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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
感じる意味。謝る理由。 【R15】
175/400

指切り(1.5)

董子(とうこ)ちゃん!!!!」

(れん)は董子の頭を守るように胸に抱くと爆風に堪える。冷たい空気が二人の頬を強く撫でた。千歳(ちとせ)がそんな二人を全身で覆う。

「二人とも大丈夫か?」

乱れた髪を軽く整えた千歳は蓮の額に掛かった前髪を上げた。彼は耳が痛いと呟き、金と紺の瞳で千歳を見上げる。

「なんとか……董子ちゃんは?」

「だいひょうふです」

蓮の弛められた腕から顔を出した董子は辺りを見回した。

「何が……!?これは……火?」

炎だ。

「火事ですか!?」

「燃えてはいないよ」

「?」

蓮の言葉に首を傾げる董子。良く見てと炎の奥を蓮は指差す。

一時的に買い取ったこのフロアのものは何も燃えてはいなかった。火はただその場にある。床や椅子を舐めるだけだ。

「本当だ…燃えてない。でも…これは一体」

董子は炎に手を伸ばす。

「触るんじゃない!!」

触れるまさにその瞬間、蓮が怒鳴った。びくりと董子は手を引っ込める。

「燃えていないのは無生物。生物は分からない。なんせ、魔法の炎だからね」

「蓮、どうする?」

千歳はレイヴンに結界を発動させて訊いた。

「決まってるだろう?止める」

「冗談?死ぬぞ」

「このままだと結界は破壊され僕らはここで蒸し焼きさ」

真剣に蓮は言う。

「駄目です!蓮様、きっと誰かが助けて――」

「誰か?この冷たい炎は洸祈のだ。その魔力の膨大さに政府にも軍にも危険視されている人間のだ。助けてくれる誰かなんていない。無闇にやって来て死なれたら迷惑だ。だから僕が止める」

「駄目です!!」

董子は蓮に抱き付いて絶対に放さない。

「こうなったのは僕の責任でもあるんだ」

「だからって…厭です!」

溢れる董子の涙を蓮は指で拭うと抱き締め返した。

「僕だって死ぬのは厭さ。だけどね、それ以上に君が死ぬのは厭。千歳に借りを作るのは厭。何より今は、陽季(はるき)君を死なせたくない。死なせるわけにはいかない。洸祈の恩人が折角守った命だから。それに……案外僕は陽季君好きだしさ」

厭です。と駄々を捏ねる董子に対して千歳は見た目は冷静だ。

「蓮、止めない代わりに死ぬなよ。葬式の借りを作ったら俺の仕事を一生手伝って返してもらうから。勿論無償で」

「はいはい。董子ちゃんを頼んだよ、相棒さん」

ぎゅっとくっつく董子を蓮はいとも簡単に離すと、千歳が肩を掴んで手を伸ばす彼女を抑える。

「董子ちゃん、僕は絶対に死なない。約束だ」







「嘘吐き」

白い雪のような頬。

さらさらと流れるような銀髪。

「嘘吐きは嫌われるよ」


さぁ、これをどう壊そうか。






「寒い」

炎の中だというのに凍える。

「はぁ…僕のせいだ…」

まだ洸祈に言えてないことがある。

「僕は怖いんだ…」

醜い自分は見せたくない。特に洸祈には…。

僕はいつまでも洸祈の兄でいなくてはいけない。友人にはなれない。恋人ですら――何故なら洸祈の友人は一人しかいないから。友人になれないのなら家族でないと僕は洸祈との繋がりを失う。それは厭だ。

僕には洸祈が必要だから…。

「だけど……」



僕の責任でもあるが、これは絶対に赦せない。


好きと…―

愛してると…―



言っといて陽季君を傷付けていたら僕は容赦なんかしない。

たとえ弟でもだ。


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