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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
感じる意味。謝る理由。 【R15】
169/400

一般論(3)

大きな麻袋を抱えた男が俺の横を通った。

考えてもよかったんだ。

その麻袋には……―




人が入っててもおかしくないと。




(あおい)君、洸祈(こうき)はどこに?」

リビングのソファーで読書中の葵を見つけると、陽季(はるき)は彼に訪ねる。

「あ、陽季さん。あれ?下に居ませんでしたか?」

下にはいない。

男が出てきただけだ。

「いなかったけど」

「またさぼりですか!?」

琉雨(るう)ちゃん」

沢山の本を抱えた琉雨。

「もー。言われた通りの本を旦那様のお部屋から持ってきたのにぃ。店番を逃げだす為だったなんて」

背表紙5センチあるかの分厚い本がソファーに散らばった。

「英語?」

陽季はタイトルの外国語に首を傾げて訊く。

「ルーの故郷の言葉でスウェーデン語です」

「ねぇ、琉雨。これなんの本?」

葵が険しい表情で一冊を手にしている。表紙には銀字でタイトルと陣が描かれていた。

「魔法関連?」

陣といえば魔法だよね。と陽季はそれを撫でる。

「真ん中のクロスに斜線、黒魔法。そうでしょ、琉雨」

「そ…その本は……黒魔法と……代償です」


『黒魔法と代償』


「琉雨、詳しく説明して」

葵は身を乗り出した。



「―…2週間後のパーティーの用心棒のご依頼を旦那様は受けて今朝のお客様はお帰りになりました。その後暫くして、スーツのお客様が来ました。恰幅がよくて、黒い手袋してる人でした。あ、お客様待たせたままだったです!」

「そいつ俺と擦れ違った。帰って行ったよ?」

「え?」

陽季の言葉に琉雨は驚く。

「ルーはその人と話し込んでいた旦那様にこれらの本を頼まれたんです」

「もし、依頼に必要で琉雨に頼んだとしたら、その人は何故帰る?」

葵は傾いだ。

「やっぱり旦那様のおさぼりに巻き込まれて…」

旦那様はお客様になんてことを…!――琉雨は顔を両手で覆う。

「ねぇ、その人の名前は?」

一応のつもりで陽季は訊いた。

「誰なんでしょう?」

訊かれても……。

「大きな麻袋を担いでたけど」

ちょっと怪しかった。

「麻の袋?ですか?」

琉雨は目立つはずのそれの存在に目をぱちくりさせる。

「そう…人が……」

入るぐらいの。

「待って!?陽季さん、人が入るぐらいの大きさの麻袋を洸祈が消えたと同時刻に担いで帰ったって言うの?」

「あ…あぁ……―」

「まずいかも」

葵は顔を青くした。

「琉雨、一応だけどその人の言ったこと出来るだけ思い出して言ってくれる?また……あの人かもしれない。洸祈、なんかあの人のことになると魂脱け殻みたいになる……。前もふらふらついて行こうとして……」

“あの人”と言うとき、葵は一瞬だけ陽季を真っ直ぐ見た。





俺はただ見てるだけ。

なぁ、――。

お前は葵君の言おうとしたこと分かっているんだろう?

分かってるさ…。

分かっているならなにをすればいいのか分かるだろう?

分かっているけど分からない。

お前は誰かに言われないと行動できないのか?

そう。

――、最初で最後だろ?それ目掛けて突っ走ってみろよ。

突っ走る……。



陽季は話し込む二人を置いて踵を返していた。

「陽季さん?」

葵の声。

「洸祈捜してきます」

陽季は走る。



愛する人の方へ。


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