中央広場⑴
「『尊き陛下』よ、こうして我々の行く手を阻まれては、お役に立てません。どうか後方で待機なさってください」
ヘンロはホブムの前に立ち塞がり、その瞳には固い決意が宿っていたが、弱さを隠しきれていない。右手で握った手綱が微かに震え、左手で強く握りしめてようやく止めた。
ヘンロは並外れた勇気を必要としていた。民衆を守るために――もはや敵となった民衆さえも、必死に守らねばならなかったのだ。
黒衣の王の側近たちは、彼を極度の嫌悪の眼差しで見つめていた。王でなければとっくに無視していただろう。彼らはこの王が何をしているのか理解できなかった。愚か者が、彼らの前に立ち塞がっているのだと。
「陛下、邪魔しないでください。どいてください」
傍らの将士が彼を追い払おうとしたが、ヘンロは依然として目の前に立ちはだかり、一歩も動こうとせず、どうにも追い払えなかった。
黒衣の王は目の前の小さな王を見て、ため息をつき、無念そうに首を振った。馬で彼に突進したい衝動さえ感じたが、それを抑えた。
「我々はあなたを助けているのだぞ。父上の助けを裏切るつもりか? あなたの軍隊だけで本当に簡単に戦えると思うのか? そんなことは不可能だ。今なお敵となった民を殺すことを拒み、まだ夢を見ているのか?」
「たとえそうであっても、罪のない民を殺すべきではない! 彼らは戦場に強制されただけだ! ジョン王の圧政のせいだ!」
ヘンロのこの言葉を聞いたホブムは、顔に青筋を浮かべ、殺す時よりもさらに凶悪な眼差しを向けた
「どうした?何を言ってるんだ?お前はまだ状況をわかっていないらしいな。あそこの敵を見てみろ。お前の遅延のおかげで、奴らは今なお防御の準備をしている。本来なら今夜にも城を攻め落とせたはずだ!」
彼の怒りに周囲も声を潜めた。将軍がこれほど激昂する姿を久しく見ていなかった。カトーでさえヘンローを心配そうに見つめ、本当に殺されるのではと危惧した。
「ホブム、彼らは皆私の民だ!王となった以上、彼らを守る責任がある。説得さえすれば降伏する!彼らの死など必要ない!」
「…『不必要』の意味がわかっているのか?お前のくだらない慈悲こそが不必要なのだ。奴らは既に敵だ。説得する前に斬りかかってきた。そんな相手に説得の必要があろうか?傷を負ってからでないと話し合えないというのか?我々に犠牲者が出なければ満足できないのか?」
「まずは大声で呼びかけよう!聞けば彼らは降伏するはずだ」
少年のあまりの純真さに、黒衣の男はなぜ彼を共同統治王にしたのか理解できなかった。実際には単なる称号に過ぎないが、それでも地位はある。老友の考えが全く理解できなかった。
「よし、そう言うなら教えてやろう。我々がいなければ、お前たちはここでいつまで戦っていたか。一ヶ月か三ヶ月か五ヶ月か、可能性は無限だ。しかも死傷者はさらに増え、お前も民衆に降伏を勧める気にはなれないだろう。彼らは敵なのだから」
「それは…」
ヘンロはわずかに動揺した。黒衣の王の言葉は正しいかもしれない。それでも彼は一歩も引かなかった
ホブムは馬から降りると、ヘンロの目の前に歩み寄った。その威圧感は敵よりも強く、ヘンロはただ見上げるしかなく、足が震え始めた。
カトが止めに入ろうとしたが、黒衣の王の怒りの声で制止された。近づくことを許されず、カトも恐怖で足を止めた。
「ヘンロ、な?」
「はい…」




