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ゲロだよ

赤い草をむしる。

赤い草は手元に残らず、跡形も無く消えた。

横に視線を移すとワンピースを着た少女が同じように赤い草をむしっている。

むしった草はこちらと同じように消えた。

少女がむしった草もポイント化されるようだ。


昨日の夜になった直後、蟲娘である隣の少女から嘔吐物を飲まされた。

チヨコが言うにはスキルとやらで造られた蜜らしいのだが…

口から吐き出された物は嘔吐物と言って間違いないだろう。


こちらが望んだからとはいえ、説明を先にして欲しかった。

覚悟さえ有れば、必要なら他人の嘔吐物さえ生きる為に飲める…はずだ。


昨日はその粘度の高い蜜を無理矢理に流し込まれて呼吸ができずに気絶した。

しかし今朝、起きると体の異常どころか疲労や空腹なども感じなかった。

回復スキルとチヨコが言っていたが無害な蜜だったのは確かなようだ。

まぁ、飲ませ方に問題があった事も確かだが。


とはいえ、草をむしって世界が取れるのだろうか?

植物を全滅させる事が世界を取るという事?

頭上をグルグルと飛んでいるチヨコに尋ねてみよう。


「いえ、マスター。

確かにその方向性でもリソースを奪う事は可能です。

しかしそれではマスターの寿命が先に尽きるでしょう」


リソース?


「リソースとは世界を構成しているエネルギーの事を指しています。

世界にはリソースが満ちていますが…大きく欠ければ世界は崩壊します。

我々の使命は世界を崩壊させる事です。

ゲームの仕様上、マスターは魂を持った物質を分解してリソースを奪う事ができます」


…つまり草を分解してポイントを得ている?


「はい、マスター。

そして植物よりも動物、特に加護を得ているモノはリソースが多く含まれています」


また知らない単語が…

加護とは?


「この世界の神々がリソースを使って与えている(ちから)の総称です。

マスターの前の世界でいう魔法や異能、蟲娘のスキルに該当します。

この世界では誕生と同時に何かしらの神の加護を得ているようです」


魔法や異能ねぇ。

こっちは何も思い出せないから何が該当しているか分からない。

しかし、隣で草をむしっている少女のスキルと同じようなモノならばきっと変なモノなのだろう。

う〜ん、蜜を吐き出す加護かぁ…

それなら水や火なんかを吐く加護もあったりして。

水はともかく、火を吐く加護は恐ろしいな。


「マスター、獲物が見つかりました。

早速、仕留(しと)めましょう」


どうやらチヨコはこの赤い草原で動物を探していたようだ。

確かに人と同じ程の背が高い赤い草が生い茂るこの場に置いて空を飛べるチヨコが探す方が合理的だ。

少女も草むしりを()めてチョコの指す方に向いて…走った!?

思わず駆け出した少女の後を追いかけるが、脚が速い。

少女との距離がどんどん開いて赤い草に紛れて見えなくなってしまった。


赤い草が邪魔で進むのも大変なのにこっちと比べものにならない身体能力だ。

流石は人と違う蟲娘という事か。


息を切らしながらチヨコの誘導する方向へひたすら草を掻き分けて走る。

これなら昨日の限界草むしりの方が楽だったな。


そんな呑気な考えを吹き飛ばす悲鳴がチヨコが誘導している方向から響いてきた。

高さから女性の悲鳴だろうか。

もしかしたら先行していた少女のモノだろうか?

チヨコが言った獲物とはなんだったのか?

それが少女を害したのではないか?

そんな危険な場所に行って大丈夫なのか?


湧き上がる恐怖に足がすくんで立ち止まってしまった。


早く向かわなければという思いばかり湧くが足が震えて言う事を聞いてくれない。


悲鳴は最初のあの一回限り。

前方から草を掻き分ける音が聞こえてくる。

逃げるか、高い草に紛れて隠れればいいのにそれすらできない。

息がうまく吐けない。

チヨコが何か言っているが聞き取れない。

目の前がグニャグニャと歪んでいくように感じる。

まるで時間が止まり空間が歪むような変な感覚に陥っていく。


目の前の草が揺れて現れたのは…少女だった。

止めていた息を吐き出し安堵のあまりその場に座り込んでしまった。

びっしょりと出た汗は少女を必死に追った時からか、恐怖故かは分からない。


「マスター、肉が手に入りました。

早速、焼いて食べましょう」


少女をよく見ると大きな赤い塊を両手で抱えるように持っていた。

生肉…だと思うがどこからそんな塊を…


「マスター、これが二つ目のスキルである《解体》の効果です。

相手を倒すと一定確率で肉を入手できるようになります」


目の前の肉はスキルで手に入れたようだ。

…獲物ってなんだったの?

人…じゃないよね?


「獣です」


獣…なら良いか。

こう言ったお肉をジビエというのだっけ?

えっと、それでこんな塊肉をどうやって料理すればいいんだ?


「ワタシが指示を出しますから大丈夫です。

とりあえず、ポイントを消費して調理道具を造ってもよろしいですか?」


その後、チヨコの指示で焼肉を食べた。

肉を切り、焼いて、食べる。

嘔吐物を飲むよりずっと良い。

これが異世界で初の食事としよう。

驚いた事に大半はひと回り小さい少女が食べ尽くした。

生で食べていた気がするが見なかった事にしよう。

アイテム創造

・包丁

・鉄板

・炭

・マッチ

・石

・トング

・フォーク

・皿

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