出発の時
やっとのことでゆっくりしていた連中が装備を整え、行動を開始した。彼らは馬に乗り、将軍と合流するため出発し、堂々たる軍勢を率いてヘンロー自身の旗を掲げ、弟を討伐に向かった。
「なんか気分が悪いな。自分の弟を討伐するなんて…なんでジョンがこんなことを…」
彼はこうすることが正しいのか自問した。自分の弟が敵になるなんて。兄弟間の交流はほとんどなく、会ったこともほとんどないが、それでも血縁関係にある者だ。
「この件、俺も遺憾に思います。でも、彼が陛下の地位を脅かす可能性があるんですよ。」
「確かにその通りだけど…」
「陛下、私にも弟がいます。あなたの気持ちもわかります。でも、彼があなたの敵になる決意をしたなら、情けは無用でしょう。」
カトはそう言ったが、父王にどう報告すればいいのか。ジョンは絶対に死なせてはならないし、国民たちのこともある。
細かい雨が降り続き、彼のレインコートに滴り落ちる音が響いていたが、鎧は濡れていなかった。
「この雨衣、いいねぇ~」
ヘンローの雨衣を触り、素材の質に感嘆した。こんなに軽くて防水性が高いのは、どんな素材なんだろう。
ここで作られたものとは思えず、皇帝の側でしか見られない技術のように見える。国王である自分がこんな高級な素材で作れるなんて、信じられない話だ。
「これは俺のじゃない。ナクトが着せてくれたんだ。」
「え、ナクト大人がそんな素材の雨衣を持ってるの?」
これでナクトの身元にますます疑問が湧いた。貴族の従者が皇帝が使うようなものを持っているなんて、あり得ない話だ。国王でさえ持っていないものを。
「彼は父親からもらったって言ってたけど、父親が誰なのか俺は知らない。父王や彼に聞いても教えてくれないんだ。」
従者の家族がわからないなんて、実に奇妙だ。そして話したがらない。家族に何か秘密があるのか?
だが、ヘンサーでさえ口を閉ざしているのだから、これはナクト個人の問題ではないのかもしれない。もしかして口止めされているのか。 あの国王にも隠していることが多いが、まさか自分の息子までそうとは。実に謎めいた国王だ。いや、その家族全体が神秘的だ。
一体誰が国王にさえ口を閉ざさせるのだろう。貴族ならある程度の知名度があるはずで、完全に表に出ないはずはない。
「陛下、好奇じゃないんですか?」
「いや、好奇でも仕方ないだろ。もうこんなに長く一緒にいてるんだ。どの家族だろうと関係ない。」
ヘンローはナクトを無条件で信頼していた。誰であろうと、昔から今まで、ナクトの優しさを感じてきた。絶望の時に助けてくれ、一番孤独な時に一緒に遊んでくれた。貴族の中には彼を超える者はいない。
「なるほどね、さすがは彼だ。」




