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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
あなたと共に歩む
362/400

不撓不屈

一日は紅茶から始まる。


やかんに水道水を入れ、火に掛ける。

換気扇を付けると、停止していた埃っぽい空気が、早朝に相応しい澄み切った空気に変わり出した気がした。

沸くまでの時間は日中の時間よりも貴重に感じる。

カーテンを開け、窓を開け、汚れの少ない外気を今のうちにと取り込む。

いくらか明るくなったリビングを振り返れば、汚い。

相撲の録画を安酒片手に夜な夜な見ていた同居人の仕業だ。

空いた缶ビールに菓子の空き袋。テーブルに散らばった菓子のカス。極めつけは食べ掛けのたこ焼きが入った笹舟型容器に顔を突っ込む『柏餅』と言う名のフェレットだ。近所で評判のたこ焼き屋のロゴが入った笹舟からたこ焼きを口に銜えた格好で俺につぶらな瞳を向ける。

消えたたこ焼きの犯人はお前だな。俺は聞かれれば素直に白状するからな。だから、同情を誘う様な目はせずに諦めろ。

――なんて同居人に振り回される身として柏餅に顔で訴えたが、柏餅は素早い動作でたこ焼きを堂々と盗んで行った。まぁ、そうなるだろう。相手はただのフェレットだ。人の表情を読むなど出来ない。

「それよりも片付けないと」

はぁ……。

俺はビールのつまみとして菓子を買った時に貰ったのであろうスーパーの袋を床に見付け、広げると、テーブルのゴミを取り敢えず突っ込んだ。残るたこ焼きもだ。気に食わないとしても、同居人がフェレットと間接キスなど想像したくない。

テーブル上のリモコンをテレビ台の所定の位置に戻し、科学雑誌は栞替わりのレシートを挟んで本棚へ。

後は台拭きでテーブルを拭くだけ。


違う違う。


後はテーブルを拭いて紅茶の葉をポットに用意するだけ、だ。



「ふぁあああ………………今朝は何曜日やけぇ」

「木曜日」

「…………………………今朝は何時やけぇ」

「5時32分。先に言っておく、晴天だ」

「…………………………今朝は…………晴れか……」

「朝飯に何かいるか?」

「角砂糖…………角砂糖2個」

「分かった」

昨日の夕飯はソースたっぷりのお好み焼き。夜食はたこ焼きに塩味の菓子。今朝は砂糖の塊。

想像するだけで早死にしそうなラインナップだ。と言っても、常人とはあらゆる面で異なる同居人は、この不健康な食生活を十数年以上繰り返しているが、糖尿病にも高血圧にもメタボにもならずピンピンとしている。

俺はソファーの上で丸まって眠っていた同居人がゆっくり身体を伸ばすのを尻目に小皿に角砂糖を2つ乗せた。よく強請る朝飯の1つの為、600mlサイズの瓶の中の角砂糖を切らしたことは無い。

「ふああああ……欠伸するのも退屈で……ふわぁああ……疲れるのぉ………………」

片手で口元を押さえ、もう片手はテーブルの上をさ迷う。

やはり、たこ焼きの残りかテレビのリモコンを探しているようだが、俺はすかさず角砂糖の乗った皿を彼に寄せた。

指先が砂糖に触れると、摘み、そのままぱくりと口へ。

飴を舐めると言うより、漬物でも食べている感覚で彼は咀嚼するのだ。

…………見るだけでも甘ったるくて気持ち悪くなる。

「甘い甘い」

それは甘いだろう。なんせ、甘味の塊を舌に乗せているのだから。

「喉乾いたけぇ」

「直ぐにお湯が沸くから」

もうちょっと待て。

「何かジュース……サイダーなかったかえ?」

「昨日の夕飯の時に飲み干したろ。あ、沸いた。ちょっと待て」

昨夜の塩分の代わりと言わんばかりの糖分への執着。既に未知の病に掛かっているのかも。

俺は火を止め、やかんのお湯をポットへ。茶葉が舞う。

美味い紅茶には80度ぐらいのお湯が最適とか、2分蒸すとか、色々聞いたことがある。しかし、毎朝紅茶を飲もうが、そこら辺にこだわりがある訳では無い。

適当に茶葉を入れ、さっさとお湯を注ぎ、早く色が付けとティーポットを揺らす。用意したティーカップに満たせば終わりだ。

新聞を読みながら適度に冷めるのを待つだけ。

「ほら。茶だ」

「気ぃ効くのぉ。ふむ」

同居人はソファーで居眠りする際に使っていたブランケットを羽織ったまま俺の寄越したカップを受け取る。

はふはふと息を吹き掛け、渋い顔をしながら熱々の紅茶を啜った。

「…………二日酔いに効く……あー疲れたぁぁ……今日も疲れたけぇ……」

その台詞、仕草だけではダメ親父でしかないが、同居人は傍目には少年だ。半袖短パンの黒髪をぼさぼさにした少年。

名を雪癒(せつゆ)という。

同居の年数から逆算すると、俺はこのがきんちょが保育園児ぐらいの頃に会っていることになるが、俺が初めて出会った頃と今とで見た目はほぼ変わらない。否。成長した所など見付からないから、全く変わっていないの方が正しいかもしれない。

「寝る前に片付けろよな」

「寝落ちしたのやから無理や。朝起きてから片付けようと思ってもお前さんがしてまうし」

「……せめて片付けながら飲み食いしろ」

「そんなつまらない晩酌ができるのは神影(みかげ)だけよの」

あー言えば、こー言う。

それが雪癒であり、文句しか出てこないお坊ちゃまに言い返せないのが神影と言う名の俺だ。

毎日、朝の数時間は似た様な会話をし、頭が働き始めた頃に会話を終了させる。あとは互いに好き勝手だ。

そんな生活を同居を開始してからずっと変わりなく過ごしている。

「ところで、あやつはどうしたかや?朝一番に性懲りも無く我を叩き起す迷惑な同居人は」

「……確かに」

いつも俺が起きるよりも早く暗いリビングで不気味ににこにこと笑顔を振り撒くあいつが今朝はまだだ。

「おはよーございます」

と思いきや、話題の『あいつ』とはまた別の同居人が大欠伸をしながら長いカーディガンの袖に手の甲を隠し、ダボダボのズボンを引き摺って現れる。

さっさと自分に合ったのを買えと言っているのに、勿体無いからと俺のお下がりを着続ける彼は雪癒同様、どこかズレている。

彼は夜明け色の瞳を長い睫毛のしたから覗かせてティーポットにお湯を足す。そして、適当に色が出た所で好きな人がくれた藍色のマグカップに紅茶を注いで雪癒の隣に座る。

「今朝は変な夢を見ました」

「ふーん。夢を」

雪癒はソファーに体を沈め、二つ目の角砂糖を口に入れた。

そして、彼は「不思議よのぉ」と言うが、夢を見ること自体はなんら不思議なことではない。

乱雑に積み上がった記憶を整理しようとしてヒトは夢を見る。『見ていない』時でも見ている。ただ起きた時に覚えていれば、ヒトは「見た」といい、忘れていれば「見ていない」と言う。

しかし、それもヒトならばの話だ。

「シアン、話してみぃ」

シアンが夢を見る時、それは特別な意味合いを持つ。

「白いレースカーテンが引かれた窓が目の前にあったんです。光が透けていて、きっと美しいからと……外の景色を見たくなって、僕はカーテンを開けました。そしたら……壁でした。白塗りの壁。振り返ると、ドアのない個室にいることに気付くんです。光の透けるカーテンが四方にあり、僕は期待しちゃ駄目だって思いながらも期待してカーテンを開けました。でも、やっぱり壁なんです」

閉所恐怖症には悪夢だ。それはシアンにとっても。

「焦って怖くて………………」

心做しか、シアンの顔色が悪い。暗闇と狭い所に恐怖を感じる彼にとって、想像するだけでもストレス要因になる。それでも雪癒に促された以上、彼はどうにか夢を思い出す。

「……壁を見たくなくて天井を見上げた時でした。屋根に丸く空いた穴。ぽっかりと空いた穴の向こうに青空と白い雲が。とても長閑なのは見ただけで分かりました。でも……届かない」

嫌な夢だ。

シアンが不意に片手で目元を隠した。

その意味――恐怖に泣いているのではない。眩しいのだ。

シアンの目は光に弱い。しかし、今いる部屋が極端に眩しい訳では無いから、シアンは思い出した夢の中で眩しいと感じている。

「シアン、無理をするな」

「…………大丈夫です……」

シアンは目を押さえたままそう言うが、大丈夫ではないのは誰でも分かる。それでも夢を思い出そうとするのは、シアンが特殊な体質であり、彼の見る夢は一種の予知夢であるから。そして、話すことを雪癒が求めたから。この瞬間も、彼は止めようとした俺を上目遣いに睨んだ。俺も居候に近いから雪癒にはあまり逆らえないのだが。

「皆さん!起きましたよ!」

ふと、底抜けに明るい声音が部屋に響く。

笑顔絶えない最後の同居人のお出ましだ。

ところで、「起きた」とは同居人が起きたという意味ではない。そこまで自己主張の激しい奴ではない。

この場合、起きたのは同居人がせっせと世話をしていた青年のことだろう。半年は眠っていた青年が……。

「起きたのか!?」

俺は驚き、その勢いでカップから跳ねた紅茶が顎に触れる。慌てて姿勢を正した。

「彼、起きたんですか!?」

シアンがソファーから立ち上がる。不満そうな顔の雪癒には気付かないまま。そして、「様子見てきます!」と青年の部屋へと走って行った。

眞羽根(まはね)、それで?あやつはどんな様子やけぇ?」

「眠りが長かったからですね、まだぼーっとしてます」

「そうか……さて、これからどないしよか。眠っていた方がええとか言わんと良いけどな」

「……………………いいえ。彼は起きた。自分の意思で起きた。それこそが彼の答えです」

笑顔の絶えない同居人――眞羽根はお見通しと言いたげにシアンを追ってリビングを出て行った。俺も半年ぶりに起きた人間には興味があり、眞羽根の後について行こうとしたが、それを雪癒に止められる。具体的には「神影」と名を呼ばれただけなのだが。俺の足は反射的に雪癒に向いた。

「シアンが悪夢を見る時は決まってあいつが現れる。あの坊主も眠り姫をやめたようやしな。眞羽根は何考えてるか分からんけど、万が一の時に(れん)のとこに坊主とシアンを連れてくのは神影の仕事やからな。よろしゅう」

「分かっている」

雪癒に仕事と言われ、面倒くさいが半分、頼られた事への嬉しさが半分を占めた。それでも、万が一の行き先が、俺へのからかいのやまない蓮と言うのは若干、腹が立った。

雪癒は蓮がかなり好きだ。この『地下の城』に住み着く俺達以外に、雪癒に友人らしい友人、まともに会話する相手は蓮ぐらい。あとはたこ焼き屋とお好み焼き屋か。

いや、俺も似た様なものか…………そう考えると、俺も蓮が好き――なわけはない。ただ、蓮は何事に対しても理解が早い。だから話していて楽なだけだ。

「あでっ!」

「?」

今、遠くの方でシアンの声が聞こえた。「落ち着いてください」と眞羽根の宥める声が続く。

「あわわ……僕達は敵じゃないですよお。あなたを守って――うわっ!」

わーきゃーと女子の悲鳴が聞こえ、無表情の雪癒がどうにかしろと言わんばかりにしっしと手を振る。

まぁ、こういう繊細な問題はシアンや眞羽根よりも俺や雪癒など大雑把な性格の方が解決に向いている。『僕っ子』二人は相手に気を回しすぎてどうにもならなくなるのだ。

やれやれ。

俺は朝の紅茶を一口含んでから彼等の下へ向かった。




さて、この研究施設……否、家には最初、一人のカミサマが住んでいた。暫くして、散らかし放題だったそこに小生意気な餓鬼――神影がやって来た。俺だ。

それから長らく二人で共同生活を行っていたが、ある冬の日、べそをかいた童顔が無一文で家に転がり込んできた。彼は『シアン』と名乗った。彼の真っ直ぐな瞳の色と同じ名だった。彼の話を要約すると、自分の好きな人が、悪の組織に入った師匠だかカレシだかを追って日本に来たから手伝いたい、もしくは無茶しないよう止めたい、だ。崇拝している男を追う女を追うシアンは律儀なのか、ドMなのか。雪癒は「あほう」と言っていた。

それから季節は巡って数回。そろそろ本格的な冬支度を思っていた頃に最後の二人がやって来た。黒色の長いコートを翻し、現れた青年は「眞羽根」と名乗り、「こんなところにも仲間が」と不機嫌面の雪癒に微笑み掛けた。雪癒は珍しく苦笑いをし、蓮の頼みだから断れないとぼやきながら、「ほんまにお前のそれ似合わんわ」とコートの裾を指さしていた。そんな彼の背中には男が。それはもう傷だらけで、よく人目を忍んでここまで来れたなと感心するほどだった。もしくは通行人は良からぬ何かに巻き込まれたくなくて傍観者でいることにしたか。兎に角、雪癒に頼んできた蓮は何故、この男を治療しなかったのか、案外甘ちゃんな奴が見捨てるとも思えない為、治療出来ない立場にいるのか。俺はそんな感想を持った。その理由は暫くして判明したのだが。雪癒はあっさり教えてくれた。「あいつは追われとる。うちで匿ってほしいと」だそうだ。呪いだらけの人嫌いに特化した蓮宅で匿えないとなると、追っているのは力のある厄介な相手。蓮が困っている……ならば、こいつは助けてやろう。

勿論、勇気ある哀れな男の為と、蓮への当て付けで。

俺は懇切丁寧に男の世話をした。中々の面が台無しにならないように。それから数週間、大きな傷はまだまだだが、小さな傷は痕もなく完治した頃。もう起きても良いはずなのに、目を覚ます気配はなく、一度、電気ショックをとか考えたが、雪癒と泣き顔のシアンに止められた。治りかけの傷口が開いたらどうすんだと至極当たり前の意見を言われてしまった。そうこうしている間に半年。最大限の努力をしたが、左肩から背中へと伸びる線上の火傷の痕は微かに残り、完全に治すなら皮膚の移植だろうと結論付けた。さて、患者の同意なしに移植していいのか悩んでいたところに今日、彼が目を覚ました。


「あああ、落ち着いて、落ち着いて!待って!止まって!助けて!」

お前が落ち着け。とは言ってられない。

患者に用意した部屋は物置部屋を少しでも快適にしようと適当な家具を置いたものだが、年代物のアンティークランプが俺の鼻先を掠めて倒れた。ガシャンと破裂音がし、影が揺らめく。椅子は倒れ、テーブルは脚を上にして引っ繰り返っている。枕は本を床に散らばせた本棚の上だ。

窓の無い地下の元物置を舞うは羽毛布団の羽根。滅多に会えない美しい情景だが、物置に眠っていたお高い布団が犠牲になったと考えると、なんとも言えない。そして、布団の上で踊る――暴れる彼はパジャマ姿の患者だ。

シアンは部屋の隅で「落ち着いてくださいよぉ」と声を震わせ、眞羽根は水差しとグラス片手に出入口付近を固めていた。

「神影さん、どうしましょう……僕達の声は全く聞こえていないようでして」

眞羽根にしては珍しい苦笑いをして俺を振り返ってくる。取り敢えず、患者が逃げないよう見張っているようだ。

「こいつは何に悲しんでるんだか……」

「彼は悲しんでいるんですか?てっきり、怒っているのだと」

「……………………知るか。怪我される前に一度眠って貰う。シアン、立て。全員出るぞ」

膝に力が入らないのか床にへたり込んだままのシアンをドアの外へと気合いで引き摺り、眞羽根も俺達に付いて出てくる。


あとはドア横の何故か外側に設置された小さな黒いパネルに親指を押し付けるだけだ。


侵入者撃退用に俺の指紋及び声紋で働く仕掛けが久々に役立ったようだった。




間違えた。

薬の量を間違えるなど、医者にあるまじき失態。

まぁ、俺は科学者だから心は痛まないのだが。そもそも患者向けのトラップではなく侵入者用のトラップだから思い遣りなどない。

だから、睡眠薬と共に物置部屋に充満した精神安定剤代わりのガスによって、患者がハイになったヤバい人の目をしようと俺に罪はない。ガスの効果で彼が少々失禁してしまったのは許すが。

俺はシアンのベッドで体を起こす彼に水差しを近付けた。

「おはよう。落ち着いたか?水を少し摂ってはどうだろう」

「………………………………」

天井に天使の姿でも見ているのか、患者は宙を見てにやにやしている。

シアンは心配そうな顔で彼の背中をさすっているが、眞羽根は冷めた目で俺を横から見ている気配がした。こいつは時々、雪癒みたいな目をするのだ。

「大丈夫ですか?どこか痛いところはないですか?」

「………………………………」

「ここは安全ですからね。安心してください」

「………………………………」

シアンの声も勿論、届いてはいない。シアンが俺に対して「どうしましょう?」と答えを求める表情を向けてきた。それに対する俺の答えは「暫く頭がパーみたいだから、まともな判断ができるようになるまで待つしかないな」だ。口にはしないが。

「神影、薬でどうにかできんのけ?」

「弱っている体にこれ以上はまずい」

俺の責任…………では断じてないが、雪癒の要求には応じられない。

雪癒は夏らしい半袖短パン姿でベッドに乗り上がると、患者の頭を一回撫でた。

「しょうがないのぉ………………お前さん、自分の名前は覚えとるか?その状態じゃ覚えてても覚えてなさそうやけど」

「なまえ…………はは……………………しゅう……」

「……………………まだ無理そうやなぁ……」

自分が何者かも怪しくなっている。

休ませて待てば思考力が戻らなくもないが、若干、効きが強かったため、この感覚を求めて依存性になりそうな可能性が無きにしも非ずな現状だ。

この手の医薬品はヤクと紙一重。侵入者を眠らせ、心を落ち着かせた後で自白させる意味合いを込めての仕掛けだったが、量を間違えていたらしい。地下の物置に関しては仕掛けを設置してからまだ一度も使っていなかったから、試せていなかったのだ。

良かったのか良くなかったのか。

「僕、今日は彼に付いてますね」

「ああ。頼んだで、シアン…………ああ、そうや……お前さんの季節が来とるなぁ」

雪癒が指さした先は窓。カーテンの開かれた窓から見える景色は勿論、ビルや家々。そして、隙間を埋める青々とした木々。早起きな蝉の鳴き声が遠くで聞こえていた。

患者も雪癒に促されるまま外を見る。


「夏。それがお前さんの名前や、琴原夏(ことはらなつ)


患者、琴原夏は来て最初の頃より少し伸びた黒髪を揺らしてこくりと相槌を打った。

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