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ランクチェス王記  作者: 北川 零
第一章 ヨハン親王
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中央広場(3)

カトーが近づき、落ちぶれたヘンローを見つめた。彼はまだ呆然と死体を見つめ、体は罰立てのように硬直したまま微動だにせず、手も震えていなかった。カトーが彼を連れ出す時、歩みは硬直しており、まるで何かがヘンローを引きずりながら沼地を歩いているようだった。


「将軍の言葉を気にしすぎるな。時として彼は間違っている」


カトはそう慰めたが、ヘンロの目は依然として薄霧に覆われたように、カトの言葉に耳を貸していなかった。

彼の頭の中は、黒衣の王が語った言葉で埋め尽くされ、是非の区別がつかなくなっていた。混乱した頭が硬直した思考を続けている。

他の黒衣の将兵たちは軽蔑の眼差しで見ていた。糸の切れた人形のように、華やかな金箔は結局「王」ではない。彼の理念の郷に辿り着けず、理想の金箔が剥がれた後、いったいどんな姿になるというのか


「…カトー…あの人たちは…」


ヘンロの声は低く、わずかな惜しみと哀れみを帯びていた。しかし今、彼を慰める言葉など何一つ存在しなかった

あまりにも落ち込んでいた。今、あの貴族の軍人たちを思い返すと、彼らは盲目的に戦功を得ようとしたのではなく、黒衣の王も戦うという知らせを受けて参加したのだろう。戦場に出たことのない者と共に戦うほど愚かではなかったのだ

ヘンロが前線の黒衣の王を探しに行った時、貴族たちでついてきた者は一人もいなかった。ただ、常に黒衣の王の傍らにいた副官のカトだけが後を追った。彼らはついて来られないわけではなかったし、命を賭ける必要もなかった。ただ楽に「栄誉」を手に入れたいだけだったのだ。

貴族の血筋は骨の髄まで貴族であり、真に命を賭ける者はごくわずかだ。名誉も結局は自らの利益のためであり、命さえ失えば、名誉など何の価値があるというのか。

ヘンロはようやく気づいた。彼を背後で支える者は実際にはごくわずかであり、彼らはむしろ彼が国王の称号を持つという体面を重んじ、表面上は従っているだけだと。

黒衣の軍勢を振り返ると、それが最も明白だった。彼らは不満を隠す必要もなく、ヘンロの命令を完全に無視できる。彼らはヘンサーにのみ忠誠を誓っているのだ

そして彼――ヘンサーの息子であり共同統治者である王は、背後に何の支えもない。誇りや栄光、身分さえも、すべては父と与えられたものに過ぎず、元々彼を助ける者は誰もいなかったのだ


「遥か…遠い先は、私の手の届かないところだ」


彼は独り言をつぶやき、自らの無邪気さと、強制的に王位に就かされた結果を悔やんだ。理想には近づいたものの、今になって初めて、前途が予測不能で、自らの歩みを制御できないことを悟ったのだ。


「陛下がお触れにならないのではなく、まだ鍛錬が必要なのです。陛下の地位は階級を揺るがすものであり、権力の象徴でもあります。どうか自責なさらないでください。陛下はまだ即位したばかりです。これらは陛下の問題ではありません」


カトーはそう言ってヘンロを慰めた。その言葉には慰めと現実が混ざり合っていた。王冠を戴く者はその重みを背負わねばならず、その重さに息も詰まるほどになる。ヘンロの戴く王冠はとりわけ重く、自ら進んで戴いたものではなく、半分は強制されたものだった。

戦場で途方に暮れても、誰も彼を責めはしない。ただ彼の窮屈で狼狽した表情だけがそこにある。黒衣の軍勢の中を通り過ぎる時、彼らが今なおどう思っているかはわからないが、その一端は想像に難くない。

空の光の輪はまだ頭上にあり、いつ終わるのかはわからない――

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