悔い改めの神罰
「ローには黙っていてくれてよかった。でないと、また罰を受けていたかもしれない。よかった、よかった…」
カオは一息ついた。窓の外では風雨が激しく、雷鳴が轟く。彼の胸にはどこからともなく湧き上がる不快感があった。外で雷が光り、しばらくして雷鳴が空を貫いた。
「今夜はどうしたんだ?いつもより雨がひどいな。海辺の街だからか…?あの子供たちは大丈夫かな…」
その時、一人の男が近づいてきた。全身ずぶ濡れで、髪が額に張り付き、かなりみすぼらしい姿だった。
「シエン?どうしてそんなに濡れてるんだ?」
「外をぶらついてたら急に雨が降ってきて、全身びしょ濡れだよ。なんか拭くもの持ってくるよ。」
シエンは歩きながら水を滴らせていた。カオは彼が風邪をひくのではないかと心配し、一緒に部屋に戻って暖炉に火をつけた。シエンが服を脱ぐと、カオは彼の体に無数の痣があるのを見て、慌てて尋ねた。
「シエン、この痣はどうしたんだ?どこかでぶつけたのか!?」
だが、シエンは手を振って、かすれた声で答えた。
「いや、これは自己懲罰だ。俺の心が罪を犯した…俺だって望んでやったわけじゃない…」
「どういうことだ?」
尋ねると、シエンは顔を背け、口ごもった。何か隠しているような態度だった。
「なんで俺には何でも話せって言うのに、お前は自分のことを話さないんだ?」
シエンはようやく口を開き、カオの目を見つめた。目は震え、歯を食いしばって言った。
「俺は教会で悔い改めた。でも、教会の連中は俺が十分に敬虔じゃないって言うんだ。それで、方法を教えてくれた…体の痛みで罪を償うんだって。そして、彼らが俺を『懲罰』した…」
カオはシエンの体にできた痣を見た。これは悔い改めの懲罰なんかじゃない。明らかに意図的な暴力だ。しかも、容赦なく、ひどく打ちつけられたものだ。
「なんで急に悔い改めに行ったんだ?これは報復だろ!こんなひどい打ち方、治療が必要だぞ!」
「これは俺が受け入れた『懲罰』だ。神も俺の罪を見過ごせなかったから、こんなに厳しく罰したんだ。」
カオは疑問だらけだった。なぜこんな嵐の中で出かけた?シエンは何の罪を犯したんだ?それに、彼は教会の連中が自分たちを嫌っていることを知っているはずなのに、なぜ教会に行った?
「お前、どんな罪を犯したんだよ?こんな目に遭っても抵抗しなかったのか?」
「嫉妬だ…あってはならない、俺自身も恐れるような嫉妬だ。それも、身近な人間に対して…」
それを聞いてカオは笑った。シエンが誰か好きな人に近づく他人に嫉妬したんだろう。それでこんなに落ち込んでいるんだな。カオは残っていた薬草を取り出し、シエンの痣に塗り始めた。
「そんなことでそんな風になる必要ないだろ?で、誰なんだ?その女のせいでこんな気分になってるのか?」
シエンは答えず、カオに傷の手当てを任せ、静かに座った。頭を下げ、拭いたばかりでまだ乾いていない髪はぐしゃぐしゃだった。あとは乾くのを待つだけだ。
「はぁ、そんな気分になる必要ないだろ。嫉妬なんて大したことないし、『懲罰』で悔い改める必要もないだろ?」
「いや、これは必要なことだ。」
カオはシエンの傷を見ると、いくつかは古い傷だった。痕跡も残っていて、今回が初めてじゃないことを示していた。以前の傷は藤の鞭によるものだ。見るからに痛々しい。
「大変だったな。」
カオは小さな声で気遣った。シエンの家は神を忠実に信じる家系で、信仰に少しでも揺らぎを見せることは許されない。
この「悔い改め」は「神の赦し」であり、特定の儀式の道具で罰を受けるものだ。だが、彼の新しい痣は儀式の道具でできたものではない。明らかに棒で殴られたような形だ。
「お前もわかってるだろ?これは悔い改めの儀式に合わない。傷の形が明らかに『聖鞭』じゃない。お前、一体何があったんだ?」
「何でもない。気にしないでくれ。」
「は…またそれか…」




