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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
短編4
132/400

犬猿の友(3.5)

閉め切ったカーテン。

部屋は薄暗い。

(くれ)琉雨(るう)ちゃんはお買い物。洸と由宇麻(ゆうま)はリビング。お客さんもリビング」

ギシッ…―

「ちょっ…と…まだ疲れが…」

(あおい)はベッドの上で後退る。それを追うように千里(せんり)はベッドに乗った。

「お仕事はな~し」

震える葵の太股を撫でた千里はぐっとベッドに押し付け、足を広げた。葵の顔が色を塗ったように真っ赤になる。

「駄目?」

「駄目だって!」

ひゅっ。

しかし、葵の両手首を掴んだ千里は壁に縫い付けるように万歳させた。その目はまるで好物を前にした獣のようである。

「千里!!駄目って言ったろ!!」

「駄目なのは分かったよ?」

「ならなんで―」

んっ……………………。

「ふぁっ…んっ…」

キスが熱い。

ぷちっと釦の外れる音。千里は片手で器用に葵のワイシャツの釦を外した。

「千里!!」

「しゃーないので…」

上だけでいいよ。

「上だけってやめっ!!!!」

前歯が肩に食い込む感覚。体が強張り、痺れる。

「なんで、またっ」

何故だか、ことを始めようとすると先ず千里は必ず葵の肩に噛み付く。

「こーすれば―」

千里は手首を掴む手を離した。葵にとって逃げる絶好のチャンスなのだが…。

「逃げられない」

四肢は脱力しきって葵は動けないでいた。

「馬鹿…馬鹿…」

むすっと唇を結び、葵はお経のように馬鹿を繰り返す。

「ホントに矢駄?」

千里は心配そうに俯いた葵を見上げた。逃げられないと言っても千里は葵を気遣う。それは、葵との仲直りの約束だから。

「…………………………矢駄」

「なんで?」

「だって…」

堪えるように唇を噛む葵。千里はすっと葵の頬に指先を滑らせて顎を上げた。

「千里…俺はお前のセックスの対象なだけか?」

「なんで…」

次は千里が俯く番。

「…だって…あれから1日置きにしようとするし」

「………………………矢駄?」

千里は真剣な瞳で見詰める。

「厭じゃないよ。だって気持ちい…し。だけど…セックスばっか。俺は…セックスよりも…」

「………………………キス?」

「うん。だ…だから―」

「だってさ…あお、キスしたらすーぐ興奮すんだもん。僕を置いてね」

葵の膝を枕にして寝転がると千里はその青みがかった髪を指に絡めて笑う。

「あお、キス下手くそだから興奮できないよ。あおは興奮してもね」

「だって…キスなんて」

千里が流してくるだけで……。

「もっと積極的になってくれればいいなーとか」

「積極的?」

葵は分からない。

千里ははふっと可愛らしく息を吐くと葵の前におでこ付き合わせて座った。

「しょうがないなぁ。はい、口開けて」

翡翠に促されて口を開けると何かを入れられた。

「?……甘い…チョコ…か?」

「ちょーだい」

そう言って千里は口を塞いだ。葵は頂戴と言う千里にどんどん溶けるチョコを舌で追い返す。その舌に絡み付くのは千里の舌と歯。

「んっおいしっ」

「せんっ…り…っ」

最後に葵の唇に付いたチョコを舐めとるとニコッと笑って布団に転がった。そして、棒に付いた飴をポケットから出すと枕元のスポーツ雑誌を見ながら舐め始める。葵は堕落するそんな彼を見詰め続けた。

「な、千里…」

「何?」

細い脚をばたばたさせ、足首をくるくると回すと葵を振り返る。

「その…―」

葵は滅茶苦茶言いにくそうに…―

「僕は1日置きにはしないことにしたよ。これでいいでしょ?今日はのんびり昼寝をしよっ」

「っ…部屋に帰る…」

顔を歪めた葵はそろそろとベッドを降りようとして、

「うわっ」

ぐいっと引っ張られて千里の腕に納まった。

「昼寝くらいいいでしょ?それも駄目?昔は洸と三人でお昼寝してたのに…それも厭なの?」

ねぇー、あおー。

甘えた声の千里。

彼は目を右往左往させた葵の腿と首筋を撫で、真っ赤にした耳に息を吹き掛けた。

ひっ。

「っ帰る!帰るったら帰る!」

「なんで?」

「………………言わせる気?」

「言わせる気で~す。どーしたの?あおー」


「――」


「へ?何て言ったの?」

だからぁ!

一瞬の出来事。

「これ以上は千里のせいだ。覚悟しろよ!」

「上!!?厭だ!あおは下!!!!」

「馬鹿なことしようとした罰」

下に組み敷いた千里の服に手を掛けるのは葵。完全に焦りを見せた千里は必死に逃れようと体を捻る。

「やぁ!馬鹿!!あお!したら覚えてろよー!!!!立てなくなるまでやっちゃうんだから!!!!離せよ!!!!」




あおのバカー!!!!!!!!!!!!

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