表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
谷の子供達
3/400

谷の子供達

千鶴(ちづる)さん、兄貴からの羊羮でお茶にしませんか?」

襖から顔だけを出した(はる)は、縁側で作業をする千鶴に声をかける。

「えぇ。その前に、こんな感じでいい?」

「はい。弟達よりずっと綺麗です」

千鶴が組みかけの藁を春に見せると、彼は柔らかな笑みを溢した。



「寒くありませんでした?」

「今日は天気も良いし、寧ろ、暖かかったわよ」

湯気の立つお茶を両手で抱えた春は「そうですか?」と、厚手の3枚重ねにちゃんちゃんこと布団を羽織り、炬燵で震えながら言った。

「相変わらず、春君は寒がりね」

「ここで生まれ育ったと言うのに、ですね」

そんな風に他愛ないことを話しながら二人はお茶を飲み、羊羮を頬張りながら、もうすぐやってくる人達をのんびりと待つ。

「遅いなぁ」

春は壁掛けの時計を見上げた。

午後5時。

予定より3時間も遅い。

「どうしたんだろう」

場所を縁側から移し、読書中の春の傍で藁を組む千鶴も時計を見上げた。

すりガラスの戸からぼんやりと見える外は薄暗い。後数時間で雪が降り始めるだろう。

「雪…降っちゃうよ。二人とも荷物多いだろうし…大丈夫かな…」

「遅れる時は連絡してって言ったのに…」や「ご飯いるのかな…」や「お風呂用意してあげられないよ…」と、春は困ったりだ。

「私が駅まで行ってくるよ。二人に会えたら連絡するから」

「千鶴さんにそんな!僕が行ってきますよ」

「私、家事は金槌なのよ?私が行ってきた方がいいよ」

「そんな…」

事実だから致し方ない。

千鶴に家事能力は皆無だ。だが、体力には自信があり、4兄弟で1番軟弱な春との相性はいい。

「今日の晩ご飯何?」

「よく煮込んだ大根入りの熱々おでんです」

「んーっおいしそう!早く食べたいから早く二人を連れて来なきゃ。行ってくるね、春君」

春の短い溜め息。

ポケットからカイロを二つほど取り出すと、千鶴に持たせた。

「行ってらっしゃい」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ