カオの罪
カオは戦場にはいなかった。この間、彼は子供たちがいる家へと急いで向かっていた。今は一分一秒を争う状況で、急いで子供たちを逃がさねばならない。黒衣の軍団がそう簡単には手加減しないことを知っていた。おそらく城内の人間を皆殺しにするだろう。
隠れた屋根裏で、子供たちは恐怖に震えながら身を縮めていた。何が起きているのかわからず、近づいてくる足音を聞きながら、隠れた屋根裏部屋の扉を緊張して見つめていた。やがてドンドンと扉を叩く音が響いた。
「俺だ!カオだ!早く開けろ!」
以前自分たちを助けてくれたカオだと分かると、子供たちは安堵した。ドアを開けると、カオは息を切らしていた。途中で誰にも気づかれないよう、かなりの体力を消耗していたのだ。
「お兄ちゃん…外で何が起きてるの…急にこんなに騒がしくて…怖いよ…」
「ママは大丈夫かな…ママに会いたい…うう…」
子供たちの不安がカオの耳に届いた。時間は待ってくれない。軍隊が殺しに来る前に、この子たちを急いで逃がさねば。救えるのはこの子たちだけだが、彼の能力ではこれが限界だった
「よし…よし、泣かないで…説明する時間はない…今すぐ逃げよう、急いで」
彼は慎重に子供たちを屋外の通路へ導いた。周囲を警戒しながら、敵に発見されないよう、そして味方にも気づかれないよう注意を払う。この子供たちは密かに隠されていたのだ。ジョン・ソドリンの命令に背く行為だった
彼は小さな短剣を取り出し、子供たちに配った。最後まで子供たちを守り通すことはできず、救いようのないソドリン城から脱出させるのが精一杯だった。子供たちをこの戦争に巻き込みたくなかったのだ
「この短剣をしっかり持て。城の外に出たら、もうお前たちを守れない。自分たちで生き延びるんだ。外には野生の動物がたくさんいる。危険に遭ったら、それを使え」
「お兄ちゃん…あなたは悪い人なの?…どうして悪い人なのに私たちを助けてくれるの…」
少女の突然の問いに、オッカは一瞬言葉を詰まらせた。どう答えればいいのか、この問いには答えられなかった。彼自身もわからなかった。しゃがみ込んで少女を見つめ、数秒間ためらった。
「そうだな…たぶん俺は悪者の側に立っているんだろう。わからない…もしかしたらこれはただの選択で、その選択が正しいか間違っているかだけかもしれない。お前にどう思うかを強制することはできない。でも、俺を良い人だと思ってほしい…たとえお前たちが言う悪者の側に立っていたとしても…」
カオは心の底からそう言った。ただ彼らを全力で守りたいという思いだけで、彼らを守ることが裏切り者となり、命令に従わないことが反逆となる
両方ともやってしまった。もし見つかったら処刑されるだろう。それでも彼は実行した。それが正しいと信じていたからだ
世の中の正しさは、彼だけが考えるものではない。様々な正しさがある。彼が「守る」という名のもとに実行したことは、他人の目には極度の反逆行為に映る。軍隊ではなおさらだ
少女は呆然と彼を見つめ、カオの手を握りしめ、満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ、お兄ちゃんはいい人だね!だって私たちを助けてくれたんだもん!」
カオは淡く微笑み、彼らの手を引いて走り出した。守るために裏切る道。心は苛まれたが、後悔はなかった。彼が選んだのは「正しい」と名付けられた道だからだ。




