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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
父さん
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沈黙(4.5)

静かになる部屋。

(しん)はむくっと起き上がると真奈(まな)の服の袖を引いた。

「肩揉んでもらえないか?」

「いいけど…そうごろごろしていて肩が凝るのかしら?」

真奈の反語を隠した喋り方。

「最近、妙に疲かれる。なんかダルいんだ」

気にするでもなく慎は肩を軽く回した。

「熱は?そうやってお腹冷しているんだから」

真奈は甚平をなおしてやる。

「違う…と思う」

「そう。まぁ、肩は揉んであげるわ」

猫背になった肩を慣れた手付きで揉んでやると真奈は慎に押し倒されていた。

「慎?」

「真奈…」

畳に広がった髪を愛しそうに撫でた慎は唇を結んだ真奈を見つめる。

「疲れたのでしょう?お眠りなさい、慎」

真奈は然り気無く慎を退かそうとしたが、慎は真奈の腕を畳に縫い付けて離そうとしなかった。

慎、おやめなさい。と真奈は何処か意識の薄い慎に静かに言う。

「本当にどうしたの?」

「真奈…お前は…俺を助けてくれるか?」

悲痛の叫び。

慎は目で真奈に必死に訴える。

「私も晴滋(せいじ)も貴方の味方よ?どんなときも貴方に尽くすわ」

貴方に出会ったその日から…

私達は貴方の友。

「俺は…洸祈(こうき)を…」

口ごもる慎。

「慎、洸祈君は貴方と(りん)の大切な子よ?」

そうでしょう?と真奈は優しく語り慎にかけた。しかし、慎の思いは違うようで何の反応も示さない。

「聞いてくれ…」

「何?」

「俺は…洸祈を…買ったんだ」

人を…

息子を…

買ったんだ。

重大な罪の告白。

真奈はこつっと慎の額に自らの額をぶつけた。

「慎、“100億”…知らないと思ったの?」

息子の値段。

「失望してるだろ?」

「どうして?確かに貴方は洸祈君を買った。でも、それは最善の方法だった。政府に囚われた洸祈君の身を保証して取り戻すにはお金で買うしかなかった。慎、貴方は間違っていないわ」

「辛いんだ…俺は…息子を買ったんだって…痛いんだ…」

慎は真奈を離すと壁に寄っ掛かって胸を強く押さえた。

ここが酷く痛い。

「林はありがとうと言うわ。寧ろ、貴方が洸祈君を諦めていたら空から貴方を殴りに来ると思う」

真奈は慎の柔らかな黒髪を指に絡めて優しく優しく撫でる。

慎はその手を取ると、胸に抱いた。真奈は身動ぎせず慎が言葉を発するのを待つ。

と…

「真奈…もし…俺がいなくなったら三人を頼んだ」

「慎!縁起でもないこと言わないで!!」


真奈の言葉に慎は「ごめん」とただ曖昧に答えたのだった。








人を買いました。

人を飼いました。


誰が私を赦すと言うのですか?

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