作戦室(3)
「どうした、黙っているのか?お前の保護はいつも俺をイライラさせる。一度も二度も同じことだ。そんなに俺を信用していないのか?」
「殿下、これは必要な準備です。私は殿下の安全を全方位で守らねばなりません。殿下が皮膚を傷つけたとしても、それは私の責任です」
「おや、そうか。それならいい案がある。見ておけ」
ジョンは図面に刺さった短剣を抜くと、左腕の袖を捲り上げて白く清らかな前腕を露わにした。その幼い腕には、理屈に合わない無数の引っかき傷が刻まれていた
短剣を腕に当て、深く深い傷跡を刻む覚悟で刃を走らせようとした。きっと深く切り裂かれるだろうが、痛みは麻痺するはずだ
先端がジョンの肌に触れた瞬間、ローは優しく力強くジョンの右手を掴み止めた。そんなジョンは疲れ切った表情を浮かべていた
「ちっ、残念だな。自分を傷つけようとする者を止めることは、縛り上げない限り無理だ」
「!殿下!」
白く傷だらけの左手が短剣の先端に突き刺さった。傷は筋肉まで達し、大量の血が流れ出し、ゆっくりと地面に滴り落ちた。
ローはすぐにジョン上腕を強く握り、さらなる出血を止めた。そして窓辺のカーテンを引き裂き、ジョンの傷口を包帯で巻いた。
ジョンは強く握られて痛んだが、表情をこらえ、これ以上苦痛を見せないようにした。彼に屈服してはならない。これは頑固さであり、発散だった。
「殿下、包帯は巻きました。もうこんなこと…私は…」
「お前が俺を引き戻したんだ。なぜ一緒に死なせなかった?あの『石像』の狡猾な策略は見事に成功した。生きてろ、と嫌味な口調で言っておく。今はただ真実を探している。彼女の姿を見たか?明らかに国内の者の仕業だ。あの刺客の方言は、国外の怨恨による殺しではない…」
ジョンは静かになり、声は次第に小さくなっていった。恐怖か憐れみか、彼は憐れむことはしない。しかし憐れむ時こそが真の「彼」であり、あの男はただ無用の「臆病者」で、抹殺するしかない
ジョンは再び小さな声で口を開いた。悲しげな苦笑を浮かべ、重く沈んだ頭を上げられない
「…たとえ私が負けたとしても、私は生き延びられたはずだ。これが私の彼への理解だ。あのゴミ兄貴にも私を治す権利があったのかもしれない。同じ親から生まれたのに、私たちはまるで他人同士で、相手の行動には一切干渉しない。むしろ彼は私の『希望』だった。だが私は彼に『希望』であってほしくなかった。王冠を私に譲ってほしかった」
ロはジョンの訴えを聞き、胸が詰まる思いだった。誰も彼に当然の叱責を与えず、あるのは行動と任務、そして嫌悪すべきことだけだった
彼の父による当時の叱責は行動に対するもので、彼が本当に欲していた「暴力」ではなかった。その叱責にはもう慣れっこだったが、それでも謙虚に聞き入れた。一方「暴力」とは、彼の心を叱責し、「生まれつき砂粒ほどの大きさしかない良心」を贖うためのものだった。
「…殿下、この…心が砕け、神々が私を拒んでも…私は…あなたを守り続けます…」
ロの目に一筋の涙が流れた。なぜ流れたのか、それが自身のものか神からのものか、彼にも分からなかった。流れたのは、彼の砂漠で最も貴重な砂粒だったのかもしれない。透き通っているが、気づくことさえできないほどに。
顔を上げると、ローが涙を流していることに少し驚いた。記憶の中で、ジョンが涙を流すローを見たのはこれが初めてだった。鞭で全身を打ちのめされた時も涙は流さなかったのに、今、涙が頬を伝って落ちている
「お前も泣くのか? そんなに強い奴だと思ってたのに…ロ、なぜ泣くんだ? まさか目の中に砂が入ったとか言うんじゃないだろうな」
「…わからない。ただ、流れてきた。でもなぜこんなに奇妙なんだ…」
ロは指で自分の涙を受け止め、指先と包帯に残ったジョンの血が混ざり合い、透き通った赤い水晶のようになった
「まさかお前も臆病者か?まったく不思議だ。お前の感情は神の恩寵か?笑わせるな」
「殿下、私が殿下のそばにいられることこそが神の恩寵です…」
ロの言葉をジョンは嫌悪した。その目には軽蔑が満ち、温かい言葉はただ悪臭に感じられた。必要ないわけではない。ただ今の自分には不要なのだ




