あなたの世界
ある日の夕暮れ。
「久し振り、二之宮」
「そうだね、堂本」
花屋『Iris』の店長――堂本ひろは車椅子に座る蓮を店先で出迎えた。
「二之宮が榊原さんとちびっ子以外と仕入れに来るなんて初じゃないか?あ、もしかして同業者?」
「董子ちゃんは休暇中。彼は労働課勤めの公務員」
「公務員……平日なのに休み?」
堂本は片開きにしている入り口のストッパーを外して両開きにしながらぼやく。
蓮は「事情があってね」とフォローするが、話題の公務員の由宇麻は車椅子のグリップを握りながら肩を強張らせた。
「ら、来週からは復帰するんで!」
社会の為、人の為の仕事に誇りを持つ由宇麻は自分にも言い聞かせるように言い訳をする。しかし、堂本は「ふーん」と軽く流し、開けた扉を押さえるように立つ。
「事情があるならいいんじゃない?無理したって時間は潰せてもどうせ結果は残せないだろうし。どーぞ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
堂本に蓮と由宇麻はお礼を言い、由宇麻が店内へと蓮の車椅子を押した。
ぷふ。ぷひ。
「子豚?」
「そうだよ。彼は御手洗団子って言って、堂本の立派な助手」
「御手洗団子君か。かわええなぁ」
店内の隅に置かれたアンティークチェアに腹を出して眠る子豚。
動物好きで可愛いもの好きの由宇麻は顔を綻ばせた。
「で、今日の注文は?」
紺のパーカーの長袖は肘までたくし上げ、黄土色のカーゴパンツを7分程まで折った格好の堂本は、暖房をきかせているとは言え、せいぜいマフラーを外すぐらいしかできない蓮や由宇麻と違って寒さを感じさせずにきびきびと動く。それどころか、彼は裸足にビーチサンダルだった。
「このリストのものなんだけど……」
蓮がコートのポケットから丁寧に折り畳まれた紙を取り出し、堂本が受け取って紙を開く。黒目が上から下へとリストに書かれた草花の名を追った。
「ムニの葉とかあるかい?」
「ムニはあるよ。3ヶ月前に入荷して乾燥保存したのがある。……そうだな…………ミランダリリーは地下を確認しないと」
「そっか。無ければ如月花を貰うよ」
「如月ならある。先に地下確認してくるから奥で座って待ってて」
「分かったよ」と蓮は頷くが、由宇麻は御手洗団子の上下する腹をひたすら興味深そうに見ていた。
「公務員さん、御手洗団子抱えてもいいよ。ちょっとやそっとじゃ起きないし」
「そうなん?あ……俺、司野由宇麻って言います」
「そうだったね。紹介がまだだった。彼はこの店の店長で――」
「僕は堂本ひろだ。よろしく、司野さん」
堂本が差し出した手を由宇麻も「よろしく」と握った。
「じゃ、奥で待ってて」
「お邪魔するね」
「ちょっと、店長!店番してるんじゃなかったんですかー!?」
「え…………」
店の奥。白のクロスが掛かった重厚な木製丸テーブルに背の低い椅子が3脚。椅子には金の装飾が為された葡萄色のクッションが乗せられていた。
広いとは言えない物置小屋サイズの部屋には朱色のカーペットに中窓と白のレースカーテン、後は彫りの入ったガラス戸、花に似せた天井のランプだけ。そのせいか、テーブルに置かれた山茶花の一輪挿しがこの部屋で異様な程の色彩を放っていた。
御手洗団子を抱き抱えて椅子に座った由宇麻は、車椅子に座った蓮から堂本についてのエピソードを聞いていたが、不意に開いた扉とそこに立つ女性に目をぱちくりとさせた。
紅茶に似た色合いの髪はセミロングで、茶色の瞳、上は黒のタートルネック、下は紺の細身のジーンズ姿。上は発育の良い胸が存在感を放っている。
そして、堂本と同じ黒の腰に巻くタイプのエプロンをしていた。
「お客様でしたか!すみません!あ、お茶!今すぐ出しますから!」
「お構い無く。僕達は注文した商品の確認をしてくれている店長を待ってるだけだから」
「いえ!ここは暖房もなくて寒いですし、直ぐに温かい珈琲を淹れますから!」
彼女は終始慌てた様子でぱたんとドアを閉めて行った。
「さっきの女の人は?」
「いや、彼女は僕も初対面だよ。堂本がアルバイトを取るとはね……」
「そんなに珍しいか?堂本さんと御手洗団子君だけだと大変やろ」
由宇麻は膝の御手洗団子の腹を撫でる。
肌寒いこの季節、由宇麻にとって御手洗団子は冷えた手を温める湯タンポだった。
「堂本の場合、店は趣味みたいなものだから。気が向かなかったら閉めるし、気が向いたら夜中まで開けてるしで、かなり適当なんだ。だから、アルバイトを雇うとは思わなかった」
「堂本さんも若いんやから彼女さんかも――」
ばんっ!
「私は間違ってもあんなぐーたら店長の彼女ではありません!!!!」
左手に盆を持ち、その上にシュガーポットやミルクポット、2つの珈琲カップを乗せながら、彼女は勢い良く戸を開けた。
由宇麻も蓮もその勢いと音にびくりと体を跳ねさせて振り返る。
「ご、ごめんなさい」
由宇麻は咄嗟に険悪そうな顔付きの彼女に謝るが、その体は蓮の影に意図的に隠れていた。
「いえ。私は店長の彼女ではないことだけ分かってもらえればいいんです。珈琲です。お砂糖とミルクはセルフで入れて貰えますか?」
なるべく音を発てないように静かに盆を置いた彼女は「どうぞ」と由宇麻と蓮に微笑み掛ける。由宇麻は完全にびびっているが、蓮は彼女に笑顔を返した。
「二之宮、ミランダならあったから、リストの分用意するまでもう少しそこで待っててくれ」
「店長!店番出来ない時は呼んでくださいって言ったじゃないですか!」
「メープル、いいだろ?たったの数分だし、注文された品探すのも店番の仕事だ。それに、来客ゼロだったんだし」
「メープル……シロップ」と由宇麻が眠る御手洗団子を盾にしつつ呟く。が、そんな彼を彼女は眉をひそめて見た。
「ごめっ……なさ……」
ことごとく無意識に地雷を踏んでいる由宇麻は椅子から立ち上がると本気で蓮の車椅子の影にすっぽり隠れる。
蓮は苦笑しつつも由宇麻の為により大きな壁になろうと体を動かした。
「店長、私の名前は楓です!特に人前でメープル呼ばわりは止めてください!」
「じゃあ、紅葉」
「店長!!」
「あー、面倒くさい女だなぁ。店番中の僕は客の注文の品を用意してくるから。待ってて、二之宮」
「うん。楓さんの淹れてくれた温かい珈琲飲んでゆっくり待ってるよ」
ひらひらと互いに手を振る堂本と蓮。楓は膨れっ面をすると「私は本当の店番しますから!」と堂本の後を追って行った。
「これで全部で間違いない?」
「うん。ありがとう、堂本。楓さんを怒らせちゃってごめんね」
「あいつはいっつもあーだから慣れてる」
堂本は蓮に確認を取ってから作業台に並べた薬草や花を紙袋に小分けに入れる。
「それで?どうして楓さんを雇ったんだい?」
楓は堂本が商品を用意している間、店番をしていたが、今はすっかり陽が沈み、蓮達が帰ったら店を閉めると言うことで、住居の方で夕飯を作っていた。
「別に言う程の理由なんてないよ」
「いやね、君が店を離れて暫く放浪の旅でもするのかと心配になっただけ」
草花を大量に買い込んだ蓮は増えていく紙袋を膝に積み上げ、見かねた由宇麻が腕に数個入れた。蓮も「今日は付き合ってくれてありがとう。夕飯奢るよ」と言いながら堂本から最後の紙袋を受け取る。そんな彼らの足元を、夕陽も沈み、お昼寝を終了していた御手洗団子がぐるぐると回っていた。
しかし、御手洗団子に蓮達が視線を向けていた時、本当に消え失せそうな声量で堂本が呟いた。
「メープルは僕が壊してしまったんだ……だから、傍に置いている」
「え?」
思わず蓮が堂本を見たが、彼はさらさらとした髪に表情を隠して紙袋やビニール袋をしまっていた。
そして、何事もなかったかのようにメモ用紙にボールペンで何かを書き込む。
「請求書は明日には送るよ」
「あ……うん」
相手が言いたくないのなら、深追いはしない。
蓮は頷くだけで何も聞かなかった。
「あ、待って。カペラが入ってるの貸して。時期間違えたの入れた気がする。見たら分かるから」
「そうかい?…………カペラは……由宇麻君が持ってるのの中にあるね」
「え?どんなのや?」
由宇麻が持つ紙袋は4つ。彼は作業台を借りて紙袋を開けた。
「ほら、カペラは分かりやすい。君の大好きな桜と同じ色をしている」
「あー…………これか?」
由宇麻は4つの袋の中身を見、暫く考えてから1つを選んだ。
彼は濃い紫色の花を指差す。
「桜色はこれしかないだろう?……やっぱり、こっちはまだ乾燥が甘かった。直ぐに換えるから」
「態々ありがとう」
「最高品質で出すのは店の義務だから気にしなくていい」
堂本は由宇麻が選んだ左端ではなく、右端の紙袋を持って店の奥へと入っていった。
由宇麻は「間違えてもうた」と笑い、紙袋のテープを貼り直す。
そんな彼をただじっと蓮が見ていた。
月明かりの下、公園の並木道を進む車椅子と人影。
「今日は仕入れに付き合ってくれてありがとうね」
「お礼なんかせぇへんでええよ」
レバーを倒し、車椅子を進ませる蓮の隣を由宇麻はゆっくりと歩いていた。
「足、少しでも違和感を感じたら連絡してね」
「ああ。俺も美味しい定食屋さん教えてくれてありがとうな。ハンバーグ定食、ほんまに美味かったわ」
「僕もね、あの定食屋さんは董子ちゃんに教えて貰ったんだ。董子ちゃんってこの町のことを本当に良く知ってるよ」
昼間は買い物帰りの主婦や学校帰りの学生達が訪れるこの公園も、皆が夕飯を食べ終えて家族団欒をしているであろうこの時間帯は風音しかなく、静かだ。
その中を男が二人。
「ねぇ、由宇麻君」
小さな機械音が消え、車椅子が止まった。
由宇麻が振り返る。
「どないしたん?あ、寒いんか?マフラー貸したるよ。俺は暑がりな方やから。それに、ハンバーグ食べたからかぽかぽかや」
「いや、いいんだ。寒いわけじゃない」
「ならどないしたん?」
「………………」
俯き加減で堂本の店で貰った紙袋を探る蓮。
由宇麻は白い息を吐いて空を見上げた。
何かがひらひらと宙を舞っている。
無数の何かがひらひら、ちらちらと。そして、並木道に散らばって落ちる。
枯れ葉が風で舞い落ちているのだろうか。それにしては小さな葉だ。
「見て、由宇麻君。この花はね、光に透かすと黄緑に光るんだ。蛍みたいだからホタルソウ」
「ほんまや!キラキラしとる!」
「分かりやすく説明するなら、この花は葉脈に自己生成した蓄光塗料を通しているんだ。夜に咲く花だからね、こうして光って存在を主張するわけ。次はこれ、青色の薔薇」
紙袋にホタルソウをしまい、蓮は別の紙袋から薔薇を取り出した。
コートの裾を使い、棘から指を守るように茎を持って電灯の下に翳す。
由宇麻はじっくりと薔薇を眺め、「へぇー」と感嘆の溜め息を吐いた。
「薔薇って本来、青色色素を持たないからね、青色の薔薇は不可能とされてきたんだ。でもまぁ、時代が進めば技術も進歩するわけで、遺伝子組換えで青色色素を持たせた薔薇が生まれたわけ。綺麗な青だろう?」
くるくると薔薇を回転させながら、まるで自分の功績のように得意気に語る蓮に由宇麻は「ほんまに綺麗な青色や」と相槌を打つ。
その瞬間、蓮は表情を無にして薔薇を由宇麻の鼻先にずいと差し出した。
「な、なんや?」
「君、この薔薇は赤色だよ。青い薔薇じゃない。真紅の薔薇だ。見れば誰だって分かる」
真っ赤な薔薇が由宇麻の鼻先で揺れる。
由宇麻は無言で一歩下がり、薔薇を見た。
「やっぱり君は色が分かっていない。光は認識出来ているようだし、君は色だけが分かっていないね?」
「………………」
由宇麻は何も言わず、ただ薔薇を見詰め、蓮は溜め息を吐いた。
「由宇麻君、君は今舞い落ちているこの花弁が何の花弁か分かっているかい?」
二人の間を横切る花弁は並木道を本当に少しずつ埋めて来ている。
蓮が傍の樹木を見上げると、由宇麻も見上げた。
「十月桜。君の愛する桜だ」
「さく……ら…………」
蓮が宙に向けた手のひらに1枚の花弁が乗る。
由宇麻はそれを壊れ物を扱うかのように手にし、指先で撫でた。
薄く、そして、滑らかな肌触りは由宇麻の記憶の中の桜と同じ。大切で特別な桜。
「十月桜は秋に咲く桜だ」
ぽたり。
桜の花弁が由宇麻の手のひらで濡れた。
通り雨……否、由宇麻の涙。
「どうして言ってくれなかったんだい?その異変は研究所以降に発生したものだろう?僕に任せてくれたら治せるかもしれないのに」
「……無理や」
「どうしてだい?僕の腕を舐めて貰っちゃ困る」
「蓮君でも無理や!!!!!!」
広い公園の隅々までに響き渡りそうな怒声。
寧ろ、唸り似たその声は悲痛の叫びのようだった。
蓮も押し黙る。
「俺の目をこうしたんは神様や!だから、誰にも治せんのや!」
「神様って……」
「研究所で撃たれた時、俺を生かしてくれる代償に俺の世界から色を支払ったんや!」
花弁の乗った手を握り締め、もう片手と一緒に止まない涙を流す目を隠すように瞼に押さえ付けた。
「代償は俺が選んだんや!俺は……家族の傍にいられるなら何を失ったっていいから!!」
「由宇麻君……」
「せやから、せやから……誰にも……せめて崇弥にだけは…………この事は言わんでや……っ」
膝から崩れ落ち、由宇麻の両手はすがるように蓮の膝頭に乗る。
「崇弥の重荷にはなりとうない…………お願いやから……」
由宇麻にとって生きることは家族の傍にいること。
生きる理由は家族の為。
たとえ、美しき桜の姿を見ることができなくなっても、家族の為、家族の傍にいる為なら構わない。
「由宇麻君、僕はこのことは誰にも言わない。絶対に。約束する」
蓮は耳に掛かる由宇麻の枯れ草色の髪に触れる。
由宇麻は涙で顔面を濡らしながら、ずびっと鼻を鳴らして蓮を見上げた。
灰色と黒色の瞳が由宇麻を見下ろしている。由宇麻には色がなくても蓮の本気が分かった。
「……秘密……秘密やから……絶対に……言わんって……」
「うん。約束だ。君の秘密は墓場まで持っていく」
「天国までや……ええ?」
「天国までね。大丈夫。持ってくよ」
泣いて高揚したからか赤くなった由宇麻の頬を蓮の指先が優しく解すように往復する。由宇麻も紙袋を抱え直してその手のひらの感触を目を閉じて味わっていた。
「俺、覚えとるから……見えなくとも……皆覚えとる」
「なら、僕が君の色になるよ。君に世界の色を教えてあげる」
「ほんまに?」
「空を見て」
由宇麻は蓮の手に導かれるように空を見上げた。
「空は深い藍色。深い海の色」
「蓮君の色」
「うん。見て。月が見えるかい?」
「まん丸で白いのや」
「月明かりが雲を照らしてるね。月の右下に4つ。あれは秋の四角形だ」
「明るさは分かっとるって。ちゃんと見えとる」
くすりと笑って蓮の話を聞く由宇麻。蓮も楽しそうに微笑んだ。
「じゃあ見て。月に花弁が掛かったよ。十月桜の花弁だ」
「ほんま?あんまり見えへん。月が明るいからやろか」
「この花弁は先の方が少しだけ濃いピンクになってる」
由宇麻の手を取り、握り締めた拳を開かせる。
そこには萎れた花弁。手のひらの熱と汗で皺になっている。
由宇麻もはっとして慌てて花弁を空気に触れさせた。
「ご、ごめんな」
「十月桜はまた4月に咲く。花は散ってもまた咲くから。謝らなくていいんだよ。それに、いつまでも花が咲いていたら葉が困ってしまう。一杯光を浴びて、花を咲かせる準備をしなきゃね」
「そっか。植物はやっぱり光合成せなあかんな」
花弁を摘まみ、蓮は舞い上がる風に花弁を乗せる。
直ぐに世界の一部となって桜は消えた。
「蓮君、君が俺の色になるなら、俺が蓮君の足になるから。足が必要な時はいつでも呼んでや」
由宇麻はもう泣いていなかった。上腕部分の袖で顔面を拭くと、清々しい顔をする。
「なら早速。明日、遊杏を迎えに遊杏の女友達の子の家に行かなきゃいけないんだけど、足になってくれる?明日も董子ちゃんお休みだから。車は僕の使ってくれていいから」
「喜んで」
「じゃあさ、今日は僕の家に泊まってよ。もう夜も遅いし」
「一人ぼっちやと寂しいんやろ」
意地悪くほくそ笑む由宇麻の脇腹に蓮は軽く拳を当てる。そして、どっちが先とも言えないタイミングで声を出して笑い出した。
普段、風音しか響かない公園に怒鳴り声と泣き声、それから笑い声が響く。後日、公園の近所で始まった主婦達の井戸端会議で、不良だか幽霊だか殺人事件だかのネタにされることになるが、今の二人はただただ愉快で笑っていた。
~エピローグ~
「帰りにコンビニ寄って家で二次会しようよ。遊杏達と同じようにパジャマパーティだ」
「パジャマパーティって女子会やないか」
「それそれ!女子会!楽しそうだよね。この時期になると良く特集組まれてるから、気になってて」
「闇鍋とかやろ?あと、恋バナ」
「やってみて楽しかったら、葵君と呉君呼んで第二回女子会しよっか」
「なんで葵君と呉君だけなん?」
「だって、女子丸出しの崇弥呼んだら絶対面倒くさくなるし、お供に陽季君でしょ?彼も煩いに決まってる。で、千里君は僕のこと苦手に思ってるから葵君とセットでしょ?セットだと、あれとかそれとかし出すでしょ?ほら、葵君と呉君しか呼べない。あ、人数集めに吉田総一郎君呼ぼうかな」
「吉田君か。崇弥の家出と陽季君女装事件以来やわ。会いたいなぁ」
「僕は良く連絡取ってるよ。来年からは仕事の関係上、東京だって。でも、今も崇弥とは休みに時々会ってるみたい」
「それ、俺も会いたかったわ」
「いや、それはやめた方がいいよ。だって、崇弥が呼びつけては陽季君とののろけ話を延々とするとか。良く付き合ってるよね、総一郎君。世話好き過ぎる。だから、彼を僕らの女子会に呼んだら、きっと崇弥の悪口で盛り上がるよ」
「悪い顔してるで、蓮君」
「ふふふ。そりゃあ、僕は悪い人だからね」