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第7話 下校時間

 下校時間――。


 何だか初日から色々あったけれど、無事に一日が終了した。

 ずっと噂に聞いてきた音洲さんが、まさかの同じクラスで隣の席同士になったわけだが、たった一日にも関わらず音洲さんが注目を浴びている理由を分からされた自分がいる……。


 そんなとにかくすごい音洲さんだが、帰りのホームルームが終わるとすぐにクラスの子が音洲さんの席へと駆けつけてくる。


「姫花! 部活行こっ!」

「うん! ちょっと待ってね!」

「早く早くぅー!」

「もう、急かさないでよぉー」


 二人は同じ部活で仲が良いようで、気の知れた様子で楽しそうに笑い合っている。

 そんな女子同士の楽しそうなやり取りを横目に、俺も帰りの支度を始める。


「もういいでしょ? ほら、はやく部室行こっ!」

「分かったってばぁー!」


 急かされるように、友達に手を引かれる音洲さん。

 別に俺は何も関係ないけれど、そんな二人のやり取りが微笑ましい。


「あ、南光くん!」

「え?」

「また明日ねっ! バイバイ!」

「あ、うん、バイバイ」


 手を引かれながら、慌てて俺にバイバイをしてくれる音洲さん。

 驚きつつもバイバイと手を振り返すと、音洲さんは嬉しそうに微笑んでくれた。

 そんな音洲さんが見えなくなるまで、俺はただ茫然とその背中を見送った。


「なーに、ジロジロ見てるんだ?」

「ん? ……なんだ、光雄みつおかよ」

「なんだって何だよ、露骨に残念そうにするな! しっかし、輝の隣が音洲さんになるだなんてビックリだな」


 揶揄うように席にやってきたのは、今日から同じクラスになった西城光雄さいじょうみつお

 光雄は中学時代からの友達で、晴れて二年から同じクラスになれた旧友である。

 中学時代からサッカー一筋で、明るさだけが取り柄というか、まぁ一緒にいて飽きない奴だ。


「そうだな、俺も絶賛驚いてるところだよ」

「ははは、まぁそうだよな! それで、どうだったよ?」

「どうって?」

「そりゃもちろん、音洲さんの噂だよ! やっぱりお前でも、落とされちゃった感じか?」

「ねーよ」


 野次馬根性丸出しの光雄に、俺は呆れながら即答する。

 たしかに音洲さんが、個性や魅力に溢れていることは認めよう。

 けれど、俺にとってはそれだけだ。

 どれだけ相手が魅力的だろうと、俺が惚れるのかと聞かれれば答えはノーだ。


「そうか、さすがは難攻不落だな」

「その呼び方はやめろ」

「わりぃわりぃ。つーか、既にお前らへの注目度がすげーことになってるぞ」

「そうなのか?」

「ああ、このほこたて対決、果たしてどっちが勝つのかってな」


 そう言う光雄自身も、対決の結末が気になるのだろう。

 俺を揶揄うように、面白そうな笑みを浮かべている。


 難攻不落と、絶対に落とす――。

 そう呼ばれる二人が、まさかの隣の席同士になったのだ。

 客観的に見れば、周囲が面白がる理由としては十分と言えるだろう。

 でも残念ながら、俺も音洲さんも互いに争っているわけではない。


「別にどうにもなんねーよ」

「お前はそうなのかもしれないけど、分からねぇだろ?」

「どういう意味だよ」

「そりゃお前、音洲さんがどう思うかって話だよ」

「そんなのもっとあり得ないだろ。――そんじゃ、俺はもう行くからまた明日な」


 こいつは何を言ってんだかと呆れながら、俺はこのあとの用事へ向かうべく立ち上がる。


「……あながち無い話でもないと思うんだけどな」


 光雄の分かったような呟きが聞こえてくるが、俺は無視をして教室を出るのであった。





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