い方が当たっているかどうか、僕も自信はないが、彼の神影さんに対する熱い信頼は伝わってきた。

確かに雪癒もなんやかんやで世話焼きなところがあるが、神影さんの場合、その世話焼きに際限がない。いくら呆れても彼は困っている人を見過ごすことは出来ない。

詐欺とかに遭う典型的なタイプ……。まあ、そこは神影さんの頭の良さや何でも疑って掛かる雪癒のお陰で騙されないのだろう。

「あ、お祭り行きましょう!僕、日本のお祭り大好きなんです!わいわいしてて、お囃子鳴って、あと、綿飴!」

ふと、シアンさんは勢いを付けて立ち上がると、僕を振り返って満面の笑みを見せた。それから、「折角貰ったお小遣い使い果たしましょう!」と、悪戯な顔をする。彼の境遇は想像し難いものがあるが、彼自身は素直で子供らしい。

それにしても、全く成長しない僕らカミサマや、時間の経過と共に成長するヒトと違い、魔獣の成長は複雑怪奇だ。成長はするが、それが時間に起因するものもいれば、それ以外に起因するものが少なからずいる。僕が聞いた中で興味を惹かれたのが、ヒトの涙を喰って成長する魔獣だ。また、時間に起因すると言っても、時間の流れるスピードは種族に依るどころか、個体間でも違うとか。

思うに、シアンさんに至っては、その幼顔を見る限りではヒトよりは成長が遅いのだろう。彼は川を流れる灯篭の明かりに誘われて、祭りの会場へと向かう近所の人達を見、土手を上がって行く。そして、僕を見下ろしながら手を振る。

そんなシアンさんの肩を追いかけるように青色の仄かな明かりがちらちらといくつか見えた。それに、尾っぽ。月明りを透かしたのは紛れもなく、魚の尾だった。

多分、あれは精霊。

シアンさんは彼らの存在に気付いていないようだが、彼は精霊を生み出し、従えられる――他の精霊と共に生きることが出来ないと言った彼にとって、なんと皮肉なことか。

しかし、今は彼が笑い、幸せを感じれることこそ重要だろう。

夏さんもまた…………僕は力になれていないようだけど。


僕は笑顔で待つシアンさんを追って土手を転ばないように上った。







嘘を吐いたお前には「幻影」を。

生きる為に仲間を見捨てたお前には「生命」を。

ただただ暴れただけお前には「破壊」を。


全てを見ないふりをしたお前には「傍観」を。



――をしたお前には「死」を。



贈り物()を授けよう。







「あれ?さがさん?」

ソファーに寝転がり、純愛ものの古い映画を眺めていたコウキが早々に飽きてテレビの電源を落とすと、暗くなった画面に一人の男の姿が反射した。

コウキがくいと顔をそちらへ向けると、相楽(さがら)の顎が目に入る。

相楽はじっとテレビ画面を見詰め、ソファーの直ぐ後ろに立っていた。

「え……あ……さがさん?大丈夫?」

いつもなら、コウキに話し掛けられた瞬間――コウキと同じ空気を吸っていると気付いた瞬間に、それはもう嫌そうな、嫌悪感丸出しの表情するのに、その時の彼は無表情で固まっていた。今夜の相楽からは違和感しか感じないが、そもそも、彼がコウキの部屋に自ら入ってきたことが有り得ないことだった。

コウキはそんな彼にびくびくと震えながら、窺うように体を起こす。

「…………ど、どうしたの?……あ、テレビ煩かった?……ごめん…………それともずっとお見舞いサボってたから怒りに来た?…………これからは字幕で見るから…………さがさん……魂抜けてる?」

「……………………」

相楽は何も言わないし、微動だにしない。

コウキはソファーの背凭れに両手を乗せると、取り合えず、相楽の今夜の服装と散らかし放題にしていた自分の部屋をチェックした。

相楽は黒のズボンに黒の詰襟、腰には黒の銃。相楽の右手の人差し指は銃の引き金に掛り、勿論、安全装置は外されていた。

「…………あ……さがさん、やっぱり怒ってる?…………でも……さがさんがとうどーさんケガさせたりしたら、さがさんが罰で殺されちゃう……し……」

ふとコウキが相楽の足元に目をやると、楽しみに取って置いた箱菓子が彼の黒の革靴に踏みつけられていた。箱からぐちゃりと抹茶味のクリームをはみ出させたクッキーが無残な姿で覗いている。

「…………俺のあんばださー……うぐ……新作だったのに……」

まぁ、床に転がしておいた自分も悪いのだが。たたきのある部屋に土足で上がり込んでくる相楽の方が罪は重いだろう。

「なあ」

「!!」

相楽が喋った。コウキは慌てて正座をすると、相楽を前に背筋をこれでもかと伸ばす。

「“あんばださー”って何?」

目線はテレビ、顔は無表情のまま淡々と問いかけてくる相楽。

「え………………あんばださーは……マスコットキャラの名前?……がちゃがちゃのあんばださーシリーズ……」

「なんで“あんばださー”なわけ?意味は?」

「…………“いい塩梅ださぁ”の略……あんばいださー……あんばださー……だけど」

「あっそ」

「そっちから聞いといて意味分かんない」とは言わない。“あんばださー”ファンのコウキでも、目の前で銃に手を掛ける相手に言葉を選ぶ。

「それで……さがさん……こんな遅くにどうしたの?その格好……」

夜中の11時半に武器を装備し、黒衣で現れるなど――

「お前、オカマだよな?」

「え?」

「お前、相川(あいかわ)が好きだろ」

相川は相楽の仕事仲間、相棒だ。そして、コウキを監視する役目を負う、二人の内の一人。もう一人は相川の相棒の相楽。

コウキはぽかんと口を開けると、宙に浮かせた指をうねうねと動かした。混乱する頭をジェスチャーで表現するなら、そうなるだろう。

「え?あいちゃん?俺が……あいちゃんを?」

「…………」

「………………確かに、あいちゃんは優しいから好きだけど……俺、別に……オカマじゃないんだけど……………………俺、オカマかな?」

「知るかよ。でも、相川が好きなんだな」

「…………んん?……そう言われると…………そうなのかな?…………俺、あいちゃんが好きなの?」

「なら、僕に従え」

「?」

相楽がコウキを見下ろした。

その瞳に迷いは一切なく、何かを覚悟している風であった。コウキも仕事中以外で見せる相楽のコウキに対する真剣な表情に、暫し戸惑うと、彼も負けじと視線を返した。

「……うん。いいよ。俺、さがさんに従う」

具体的に何をさせられるのか、言うまでもなく、コウキは知らないのだが、その時の彼は決してやけくそに約束したわけではなかった。彼は相楽に何を命令されても従う気でいた。

それほどに、相楽の表情には有無を言わせない気迫さがあったのだ。

「よし。明日、出るぞ」

「出る、って……それは……」

ここでの“出る”の意味は一つしかない。


相楽は目を瞑り、

「……裏切者に制裁を」

相楽は一呼吸置き、




「僕達は任務を遂行する」

そして、相楽は腰から銃を引き抜いた。

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