表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランクチェス王記  作者: 北川 零
第一章 ヨハン親王
82/113

出発の時

やっとのことでゆっくりしていた連中が装備を整え、行動を開始した。彼らは馬に乗り、将軍と合流するため出発し、堂々たる軍勢を率いてヘンロー自身の旗を掲げ、弟を討伐に向かった。


「なんか気分が悪いな。自分の弟を討伐するなんて…なんでジョンがこんなことを…」


彼はこうすることが正しいのか自問した。自分の弟が敵になるなんて。兄弟間の交流はほとんどなく、会ったこともほとんどないが、それでも血縁関係にある者だ。


「この件、俺も遺憾に思います。でも、彼が陛下の地位を脅かす可能性があるんですよ。」


「確かにその通りだけど…」


「陛下、私にも弟がいます。あなたの気持ちもわかります。でも、彼があなたの敵になる決意をしたなら、情けは無用でしょう。」


カトはそう言ったが、父王にどう報告すればいいのか。ジョンは絶対に死なせてはならないし、国民たちのこともある。


細かい雨が降り続き、彼のレインコートに滴り落ちる音が響いていたが、鎧は濡れていなかった。


「この雨衣、いいねぇ~」


ヘンローの雨衣を触り、素材の質に感嘆した。こんなに軽くて防水性が高いのは、どんな素材なんだろう。


ここで作られたものとは思えず、皇帝の側でしか見られない技術のように見える。国王である自分がこんな高級な素材で作れるなんて、信じられない話だ。


「これは俺のじゃない。ナクトが着せてくれたんだ。」


「え、ナクト大人がそんな素材の雨衣を持ってるの?」


これでナクトの身元にますます疑問が湧いた。貴族の従者が皇帝が使うようなものを持っているなんて、あり得ない話だ。国王でさえ持っていないものを。


「彼は父親からもらったって言ってたけど、父親が誰なのか俺は知らない。父王や彼に聞いても教えてくれないんだ。」


従者の家族がわからないなんて、実に奇妙だ。そして話したがらない。家族に何か秘密があるのか?


だが、ヘンサーでさえ口を閉ざしているのだから、これはナクト個人の問題ではないのかもしれない。もしかして口止めされているのか。 あの国王にも隠していることが多いが、まさか自分の息子までそうとは。実に謎めいた国王だ。いや、その家族全体が神秘的だ。


一体誰が国王にさえ口を閉ざさせるのだろう。貴族ならある程度の知名度があるはずで、完全に表に出ないはずはない。


「陛下、好奇じゃないんですか?」


「いや、好奇でも仕方ないだろ。もうこんなに長く一緒にいてるんだ。どの家族だろうと関係ない。」


ヘンローはナクトを無条件で信頼していた。誰であろうと、昔から今まで、ナクトの優しさを感じてきた。絶望の時に助けてくれ、一番孤独な時に一緒に遊んでくれた。貴族の中には彼を超える者はいない。


「なるほどね、さすがは彼だ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ