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第20話 緊急事態

『単刀直入に言って、非常に不味いのよね』


 それは、ある日の夜のこと。

 遠足で同じ班になった光雄、小山さん、そして音洲さんとともに作られたチャットアプリのグループに送られてきた一つのメッセージ。

 送り主は小山さんで、その文面から察するに何やら緊急事態のようだ。

 一体何事だろうと不安に思っていると、


『実は私も妃花も、このままでは赤点不可避なの!』


 続けて語られる、その緊急事態の理由――。

 なるほど、今度の定期テストのことか。

 二年に上がって初の定期テストが、来月に控えているのだ。


 小山さんの学力については、まだよく分かっていない。

 けれど音洲さんの学力については、言われる以前から心配していたぐらいには不安だらけだ……。


 ――とは言ってもなぁ……。


 残念ながら、俺も光雄も勉強が得意なわけではない。

 俺の成績は学年で中の上程度で、光雄に至っては下の上ぐらいだ。

 だから生憎、力になることはできても人に教えるには力不足が否めない。

 力になれることがあればと思ってはいたが、いざそれが現実になると力不足が不安になってくる……。


 人より容姿が優れていようと、学力は凡人レベル。

 外面は良くても、肝心の中身はスカスカ。

 そんな自分を変えたいとは思うが、結局忙しさにかまけて変われないまま今に至る。


『というわけで私から一つ提案なんだけど、今度みんなでテストに向けて勉強会しない?』

『勉強会? いーね! 輝もいいよな?』

『うん、いいよ』


 小山さんからの勉強会の提案に、すぐさま光雄も乗っかる。

 別に俺も断る理由はないから、参加はすることにした。

 何故なら、小山さんや音洲さん以前に、俺自身のためにも勉強する機会は作った方が良いからだ。

 苦手なことにはすぐ意思が弱くなる俺にとって、こうして外部からキッカケが生まれる形が一番合っているのかもしれない。


『みんなが参加するなら、私も参加したい!』


 最後に音洲さんの参加表明をもって、遠足組での勉強会の開催が決定した。

 とは言っても、授業のあと図書室に集まって勉強をしていく程度の話だろう。

 俺以外は部活もあるから、テスト期間に入ってからでないと中々予定も合わないため、開催自体はもうしばらく先になりそうだ。

 そんなことを考えていると、チャットでも同じ会話が広がる。


『でも、結構先になっちゃうよね』

『そうだなー、部活もあるしなー』

『そうだよねぇ。というか私達の場合、もっと早くから勉強しておかないと不味い気がする……』

『それじゃあ、どっか土日にやるとか?』

『お、それいいねー!』


 尚も続いている小山さんと光雄のチャットは、話の成り行きで土日開催の方向へと流れていく。

 たしかに土日を活用した方が勉強時間も確保できるし、授業のあとより体力的にも集中できそうだ。


『じゃ、善は急げってことでさっそく今週はどうだ? サッカー部は日曜日なら休みなんだけど』

『わ、偶然! バレー部も日曜休みだよ!』

『よっしゃ! 輝は予定どうだ?』

『俺も日曜なら予定ないし大丈夫だよ』


 俺も光雄も小山さんも、偶然日曜なら空いていた。

 あとは音洲さんだけだれど、喫茶店の手伝いもあるだろうし大丈夫だろうか……。

 そう考えると、土日に集まるのも中々難しいのかもしれないなと思っていると――、


『うん、私も大丈夫だよ!』


 少し間を空けて、音洲さんからも空いていると返事がきた。

 つまりこれで、無事に今度の日曜日は勉強会を開催できることとなった。

 朝十時から駅前の図書館を利用することに決まり、あとは当日を待つのみだ。


 ピコンッ。


「ん? まだ何かあったか?」


 これでグループメッセージもひと段落かなと思っていたところ、まだメッセージが送られてくる。

 何だろうと確認すると、それはグループメッセージではなく音洲さんから個人宛てに送られてきたものだった。


『日曜日もお手伝いの予定だったんだけど、お休みにして貰っちゃった! 日曜日楽しみにしてるね!』

 

 ……そうか、やっぱり本当は喫茶店を手伝う予定だったんだ。

 そのうえで、勉強会のためにわざわざ予定を変更してくれたということになる。


 元々は、音洲さん達の勉強に付き合うのが目的。

 それでも、こうして自分達に合わせて時間を作ってくれたことを嬉しいと感じている自分がいた。

 そしてそれ以上に、こうして二人だけの秘密のやり取りをしていることが、何だかこそばゆく思えて仕方ないのであった。



 


 

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