表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
246/400

夜の騒ぎ

陽季(はるき)は俺の汗で湿った腹を舐め出した。


「ん…………はる……くすぐったい」

陽季の舌は俺の臍をなぞり、下へ下へ……――


洸祈(こうき)、エロいんだけど」

「うぅ…………陽季……ムリ……」

「これだけで……うわ……」

陽季は自分の口を手の甲で拭うと笑みを見せた。

汗だくで……まるで変態の笑顔だ。

「陽季……キモい」

「洸祈ヤバイよ。マジで……エロすぎだから」

「……煩い」

俺の衣服全部ひん剥いたのは陽季じゃないか。

「どうする?もう少し我慢してから食べるかな。もうお食事タイムにしようかな。どっちがいい?」

聞くなアホ。

「前者は短期戦だけど、がっつく自信ある。後者は長期戦だけど、ねちねち攻めることになる」

なんだそれ。どっちも嫌だよ。

「てか、暑い……先にクーラー……」

陽季の汗が俺の体に落ちてくるんだ。

「俺、クーラー入れにベッドから降りる余裕ないんだけど」

はぁはぁって、陽季の息が荒い。俺は陽季には何もしてないから、俺の体を舐めただけでこうなったらしい。

超変態野郎だな。

「俺に行けって?……なら、水風呂で寝てくる」

「厭だ。お前には行かせない。俺も行きたくない。ハートも熱いし、少しぐらい暑いの我慢してよ」

「熱中症で死ぬから……この格好じゃ……死んでも死にきれない」

俺の髪を弄くって、陽季は首筋に顔を埋める。くすぐったいっての。

それより、ハートって……。

「洸祈は可愛いから大丈夫」

意味不明だから。

陽季に首をキツく吸われる。痕付いた……絶対。

「でも、俺が死にそうだから、やっぱクーラーにしよっと」

俺を好き勝手にする陽季は、跨いでいた俺から嫌々そうに体を離した。

ジーンズ一丁でベッドの上に立つ陽季。オレンジのスタンドに淡く照らされた上半身がかっこいい。

色々、ムカつく奴だけど。

「熱中症対策に一応、塩水あるんだよね。洸祈も飲む?」

熱中症対策なんて、ちゃんと用意していたのか。

正直、陽季は玩具と拘束具しか用意してないと思っていた。

重要だから捕捉するが、玩具も拘束も俺の趣味ではない。

「ポカリ……がいい」

俺はちょっと意地悪することにした。理由は、陽季が素直にクーラーを付けなかったから。

「塩水に俺の甘いお仕置きでポカリにして欲しいって?」

「甘いお仕置きって?」

「とにかくエロいこと」

お前は特大のアホかよ。阿呆陽季。

陽季は黒の髪留めを口にくわえると、俺を見下ろしたまま自分の髪を無理矢理束ねた。

脇とか筋が何かそそるなぁ……。

「洸祈?目が虚ろだけど……大丈夫?」

俺は陽季が大丈夫か聞きたい。

エロ魔神にでも取り付かれたんじゃないのか?

「…………うう……ん」

「俺のこと分かってる?」

陽季の変態具合はあんまり分かりたくないさ。

「洸祈ー?……こ、う、き?」

何か返事するの疲れたな……。

顎が重く痺れて、口を開けることさえ辛くなってきた。

「あれ?ヤバい?…………クーラー付けるから!」

世界が回転。

陽季も回転。

「暑い……って言ってるじゃん……」

死にそう……って感じがする。

「えっと!クーラー、22度!と、水!!」

陽季がバタバタしている……と思う。。

てか、暑いぃぃ…………。




ほどほどにクーラーの効いた部屋で目が覚めると……やっぱり、陽季だった。

「洸祈、大丈夫?」

俺の体を舐め回すように見詰めながら、訊ねてくる。

色んな意味で陽季は俺のこと“ナメすぎ”だから。

「頭痛い……服がなくて大丈夫じゃない」

「いつもの頭痛薬あるよ。でも、服はないよ」

いや、服はあったから。着てた服があるはずだから。

「……ここどこだっけ?今何時?」

「ここはホテルのスイートルームで、今は夜中の2時」

陽季は時々、大枚叩いてホテルのスイートルームの予約を取る。そして、俺と丸一日、愛の深め合いとやらに費やす。

昨夜は夜の10時にはベッドインだから、戯れが30分ぐらい続いて……3時間ちょいは気絶か何かして意識が飛んでいたようだ。

「ポカリ買ってきた。飲んで」

500ミリリットルペットボトル。

俺の彼氏は優秀の極み。心も体もイケメンだ。

変態だけど、阿呆ではなかったかも。

「口移しでちょーだい」

俺なりに陽季にご褒美をあげてみる。

「いいよ」

爽やかに微笑んだ陽季は俺を抱き上げ、壁に凭れさせると液体を自分の口に含んだ。

そして、俺の顎に触れる。

口開けて、と目で訴えてる。多分。


俺は僅かに口を開け、陽季が唇を重ねてきた。

久し振りのキスだ。



「生ぬるい……」

何か……冷めた。

口移しとか、ポカリが不味くなっただけだ。キスとポカリは別々にすべきだったようだ。

「だろうね。自分で飲んで」

同感。

俺はペットボトルの口から冷えたスポーツ飲料を飲んだ。

美味しい。


しかし、逆に頭も冴えてきて暇になってきた。


どうせ起きてた陽季はもう直ぐで寝ちゃうだろうし。

「陽季、お風呂入りたい」

「えー……湯付けたら直ぐ逆上せるし、水付けたら風邪引くし、再戦に風呂はちょっと……」

“サイセン”って何だ。

俺はダルい体を寝る前の陽季に風呂場まで連れて行ってもらいたいだけだ。

陽季のせいで熱中症ぽくなったんだし、寝る前に一労働して欲しい。

「抱っこしてよ」

俺は両手を広げて粘ってみるが――

「ふうん…………前から攻めろって?」

……攻める?

と、陽季の指は俺の腹を下りた。で、触られた。

「っ!?」

「洸祈ぃ、実はお前が気絶してる間に飲んじゃったんだー……缶1本分だけどね」

俺は咄嗟に脚を閉じるが、陽季の手は挟まったまま……って、こいつ、酔っ払いかよ!

急に意気揚々となりだした陽季は、にやりと笑い、角の机の上で倒れている空のチューハイの缶を指差す。もう片手は俺の股だ。

「酔っ払い陽季!手ぇ出せ!」

本当に体がダルいのだ。

タチの悪いエロ親父モードの陽季とは関わりたくない。

「イヤー。指で少し触れただけで、ねだり顔だし。自分から脚開きなって」

「するか!」

ねだってないし、俺は陽季みたいな変態にはならない!ロリコンだ!!

「陽季!いい加減に手、出せ…………っ!!」

しかし、陽季が問答無用で口付けしてきた。突然のことに俺は脚の力を緩めてしまい――

「洸祈の弱いとこ……ゲットぉ……」

陽季がくたりとして俺の胸に凭れてきた。


…………陽季の顔が真っ赤だ。


ポカリくれた時は何ともなかったし、意識もしっかりしてたように見えた。

なのに、今見たら、ぐでんぐでんになっている。

おでんのちくわみたいな。

「洸祈、俺……何かカッカする。暑い……興奮してるのかな……」

そんなものじゃない。

これって――

「あ……酒にポカリだ」

「は?」

「酒ポカリ!」

「…………旨いの?」

旨くない。ただの毒だ。

「陽季、酒飲んでスポーツドリンクは危ないんだ!」

幸いまだ缶1本だからマシだが、どうりで突然赤くなるわけだ。

アルコールが急速に体内に吸収され、酔ったみたいだ。

「だから、寝ろ!」

寝て酔いを冷ませ!

せめて、エロ親父から変態陽季に戻れ!

「ヤダ……まだ洸祈を食べてない。ここ……弄ってあげてない」

擦るな。

陽季の指も腕も熱い。

なにより、暑い。

「あ……洸祈、可愛いよ」

「……っく」

ぺたりと俺にくっついた陽季は片手は俺の股に挟み、虚ろな目で俺の顔を観察している。


熱い。

暑い暑い暑い!

クーラーが効かないだろ!


「離れろ、熱源!」


俺は寝たまま渾身のタックルをした。

「いでっ!!」

陽季がベッドを転げ落ち、俺の視界から消え失せる。

あーあ、もう寝よっと。




「…………生きてる?」

「………………」

死んじゃったのかな?

「陽季?」

俺は反応のないベッドの下を見た。

シーツが素肌を滑り、少し心許ない。

「陽季、大丈夫?」

酔っ払いは20センチぐらいの水で簡単に死ねるらしいし、打ち所が悪くて……とかありそう。

実際に陽季は床にうつ伏せ状態で転がっていた。

「寝ちゃった?」

寝ているならまだしも、もし……。

「陽季!なぁ!」

俺はスリッパも履かずに床に降り、陽季の傍にしゃがんだ。

「陽季ぃ?」


すーすー。


「寝てる……」

陽季が頬をカーペットに付けて寝ている。おちょぼ口になりかけですやすやと……。

安心した。

「はる、風邪引くぞー」

髪はさらさら、頬はぽやぽや。

陽季は可愛いなぁ。

「はーるーき」

「ん……何さぁ……」

何でもないさ、変態。

俺は陽季の脇に腕を差し入れ、引っ張り起こした。ジーンズから出た裸足がカーペットを擦る。

背高のっぽめ。

「……あ……洸祈のお尻だ…………」

風邪引かないようにベッドに移動させようとしているのに、陽季は俺に凭れかかって俺の尻を掴んだ。

こういう時、俺は陽季を変態だと思う。

それ以外で陽季をなんとすればいい。

変態の阿呆で馬鹿だ。

「陽季、昨日は頑張ってただろ?ぐっすり眠れ」

クーラーが少々肌寒いけど、先ずは陽季をベッドに寝かせるのだ。

「ん~……(いつき)……違う……」

斎とは陽季の所属する舞団の後輩だ。まだ7才らしい。

再来週に同い年の斎君と真広(まひろ)ちゃんの初舞台があるから、斎君を指導している夢でも見ているのだろう。

昨日も新人指導と稽古で、夕食時に会えば、最近は肩が凝ると言っていた。

大変な時期なのに、俺との時間を作ってくれる陽季。俺の首に掛けた鎖に通した指輪を見ても、何も言わずにずっと待ってくれている陽季。


“結婚”のことは本気で考えてるから。


「う……寒い……」

どうしても服が見つからない。あんなに暑かったのに、今は寒い。

「ほら……入れ」

陽季が薄目を開けて俺が掛けた布団を持ち上げていた。

「はる……」

「風邪引くぞ。ここに入れ」

鋭い目付きに宿る温かさ。

俺は布団に潜った。陽季が俺を包み込み、何だかホッとする。

俺の爪先が出ないように丁寧に布団にくるみ、陽季は俺の髪に鼻を埋めた。

「……おやすみ」

低く響く陽季の声。

陽季が消したのか、スタンドの明かりがなくなり、部屋が暗くなる。

「陽季、おやすみ」

体の向きを変え、陽季と向き合うようにして俺は目を閉じた。






「陽季……キレそう」

「あ……ごめん……しわくちゃだね……」

朝の7時に目を覚ました時、俺の服は難なく見付かった。シーツの下に隠れていたのだ。

それも、ぐしゃぐしゃのしわくちゃで。

「これ着て帰らないといけないわけ?」

普段はこうならない。

俺の彼氏は几帳面に畳んでくれるからだ。

なのに――

「駄目人間!てか、ダメオ!!」

「酷い!俺がいなかったら、畳みさえしないだろ!?」

心外な。

「脱げ、馬鹿!」

「馬鹿じゃない!うわ!服取んな!!」

今日も陽季は昨日と同じジーンズに黒の半袖Tシャツと青系のチェックの半袖シャツ。

十分だ。

俺は陽季をベッドに押し倒してシャツを奪った。

「追い剥ぎかよ!!」

「大人しく服を寄越せ!」

「俺の服がなくなるじゃん!」

「陽季は俺の服を着ればいい」

パンツはしょうがないから穿いてるけど。

俺は陽季のジーンズのチャックを外した。Tシャツよりズボンを脱がす方が楽だと思ったからだ。

「あのしわくちゃを?」

「陽季がしわしわにした俺の服を、だ!」

俺は奪った陽季のズボンを穿いた。

裾が長いから折る。

「ええ~!」

「脱げ!そして着ろ!」

すっかり陽季の格好になった俺はパンツ一丁のみすぼらしい姿の陽季に俺の服を着せていた。

しわしわ感がヤバい。

「フロントの人が見たら、俺が洸祈に襲われたって思うだろうね」

「襲われて調教されちゃったワンコって思うね」

「それが願望?」

俺より背の高い陽季が俺の腰を引き寄せると、ベッドに座った陽季が俺を自分の膝に座らせた。俺の怒りもふと消える。

「俺のワンコになりたいの?」

「俺は狂犬だぞ?陽季に扱える?」

首にまた痕を付ける陽季。

そして、陽季は俺を見上げてきた。首を傾げる様は可愛い。

「お前は俺が大好きな仔犬だろ?」

「陽季も俺が大好きなご主人様だよ」

「大好きだ、洸祈」

そう微笑んだ陽季の告白は服がしわだらけでなければ、完璧だった。

あと、ジーンズがぱっつんぱっつんでなければだけど。

「はいはい。大好きだよ、陽季」


俺と陽季は口付けを交わした。


毎度のバカップルですwww

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ