暗い道
空っぽのホールには彼らの足音だけが響いていた。先ほどの出来事を経て、子供たちは声を出すことすら恐れ、咳さえもこらえていた。誰もいないのに重苦しい空気が漂い、戦前のホールとはどこか違っていた。
カオの心は苛立っていた。手にも背中には冷や汗がにじんでいた。軍令に背いた者が、自らの軍陣地に戻り、罪の証拠を携えて戻ってきたのだから、恐怖と恥辱を感じるのも当然だった。
前方のローを見つめながら、思わず口を開いた。ゆっくりと声を絞り出すように。
「ロー…あの…これは反逆行為になるはずだ…捕らえられるべきでは…」
「お前の言う通りだ。前線で王軍と戦うべきお前が後方に逃げ込んだ以上、即刻処刑するのが正しい」
理不尽だと知りながら、カオは反論せずうつむいて静かに耳を傾けた。叱責を待つ。今は黙っているのが正しい
しかし彼の耳に届いたのは非難ではなく、ロが続けて言った、相変わらず冷たく平静な言葉だった
「何も間違ってはいない、何も正しくもなかった。正しいと思い込んで歩んだ道は、結局自分だけでなく他人も苦しめる。自らが善と信じるものは、実は反抗に過ぎない。だが、お前が正しいと思うなら、そのまま続けてみよ」
カオはローの言葉を理解できなかった。善こそが正しい、そう信じて教規に従ってきた。しかし善は立場によって変わるものだと、彼は全く気づいていなかった。
背中の子供は善良さの証だが、軍人としての彼にとっては恥であり、大きな汚点だ。正しい行為が罪に変わる。今は複雑な心境だ
羅は美しい女性の肖像画の前に歩み寄り、額縁の縁を触りながら何かを探った。何かを触れた音がすると、横の木の棚を押しのけた。そこには開いた石壁があり、城外へと続く隠された石の通路があった。埃に覆われている
突然現れた秘密通路に、カオは少し後ずさりして疑問を口にした
「秘密通路は領主の部屋だけにあるのでは?ここにもあるのか?」
「お前は奴らの死への恐怖を過小評価している。もし部屋だけの通路なら、彼が部屋にいない時はどうする?当然複数ある。東西南北へ通じるものもな。だが大抵は金で解決するから、これらの通路を使う必要はない」
ロは淡々とそう言った。彼にとってはもう見慣れた光景で、貴族領主の性格をよく理解していた
「でも…領主は自分の部屋の隠し通路の位置しか言ってなかったはず…なのに君はここにもあるって正確に知ってる…」
そんな呆けたようなカオを見て、ロは深くため息をつき、肖像画を撫でながら説明を始めた
「貴族は皆、特にこうした美女の肖像画を収集するのが好きだ。そして共通点がある。目立つ場所に掛けられた銀縁の女性の肖像画は、大抵が隠し通路のスイッチだ。見分けやすいからね…よし、説明は終わりだ。お前たちは行くべきだ」
カオは急いで子供たちを通路へ導き、少し大きめの男の子に炭灯を渡すと、彼に先導させて暗黒のトンネルを抜け、外へ逃げ出した。




