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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
父さん
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沈黙(5)

ゆらゆらと僕は揺れていた。



「あお…ごめんなさい……誰か…僕を赦して」

誰か赦して。

千里(せんり)

「あお…」

あおの柔らかそうな青みがかった髪。

伸ばせば届きそうだ。

あ、触れた。

「僕の自業自得だよ…僕はなんて自分勝手なんだろう…あお、ごめんなさい」

謝るから赦して。


これあげるから赦して。


「いらないよ」


そんな…僕は赦してもらえないの?

「俺の怒りは治まらないね」

「ヤダ……あお……厭だよ!」

見棄てないで。


“要らない”なんて言わないで。






ぎゅっ。


アタタカイ。

「あ…お…」

「魘されてた。大丈夫か?」

あおの顔が真横にあって、僕は抱き締められてるんだと気づいた。

僕は…帰ってきてたんだ。

洸がお家まで僕を抱っこしてくれたんだ。

「大丈夫…じゃないよ。このままずっと…―」

「怖かったんだな」

あおは強く僕を抱きしめる。


あぁ…


君の温もりの中にいれば僕は君に見棄てられない。


“要らない”なんて言われない。


「あの、ごめんなさい。僕が悪かったよ。だから、ごめん」

夢を追憶しているようでちょっとだけ怖い。

だけど、謝るって約束したから。

「これ…分けてって」

飴玉。

真奈(まな)さんがくれた飴玉。

僕はこれをあおにあげないと本当には赦してもらえないんだ。

要らないなんて言わないよね?

あお、貰って。

お願いだから。




「要らない」




イラナイ?

あ…

何て返せばいいんだっけ?

これも夢?

でも、あおの温もりは本物だ。

「…い…?」

聞き間違いだよね?


…―要らない―…


嘘?

意地悪してる?

嘘?

嫌いなの?

ヤダ…何でこうなるの?

「待っ…て…」

「千里?」

待ってよ。あと少しでいいからチャンスを頂戴よ。


「もう…お菓子なんていらないから…図々しくなんて…しないから…」

「へ?」

「僕は…あおに“要らない”なんて言われたくない…よ…」

棄てないで。

塵だけど棄てないでよ。

「ここがなくなったら…僕は…どうして生きてなくちゃいけないんだよ…」


死ぬしかなくなる。


必要とされなくなったら要らないと言われたら棄てられるしかない。


「棄てないで…謝るから…あおの望むことなんでもするから…棄てないで…あおが望むならこの体売ってでもあおが望むだけのお菓子買ってくるから…だから…棄てないで…」




僕を棄てないで。




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