作戦室⑴
「伝令兵が報告!城の南東で兵士が崩壊!敵軍は無傷!わずか八人が逃げ帰った!」
「報告!敵軍は中央広場に到着、我軍は必死に抵抗中、将軍たちは中央広場で合流中」
「殿下、敵軍前線の主力は黒衣軍のみ、国王軍の部隊が前線に進軍している様子はまだ確認できません」
戦況報告が絶え間なくヨハンの耳に届く。良い知らせならまだしも、届いてくるのは悪い知らせばかり。良い知らせは一つもない。
ヨハンは椅子に座り、力なく額を押さえながら、これらの知らせに頭痛を覚え、陥落のプレッシャーを感じていた。
「殿下!どうなさいますか?!後方の軍を前線に支援に回すべきでしょうか?」
兵士が焦燥感に駆られて問いかけた。その様子はジョン以上に苛立ちを露わにし、言葉も異様に早口だった。
「殿下!殿下!お急ぎください!黒衣軍が城塞に迫っています!!」
「……」
「殿下!全ての将兵を集結させて黒衣軍と戦わせるのはいかがでしょう!そうすれば少なくとも長く抵抗できます!」
「…分かっているだろう?お前が前線に行け!そうすれば自らも戦いに加われる!誰か!こいつを前線へ連れて行き、盾にしろ!」
若い兵士の横からのせき立てに、ジョンはわずかな怒りを感じた。プレッシャーと苛立ちが混ざり合い、爆発寸前の状態だった
兵士は後悔して哀願したが、もう手遅れだった。他の前線兵士に引っ張られ、恐怖に震えながらも装備を身にまとい、全身を震わせながら強敵と対峙する前線へと連れて行かれた。
「今の兵士たちは何も観察しない…俺はもう考えているんだ!それなのに俺を急かすとは!まったく敬意がない!」
ジョンは怒りに任せて机を叩いた。周囲の者たちは声を潜め、ただ目の前の作業に没頭していた。少しでも声を立てれば、さっきの兵士と同じ末路を辿るかもしれないからだ。
ジョンは苦渋に満ちた表情で策を練っていた。手持ちの兵力は全て投入済みだ。まさか戦力差がここまで極端だとは。なぜこうなったのか、兵力は互角のはずなのに、敵は無傷でいられるのか。
(なぜだ?どうやって?あの黒衣の王は本当にそんなに強いのか…ただの虚名だと思っていたのに…ローと同じように)
その時、ローが会議室に入ってきた。城の構造図を手に、ジョンのもとへ歩み寄る。
ジョンはローに気づかず、ただ黙って次の手を考えていた。現在の兵力は約三分の一しか残っておらず、どれだけ持ちこたえられるかわからない。城内にはまだ矢が残っているから、城門の前でしばらくは守れるだろう
「…ヘンロ、自分で軍を率いて来られないのか…クソ野郎…」




