表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランクチェス王記  作者: 北川 零
第一章 ヨハン親王
91/113

作戦室(2)

ジョンは眉をひそめて目を閉じ、口の中でぶつぶつと呟き続けた。まるで何かを呪っているかのようだった。

ローが城の構造図を広げると、ジョンはかすかな気配を感じて疲れた目を開けた。目の前の図面とローの姿――これは元ソドリン城の城主から入手したもので、全ての出口と隠し通路が記されていた。


「さっきどこに行ってたんだ?こんな大事な時にそばにいないなんて、君らしくないぞ」


ジョンの口調には皮肉が混じり、おそらく叱責と、ロがさっき何をしていたのかへの好奇心が入り混じっていた


「すまない、地下牢で設計図を取ってきた」


「それで?この書類に何の意味がある?何日もここにいれば、これらの位置はとっくに把握しているはずだ。今解決すべきは中央広場の敵軍だ」


ローは黙って図面を見つめ、何も言わず、持ってきた目的も説明しなかった。

これにジョンは不審に思い、城の構造図を注意深く観察した。図面には丸で囲まれた位置があり、彼は目を見開き、疑問から怒りに変わり、羅を睨みつけた。


「ここに丸印をつけたのは、俺に逃げろってことか?ロー?えっ!?まさか俺に逃げるよう指示したのか?」


図面の丸印は全て隠し通路を示しており、中には崖の洞窟へ通じるものや、砂浜へ続く道もあり、船で脱出できるルートもあった。


「殿下…お逃げください。道中、私が護衛いたします」


傍らの兵士たちはジョンが怒りに震える危険な気配を感じ取り、巻き込まれないよう二人から距離を取った


「ロ、よくも逃げるなんて言えたな!兄貴のあのクズ野郎、もう目の前にいるんだぞ!俺が殺してやるだけだ!!」


「殿下、もうお相手にはお見えになりません。これは仕方のないこと…」


ジョンは激昂して反論し、前線の方角を指さすと短剣を抜き、図面に激しく突き刺した


「あのクズはこの城にいる!俺が殺せないわけがない!あいつは明らかに!役立たずだ!王位に就くことなど絶対にありえない!あの老いぼれも頭が狂ってる!王になるべきは俺だ!あのジジイはとっくに退位すべきだった!」


「では、殿下がおそれほど不満なら、なぜヘンロ王が即位するまで待って反乱を起こしたのですか?もっと早くヘンサー陛下を倒す計画を立てるべきではなかったのですか?」


「そ、それは…まだ準備中だったんだ!ところで、ロー、お前はすごいな!ついに俺に口答えするようになったか!」


ローは恭しく跪き、ジョンへの失礼を詫びたが、それでもそっとジョンの手を握り、真摯な眼差しで彼を見つめた。それはジョンの心を侵すためではなく、ただ考えを伝えるためだった。


「殿下、誠に申し訳ございません。しかし我々は敵の戦力を過小評価しておりました。黒衣の王の支援は全くの予想外でした」


ジョンは沈んだ表情で、今となっては認めざるを得なかった。この予想外の事態とは悪魔の支援、忌々しい黒衣軍が全てを台無しにしたのだと。


「まさか外部の援軍を呼ぶとは…自分が役立たずだと知って黒衣王を呼んだのか…くそっ!くそっ!」


「…殿下、これは取り返しのつかない事態です。私は船を準備しました。脱出が可能です…」


ジョンはこれを聞くと、即座にロの頬を平手打ちした。不満と怒りがこの一撃に込められていた。衰弱した彼が全力を振り絞った一撃だった。


しかしローの顔には何の痕も残らなかった。彼にとってはかゆい程度の一撃に過ぎない。だが彼はこれがジョンの限界だと理解していた。今の感情の表れだと。


「お前はとっくにこいつらを準備してたんだろ?船なんて急に用意できるものじゃない。ここに来る前から準備してたのか?まさか俺が勝てないと思ってたのか?」


ジョンの腕がロの首を締め上げ、ロは怒りに燃えるジョンの瞳を直視しながら問い詰めた。


「最初から準備してたんだ。出発する時から…」


「ロー!!!お前は黒衣軍が来れば俺が負けると思ったんじゃない、あのクズ相手でも負けると思ったんだろ!なぜ俺に逃げ道を用意する資格があるんだ!」


ローの目は細く、決してジョンから離さず見つめ続けた。だがそれこそがジョンをさらに怒らせた。ローは反省などしておらず、ただひたすら背後に隠れて責任を果たそうとしているだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ