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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
感じる意味。謝る理由。 【R15】
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痛み分け(9)

陽季が促すから、柵から身を乗り出した時だった。


「ん……眩しっ…」


一斉にライトアップされた舞台。

「洸祈、俺達からの誕生日プレゼント」





微かに流れてくる静かな音楽。

陽季に促されて、洸祈は舞台を見下ろした。

「みん…な?」

懐かしい月華鈴の面々が勢揃いしている。

「洸祈、二十歳の誕生日おめでとう。ちょっと遅れちゃったけど勘弁ね」

双蘭(そうらん)さん……」

「こっち来なよ」

双灯(そうひ)がにっと笑い、陽季は彼と目線を合わせると、洸祈の腕を引く。

「ゆっくり下に行って。俺はお衣装替えだ」

まだぼーっとしてる頭で洸祈は曖昧に頷き、ゆっくりと階段を降りた。

俺のため?

俺への誕生日プレゼント?


一旦ロビーまで行き、呼吸を整えて扉を開けようとして、内側から開いた。

「陽季……」

「ようこそ、我ら月華鈴の舞台へ」

扉の外にいた陽季はいつもの雪の着物を着て立っていた。彼は洸祈の手を取って前席に導く。

「……どう…なって」

「サプライズ」

本当にサプライズだ。



「洸祈、誕生日おめでとう」

菊菜(きくな)が振り袖の菊を咲かせた着物姿で高い下駄を履き、飾り棒を持って笑顔を見せた。そして、他のメンバーも洸祈にお祝いの言葉を述べる。

たった数ヶ月だけれど、洸祈の身も心も強くしてくれた仲間がそこにいた。

どうにもならない涙腺から溢れるそれを拭おうとして、陽季が手を掴んだ。

「はる…っ」

温かい陽季の指が滴を拭い、洸祈を舞台に背を向けて抱き締める。


胸が一杯に広がる陽季の匂い。

「洸祈、二十歳の誕生日、本当におめでとう」

「……ありがとう」

抱擁の影で洸祈は陽季に口付けをした。

まあ多分、全員にバレているだろうが…―


真広(まひろ)(いつき)、ほら」

ひょっこり。

双蘭の背中から顔を出した少女と少年。

「お誕生日おめでとうございます、洸祈さん」

「おめでとうございます、洸祈さん」

ぺこりと頭を下げて洸祈に花束を渡す姿は可愛い。

「ありがとう、真広ちゃん、斎君」

こんな朝早くに俺の為にいる。

最高だ。

「これが洸祈へのプレゼントだ。受け取ってくれよ」

蝶のように裾を翻した陽季は舞台に飛び乗った。


汀の双蘭。

時雨の双灯。

小雪の菊菜。

神楽の弥生。

如月の胡鳥。

乙姫の真広。

雛菊の斎。

そして…―


「…………夕霧…」


「以後お見知り置きを」

気品の溢れるお辞儀。

優雅な姿に洸祈は見惚れる。

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