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啼く鳥の謳う物語2  作者: フタトキ
短編4
129/400

犬猿の友(2)

手紙には重大な話がある。とだけ書かれていた。

それがまさか…―




「み…み、みみ見合い!?」

「そうだ。見合いしろ」

「は!?なんでさ!!!?」

崇弥(たかや)の名を跡絶えさせるつもりか?崇弥直系の長男として結婚しろ」

無精髭でヤクザ面の父方の叔父から甥っ子に“重大”なんて使う時点で、それなりに覚悟はしていたが……見合いは覚悟の範囲外だ。

「結婚なんて早いよ!」

「別に構わないだろう?(しん)は二十歳で結婚した」

確かに、体質上の問題で軍学校入学早々から長期の休みを取り、留年に留年を重ねて、(りん)千鶴(ちづる)と3歳差。柚里(ゆり)とは学年で慎の先輩に当たるが、同じく成績関連で留年して同い年。15歳で入学した彼女らに対し、慎は一年時に18歳、柚里は二年生で18歳。

そして、慎と柚里は同じ境遇な為に気が合い、仲良くなったのだ。

だが、そんなことは今は関係ない。

「俺は19だ!!」

叔父の和泉憲(いずみけん)は白髪混じりの頭を掻くと、はぁと頬杖突いた。それも、物凄くかったるそうにして。

溜め息吐きたいのは俺だ!

「なにも結婚とは言ってないだろう?」

「言ったよ!結婚しろって!」

この人は面倒なことをとことん面倒な態度で掛かってくるから嫌だ。

「今から1年、じっくり付き合ってから結婚しなさい。そうすれば二十歳過ぎてるだろう?」

こう言い返されると癪だし、ムカつく。

「厭だ!厭なもんは厭だ!」

「慎に似て我が儘だな」

ずずっと茶を啜った憲はカンと湯飲みを置くとダルそうに目を細めて洸祈を見詰めた。洸祈は瞳の奥の威圧に内心後退る。

「そこまで言うなら彼女の一人や二人いんのかよ」

二人いたら二股ね。

そうくるとは思っていた。

ここで“彼女”はいないなんて言ったら無理矢理付き合わされ、挙げ句の果てにはいつの間にか結婚しているはめになる。多分、薬でも盛られて自分でも気付かない内に。

あり得なく思えて、ちゃっかりアレ(・・)を決めたりと、現実にするから恐ろしい。

「い…いる」

「ほぉーへぇ~そーかぁー」

滅茶苦茶疑ってる。

握った掌に湿り気を感じながらも洸祈は憲の目から視線を逸らすことはなかった。

「じゃ、見せろよ」

きた。

ここはどうにか誤魔化すしかない。

「……遠距離恋愛なもんで…」

本当に遠距離です。

時折近いけど。

今の時期は確か…、

「九州…にいます」

これで納得しろ!

しかし、叔父は一言。

「あーそうか。遠距離恋愛なんてやめとけ。直ぐに破局だ。それじゃ、見合い決定」

切り捨てやがった。そして勝手に決定しやがった。

野郎…。

「彼女出張中だから。明日には帰ってくる…かも」

「じゃあ、明日な」

は!?“かも”だから!!!!

「まっ―」


空穏(くおん)、連れてくっから」


「へ?空穏って…」

嘘だろう?

アレ(・・)かよ。


「お前が散々逃げてきた婚約者の前でその彼女を紹介してもらうからな。無理なら即結婚だ」

「待てよ!然り気無く結婚に戻ってんぞ!!!!」

「叔父に逆らうのか!?縛り首にすんぞオラ!!!!」

キレた。

俺もキレたい。

しかし、逆らえない。なんともこの店、叔父に貰ったものだったりする。

「そうだ。洸祈、司野由宇麻(しのゆうま)は何処に住んでんだ?近所なんだろう?」

…………………………………。

「司野?…長期出張中」

「折角来たのに残念だ」

憲は欠伸を1つ残して飄々と席を立った。

「明日な」

知るかと叫びたいが出来ない。

洸祈は結婚式場のパンフレットをテーブルに放り投げて帰る彼を止めることも、暴言を吐くこともできなかった。そして、リビングの扉向こうの気配4つを複雑な気持ちで睨んだ。


「マジでやばい…」




特にアレ(婚約者)が。

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