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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
あなたと共に歩む
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新たな出発(3)

「はるー、招待状書くの疲れたー」

洸祈(こうき)は自分の名前と宛名と『よろしくお願いします』だけだろ?殆ど俺が書いてる。二之宮(にのみや)が悲しむぞ」

「文章は一緒に考えたじゃん。それに時々オリジナルコメント入れてんだよ?とにかく、疲れたの。おやつタイムにしようよ」

「お前なぁ……。じゃあ、これだけ。これだけ書いて?そしたら、おやつタイムにしよう」

「最後だからね。……宛名は?」


市橋幸哉(いちはしゆきや)と市橋春海(はるみ)


宛名は俺の両親だよ。



――と、陽季(はるき)は温かい眼差しを俺に向けながらそう言った。





「月曜会ったら結婚式当日まで会えないの!?何それ!」

不細工な顔も可愛い洸祈が俺を振り返ってやだやだと首を振った。

俺も会えないのはやだやだだけど、だからこそ今こうやって愛情を深めているのだ。

「23から26までクリスマス公演なの。27は片付けあるけど、なるべく早く済ませてその日中に会えるよう頑張るから」

毎年のクリスマス公演はかなり派手にやる。その分片付け量も増える。

去年までと同じなら片付けをし、そのまま忘年会だが、今年は忘年会には出ない。蘭さんにはもう言っている。

「約束だから。27日絶対に会いに来てよ」

「絶対に会いに行く。朝は俺のキスで起こしてあげるからね。最高の結婚式にしよう」

「んー」

猫のように喉を鳴らし、洸祈は俺の顎に頭を擦り付けると、壁を背にしてベッドに座る俺の胸元を枕にして座り直した。

「あ、人参は俺の」

洸祈は俺が持っていた野菜チップスの袋から人参を見付けて口にする。さっきから彼は人参を見付ける度に食べていた。お陰様で俺は人参を食べられていない。

「人参好きだね。俺にも一つぐらい頂戴?」

「しょうがないなぁ。一つだけあげる」

指先で摘ままれた人参チップス。

洸祈からのプレゼントだと言うのも相まって美味しそうだ。

「……はる……俺の指まで食べてる」

「塩味効いてて美味しいよ。洸祈の肩はどんな味かな?」

人参チップスも洸祈の指も美味しかった。

と、テレビに移りかけていた洸祈の視線が再び俺に向く。

俺はすかさず洸祈の肩口を舐めた。

「するの?」

洸祈が俺に訊ねる。

「したい?」

「温かい紅茶を一緒に飲んでからしたい」

「了解。お湯沸かすから洸祈はクッキー用意して」

洸祈は頷くと四つん這いでベッドの端へ。

お尻が可愛い。今夜はこのお尻を…………いかん。

おっさん脳になってる。

「クッキーねー、6種類あるけど、何系がいい?可愛い系?渋い系?ロック系?プリン系?ふわふわ系?あんばださー系?」

「何でもいいよ」

ワケわかんないし。

「あ、あ、あんばださー……あんあんあんあんあんばださー……あんば、あんば、あんばっばー」

洸祈のワケわかんない鼻歌を聞きながら、俺は備え付けの湯沸し器に水道水を入れた。



ここは青森県某所のホテルだ。

今朝早くに東京を出、新幹線を使って昼にはここに着いた。

月華鈴のクリスマス公演が近いのに青森まで来て何をするのかと言うと、墓参りだ。

両親の。

俺も洸祈の両親のところへは行けなかったから、洸祈には一緒に来なくていいと言った。しかし、洸祈は行くと言って聞かなかった。

洸祈の言うとおり、別に用事もなく暇で、俺の両親に一緒に挨拶したかったのか、もしくはまた俺のことが心配になったのか……。

どちらだとしても、一緒に行くと言われ、俺は内心では嬉しかった。

そして、俺達は駅近くのファミリーレストランで昼御飯を食べ、お菓子や夜食を買い込み、チェックインしたホテルの部屋で二之宮発案の結婚式への招待状を書いていた。因みに、便箋の柄は猫。

最終的に洸祈が選んだ柄だ。

そして、墓参りは明日する予定になっている。

明日はホテルのバイキングで朝御飯を食べて、墓参りをして、お昼をどこかで食べ、新幹線で東京に帰るのだ。

「あづっ」

「焦らないで。紅茶は逃げないよ」

「温かい紅茶飲んでからクッキーを食べるがセオリーなんだ!紅茶飲めないといつまでもあんばださー食べれない!」

洸祈って本当に変な拘りが沢山ある。

いや、「変な」と言うよりは、正直、下らない拘りが……。

ところで、“あんばださー”とは洸祈の好きな携帯ストラップのガチャガチャ―あんばださーシリーズ―だが、某菓子メーカーの社長がこれのファンらしく、コラボ商品あんばださークッキーがこの度出来た。『色々なあんばださーがクッキーになって登場!』らしい。

クッキーはシール付き。そして、シールは全12+2(シークレット)種。

全部、洸祈談。

今回の旅で洸祈はこれを5箱買った。

買って直ぐにシールチェックを始めたが、本命のシークレットシールはゲット出来なかったようだった。しかし、もしもゲット出来たら、シークレットシールは携帯に貼る予定らしい。

「紅茶が冷めるのを待つ間、俺が撫でてあげるって言ったら?」

「待つから撫でて!」

ちょろいな。

丸テーブルを挟んで椅子に座っていた俺達だが、ぶーすか言う前に洸祈が俺の膝にどしっと座った。大の男だからそれなりの体重を感じるが、それよりも日向の匂いがして来て癒される。

「洸祈って何で撫でられるの好きなんだっけ?」

「んー……撫でてくれてる間は絶対に俺のこと考えてくれてるから?片手間だとしても、手のひらでは俺の頭の感触がしてるはず」

「そう言われれば。……つまり、構って欲しいの?」

「構って欲しい。撫でるだけでも良いから構って欲しいの」

そうなのか。

洸祈はいつでも他人の中にいたいのか。

寂しがり屋ってことかな。

人見知りなのに寂しがり屋。

通りで優しくされると、誰彼構わずホイホイ付いて行くわけだ。

本当に洸祈には一人で出歩いて欲しくない。

「あと、頭だと手のひらの温もりとか指とか凄く感じる」

つまり、洸祈は頭も性感帯なのか。勉強になった。

頭責めってジャンルができたな。

「はる、何か今変なこと考えた?」

「え?」

「頭で感じた」

頭責め、リスク高し。

「……………………紅茶冷めたんじゃない?」

話を逸らすと、洸祈は「紅茶クッキー!」と勢い良く顔を上げた。

そして、スリッパを脱ぎ捨てると、1メートル程の距離にあるベッドにジャンプする。それから、元々座っていた椅子との最短距離を見極め、ベッドから椅子へと跳び移った。

家具をアスレチックのように扱う姿はまるで子供だ。

そして、椅子に胡座をかいて座った洸祈は紅茶をとても美味しそうに飲んだ。

「皆のリーダー、あんばださーミントクッキーあげる!」

「ありがと……」

ほんのりミントの香りが。

「もしかして、あんばださーラベンダーはラベンダーの匂いとかするの?」

勿論、洸祈の携帯にはあんばださー達がくっついているが、洸祈はガチャガチャでダブったあんばださーを俺にくれるため、俺のスマホにもあんばださーラベンダーちゃんのストラップが付いている。

だから、あんばださーについてはかなり浅くだが、知識があるのだ。

「勿論。あんばださークッキーだから」

自分が作った訳ではないのに、洸祈は誇らしげだ。

ファンとはそう言うものなのだろう。

開いたクッキーの箱の横に携帯を置き、ストラップのあんばださー達を並べてにんまりする洸祈。

……これがファンか。

ま、洸祈ファンの俺はこれから洸祈のあんな姿やこんな姿を見てにんまりするだろうから、気持ち悪さはおあいこだ。

「俺、既にあんばださーガチャ6種中5種ゲットしてるけど、このクッキーコラボのお陰か、来年にもあんばださーシーズン2としてガチャ追加予定なんだって。早くあんばださーアロエをゲットしないと」

「マジか」

せめて追加は4種までにして欲しい。そうじゃないとコンプリート難易度が上がり、序でに俺のスマホのストラップが増える。

洸祈はじゃらじゃら付けて満足しているが、スマホはただでさえ携帯するには大きいのに、更にじゃらじゃら付けると邪魔でしかない。

付けないと言う選択肢もあるが、付けないと洸祈が拗ねる。と言うか、洸祈の中で俺はあんばださーファンになってしまっている為、あんばださーを蔑ろに扱うとキレられるのだ。

「あのさ、明日は陽季のお父さんとお母さんにご挨拶だから、早起きして格好もきっちりしないとだし、今日は触るだけでいい?」

その時、あんばださーの話がすっ飛び、あっちの話題が入ってきた。危うく軽く聞き流して「うん」と答えるところだった。

それが洸祈の狙いだろうけど。

しかし、触るだけとは……今夜を逃したら、結婚式前日の夜ぐらいしか……。

「いつものラフな格好でいいから」

パーカーにジーンズでいい。

「ラフな格好でいいから濃厚なことしたいわけ?」

「あ……いや…………えっと……」

第一、洸祈もしたいと言ったではないか……。

「陽季がそう言うなら普段着で挨拶に行く。ただし、明日は6時20分までには絶対に起こしてよ?バイキング1番乗りするんだから。それができるんなら――」

洸祈は椅子の上で膝を抱えてかりっとクッキーを歯で割ると、上目遣いで「濃厚なことしたい」と囁く。

そして、ちろりと出した舌先で唇に付いたクッキーのカスを舐め取る彼の仕種は何とも艶かしかった。







「洸祈、着いたよ」

「んん……着いた?」

「うん」

目的地に着き、レンタカーの後部座席のドアを開ければ、横になっていた洸祈が目元を擦っていた。バイキングでせしめた大量のマカロン入りのビニール袋を片手で握り締めている。

「…………腰痛い……抱っこぉ」

お子ちゃま洸祈が両手を伸ばして抱っこをねだってくるが、昨夜のことを考えると……がっついてしまった俺に責任がある。洸祈もかなりノリノリだったのはさておき。

「しょうがないなぁ。代わりにリュック背負ってくれる?」

「うん。抱っこ」

マカロンを1つ口に入れ、後部座席から俺の背中へ直接移る洸祈。歩く気は皆無か。

太陽の日射しを浴びた洸祈はふるふると頭を振ると、鼻を鳴らした。

「潮の匂いするー」

「海近いからね」

車のドアロックをし、駐車場から墓地へと歩いていく。

今はまだ見えないが、墓地へと続く上り坂の遊歩道の先に海があるのだ。

「海。海。海。うーみ」

「楽しそうだね」

「市橋(うみ)……さん!えへへ」

「そんな照れ臭そうに言われると、俺も照れ臭くなるから」

今回、招待状を書く上で俺の本名を書いた。

市橋海の名だ。

俺の本名を知るのは洸祈と……二之宮や紫水(しすい)さん。俺が自分から明かしたのは洸祈だけだ。

後者の二人やその他の人達は隠し事が許されない世界の人達に不可抗力で、だ。

別に隠していたわけでもないし、洸祈と結婚すると決めたからには、それを祝福してくれる人達に俺の本名を伝えるべきだと思ったのだ。

でも、俺の本名とか分かっても、皆には今更のように思われる気がするのだ。

「陽季」で定着しているし、正直なところ、俺自身も「陽季」で定着している。「陽季」は菊さんに貰った名前であり、月華鈴の仲間にはそう呼ばれてきた。

だからと言って、「市橋海」が俺から消えることはない。何故なら、俺にとって「海」は亡き父と母の形見同然だから。

「今は陽季のこと海って呼んでいい?陽季のお父さんとお母さんに会うんだからさ」

「いいよ」

いいのだが……突然相手の呼び方を変えるって難しくないのかな。

「はるー、あっちに蛇口あっ……た…………海、あっちに蛇口あった。水汲まないの?」

案の定、言って直ぐに言い間違える洸祈。

しかし、おっちょこちょいなところも洸祈らしい。

「先にお墓まで行って、背中のおっきな荷物を置いてから水汲みに行くから後でいいんだよ」

「はーい」

と、俺の背中の大きな荷物は元気良く返事をした。


結局、荷物を墓の前に置いたのに、荷物は俺がバケツに水を汲むのに付いてきた。そして、水入りバケツも持たずにただ単に俺の背中を付いて来る洸祈は腕を伸ばして深呼吸をする。

「いいところだね。空気が澄んでる」

「公共交通機関から遠いから通い辛いけど、俺も海と風が気に入ってここにしたんだ」

「……海が選んだの?」

「え?…………あ、うん」

「海」が慣れない。

「俺がスポンジ使うから、洸祈は少しずつ水掛けて?」

「バケツ重いー」

「女の子じゃないんだから。それとも交代する?冷たいよ?」

「水係やる」

洸祈はなるべく俺の手に水を掛けないようにきちんと水係をしてくれる。

俺も念入りに墓石を磨く。

「俺達、ホントにマッチしてるよね」

今から愛の告白するの?

「だらしない俺と気が利く掃除好きのはる……海!俺のこと、これからも世話して」

普通、貴方の金魚の糞になります宣言されたら並の男は逃げるけど、俺は世話好きの自称ドSのドMらしいから――

「ずっと世話します。洸祈もこれからもずっと俺の直ぐ隣にいてください」

「ずっとずっとずっとおじいちゃんになるまで一緒だから!」

空になったバケツを捨てて、俺の首に抱き付く洸祈。

頬に洸祈の唇の感触がする。

こんなにイチャイチャしてたら二之宮辺りにウザいって言われるかな。

「洸祈、花用の水取りに行ってくるから、そこの花の包装取っててくれる?」

「分かったー」

道中の花屋で適当に花を買ったのだが、洸祈がリュックから飛び出る花束を取り出し、包んでいる新聞を取ろうとする。そして、俺はもう一度水を汲みにバケツを持った。



「この花の名前なんだったっけ?」

「忘れるの早いね。この花はアネモネだよ」

花屋で「青くて綺麗」と言って洸祈が選んだ花だ。

青色のアネモネの花。

他にもいくつかの色があったが、洸祈は青色のみを選んだ。変な拘りだが、別にカラフルでないといけない理由がなかった俺は青色のアネモネの花のみを買った。

しかし、拘った割にはこの短時間で花の名前を忘れる始末。

「そうだった。アネモネだ。青は海の色だから青いの選んだんだ。海が来ましたよーって」

「へぇ。ありがとうね」

そんな理由があったのか。

洸祈は風に揺れるアネモネの花に触れて笑った。

「洸祈、お線香に火付けるからあっち向いてて」

「俺の魔法は使わないの?」

「魔法って魔力を使うんだろう?ライター持ってきたから気にしなくていいよ」

「なら、あっち向いてる」

確かに魔法は便利だけど、お線香まで魔法で付けたくはない。

洸祈にはそれっぽい理由を言ったが、何か嫌なのだ。

まぁ、「そもそもあなたもマッチではなくてライターを使っている」と言われたら何も言い返せないのだが。

「付けたよ」

と、振り返った洸祈が鼻を鳴らしてお線香の匂いを嗅ぐ。それからうっとりした表情をした。

「お線香の匂い好きなの?」

「実家の匂いだから」

「仏壇あったね。確か」

「うん。落ち着く」

「俺も落ち着く」

久し振り、父さん、母さん。

隣にいるのは洸祈だよ。

俺の恋人。

男の恋人だよ。

「はい、招待状」

洸祈がリュックから昨夜書いた招待状を取り出した。

「ありがとう。……ここに入れようかな」

名前の刻まれた墓石の乗る台の中の空洞――所謂、納骨室を開けると、小さな四角い陶器製の箱が2つ置いてある。

「お父さんとお母さんの遺灰?」

「うん。父さんも母さんも最終的に火事で死んだから、殆ど遺体が残ってなくて。灰とかほんの少ししかないんだ」

「そう……なんだ」

「あ……いや、あるだけマシなんだから。ね?」

悲しまないで。

「父さん、母さん、俺はここにいる洸祈と結婚することにしたよ。これは俺達の結婚式の招待状」

封筒には洸祈の字で「市橋幸哉様」と「市橋春海様」と書いてある。

封筒から便箋を出すと、洸祈と俺とで考えた文章が。文章を書いたのは俺だ。

そして、俺達の名前。

「あ、洸祈のコメントが」

「えー。読むの?海のお父さんとお母さんに書いたのに」

「『絶対に海さんを置いてきぼりにはしません。安心して天国からのんびり海さんを眺めててください。』って?洸祈らしいコメントだね」

「恥ずかしいから声に出すなよ!あと、感想も言うな!」

「ごめんごめん」

“置いてきぼりにはしません”はかなり嬉しかった。だって、これはつまり、「俺を置いて何処かには行かない。いつまでも一緒」と言う意味だから。

俺は便箋を封筒にしまい、マカロンを入れていたビニール袋を洸祈から貰って入れた。ちょっと失礼だが、しょうがない。それに、父さんも母さんも分かってくれる。

そして、ビニールの口を閉めて納骨室に入れた。

「今日はありがとう、洸祈」

「感謝なんていらない。当たり前だから」

「愛してる」と耳に囁かれ、洸祈の顔を見ようとしたら、彼は俺の両親の墓に手を合わせていた。

「市橋幸哉さん、春海さん。息子さんの恋人の崇弥(たかや)洸祈です。えっと……俺達、12月28日に結婚します。俺達が普通じゃないのは分かってるけど、男の恋人なんて許せないかもしれないけど、息子さんを世界一幸せに出来るのは俺だから、任せてください」

随分と自信満々で……。

と思ったら、唇を震わせ、視線は右往左往。

故障寸前のロボットだ。

「俺を世界一幸せに出来るのは洸祈だけだよ。そんで、洸祈を世界一幸せに出来るのも俺だけ」

頑張ったご褒美に一杯頭を撫でてやると、頭から湯気を出していた洸祈は犬のように俺に寄り添った。

しゃがみながらぴょんぴょんと跳ねる。

「はる、はる、はる!好き!俺、今、単細胞馬鹿みたいにひたすら陽季が大好きだ!」

顔を真っ赤にし、耳の先まで真っ赤。また陽季に戻っているし。

それに、洸祈のマフラーでぬくぬくの首元辺りから本当に湯気出ていないか?

「このまま世界宣言しそう!なんか俺、キメちゃってる!?」

「マカロンパワーかも」

これはマカロンをキメちゃってるな。

早いとこ退散した方がいいかもしれない。

俺は荷物をリュックの中にしまって背負う。

「父さん、母さん、愛してる。お正月過ぎた辺りにまた来るよ。今度は海の見える家の方にも」

次来る時は結婚式での写真を持って来よう。そして、俺の成長をもっと二人に見せるのだ。

「俺も行く!」

「うん」

そして、変なテンションの洸祈がそこら辺の茂みに顔を突っ込みださないよう、俺は洸祈と手を繋いで両親の墓に背を向けた。


その時、かさかさとアネモネの花が擦れ合う音がした気がした。

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